遺伝子組み換え食品に関する表示
JAS法改正−2001年4月より−

ア)我が国で安全性を確認されている遺伝子組み換え農作物(35品種)

農作物 性 質 流 通
大豆
(2品種)
除草剤の影響を受けない
オレイン酸の含有量が多い
輸入の79%はアメリカから
(アメリカ産の遺伝子組み換え生産量は約50%)
ナタネ
(14品種)
除草剤の影響を受けない(12品種)
除草剤の影響を受けず、花粉を作らない(1品種)
除草剤の影響を受けず、花粉形成を回復させたもの(1品種)
輸入の約85%はカナダから
(カナダ産の遺伝子組み換え生産量は約55%)
ジャガイモ
(2品種)
害虫に強い 生産物はすべて国産。
加工品(フライドポテト等)の輸入は主としてアメリカから
(アメリカ産の遺伝子組み換え生産量は約3%)
トウモロコシ
(10品種)
害虫に強い(4品種)
除草剤の影響を受けない(5品種)
害虫に強く、除草剤の影響を受けない(1品種)
輸入の約96%はアメリカから
(アメリカ産の遺伝子組み換え生産量は約33%)
綿実
(6品種)
除草剤の影響を受けない(4品種)
害虫に強い(2品種)
輸入の約94%はオーストラリアから
(オーストラリアにおける綿実の遺伝子組み換え生産量は少量)
テンサイ
(1品種)
除草剤の影響を受けない  

イ)使用されていると思われるもの  

原料名 使用されている加工品名
大豆 醤油、味噌、大豆油、豆腐、もやし、納豆、豆乳、おから、ゆば、枝豆等
トウモロコシ ビール、コーン油、コーンフレーク、コーンスターチ、水飴、異性化液糖等
ナタネ 菜種油
ジャガイモ フライドポテト、マッシュポテト、ジャガイモ澱粉等
ワタ 綿実油

ウ) 表示例(大豆の場合) 

遺伝子組み換え 大豆(高オレイン酸・遺伝子組み換え)
大豆(遺伝子組み換え)
大豆(遺伝子組み換えのものを分別)
判別不明 大豆(遺伝子組み換え不分別)
非遺伝子組み換え 大豆(遺伝子組み換えでない)
大豆(遺伝子組み換えでないものを分別)

エ) 表示義務のあるもの・ないもの

  表示義務のあるもの 表示義務のないもの
大豆 豆腐(加工品含む)、油揚げ、調理用大豆、枝豆、大豆もやし、納豆、豆乳、味噌、煮豆、きな粉、大豆粉・
    植物性タンパクを主な原材料(注)とする食品等
大豆油、醤油
トウモロコシ コーンスナック菓子、コーンスターチ、ポップコーン、(生食用)トウモロコシ、冷凍・缶詰トウモロコシ、コーンフラワー、コーングリッツを主な原材料とする食品等 コーン油、コーンフレーク、水飴、異性化液糖、デキストリン
ジャガイモ (生食用)ジャガイモ マッシュポテト、ジャガイモ澱粉、ポテトフレーク、冷凍・缶詰・レトルトのジャガイモ製品、
         これらを主な原材料とする食品
ナタネ   なたね油
ワタ   綿実油

  (注)「主な原材料」とは全原材料中重量で上位3品目で、且つ、食品中に占める重量が5%以上のもの

オ)諸外国での表示

  年月日  
EU
欧州連合
1997年1月
1997年5月
1998年5月
2000年4月
法案可決
新規食品に関する規則(生で流通する組み換え食品について表示義務)
加工食品の材料として「使われている」「使われていない」の表示義務
1%以上の遺伝子組み換え作物の原材料を含む食品について表示義務
WTO
(世界貿易機構)
   表示を義務付けようとするEU側と、表示は任意にすべきとするアメリカ・カナダ側との交渉がまとまらず暗礁に乗り上げている

カ)遺伝子組み換え食品に関係する表示違反事件

@遺伝子組み換えトウモロコシ・スターリンク事件

 昨年の9日、アメリカで環境保護団体の「地球の友」が行なった検査で、食品中からスターリンク※1が検出された。このスターリンクには他の殺虫性作物にはないタンパク質が存在し、これがアレルギーを引き起こす可能性が高い※2として、FPA(アメリカ環境保護局)がいまだに食品として承認していない(但し、家畜の飼料として認めている)。
 しかし、今回の事件を契機にFDAはメーカーに製品の回収を指示した上に、商業栽培認可を取り消し、我が国でも、2000年末から、我が国とアメリカで輸出前検査を行い、スターリンクの混ざっていないことが明らかなトウモロコシだけしか輸入できなくなった。

※1  フランスのアベンティス社が開発した、殺虫性のタンパク質を持つ遺伝子組み換えトウモロコシ。
※2  1129日には、FDA(アメリカ食品医薬品局)によって、コーンチップスでアレルギーとみられる不調を訴えた44人の事例をが報告。
     新しく組み換えられた遺伝子が作り出すタンパク質に殺虫性があり、虫害を予防できるが、このタンパク質は加熱しても壊れにくい
    上に、人の消化器官では消化できないために、人体にアレルギーを起こす可能性が否定できない。
     我が国では、食品としても飼料用としても認められていない。しかし、飼料用としても、食品としても流通していた。
A我が国で検出された遺伝子組み換えトウモロコシ
商品名 メーカー名 遺伝子組み換え体
トンガリコーン ハウス食品 モンサンテMon830、831または832の存在を確認。
ポンキー あっさり味 湖池屋 モンサンテMon830、831または832の存在を確認。
デカルプ社DLL255およびプラントジェネティックス社PGS、MS3の2種類の存在の可能性あり。
ドンタコス ナチュチーズ 湖池屋 モンサンテMon830の存在を確認。
プチコーン 薄味 ヤマザキナビスコ モンサンテMon830、831または832の存在を確認。
デカルプ社DLL255およびプラントジェネティックス社PGS、MS3の2種類の存在の可能性あり。
焼きモロコシ 薄味 カルビー PCR活性を有するDNAは抽出されたが、遺伝子組み換え体由来の存在の特定はされなかった。
玉三コーンスターチ 川光物産 ノースラップキング社Btll、チバシード社Event176またはヘキスト・シェーリング・アグレボ社T14/25の複数品種の存在を確認。

−食べもの文化 No.271  「コーンスナックから未承認の遺伝子組み換えコーン検出」−

B我が国で検出された遺伝子組み換えじゃがいも
検出日 商品名 メーカー 検出された遺伝子
2001年 5月24日 オーザック ハウス ニューリーフ・プラス
6月19日 じゃがりこ カルビー ニューリーフ・プラス
6月22日 ポテルカ ブルボン ニューリーフ・プラス
7月11日 ポテロング・スモークチーズ味 森永製菓 ニューリーフ・プラス、ニューリーフY
7月18日 プリングルス P&G ニューリーフ・プラス、ニューリーフY
※ニューリーフ・プラス…コロラド羽虫に対する抵抗性を持たせるBT毒素遺伝子とウィルス耐性の遺伝子を持つ
  ニューリーフY……… ジャガイモウィルスYに抵抗性を持つ

−食べもの文化 No.296  「遺伝子組み換え 最新の問題」−

キ)遺伝子組み換え食品の問題点

@生産、流通、加工のどの段階でも交配・混入してしまう可能性が否定できない
     −膨大な手間と時間とコストがかかるが、特別な「分別生産流通管理システム(IPハンドリングシステム)」が必要。
A新たな“タンパク質”の出現
     −遺伝子(DNA)はタンパク質から出来、新たなタンパク質を生み出します。食物アレルギーが食品中のタンパク質が
     原因で起こることを考えれば、新たなタンパク質の出現は決して安心できるものではありません。
B遺伝子組み換えにより出来た食品は、自然界には本来存在しえないもの(今までの“交配”とは違います)
C分析技術・検出技術が確立していない=安全性が未確認
D表示の信憑性
E一部のメーカーに食糧の未来を握られてしまう

ク)遺伝子とは

@DNA(デオキシリボ核酸)という物質から出来ている
A人間の身体の主要部分であるタンパク質を作る
   =傷ついた遺伝子からは、傷ついた遺伝子を持つ細胞が数多く作られてしまう→癌など  

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角田先生の『アレルギーっ子の生活』内「遺伝子組み換え食品」

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参考文献
   新しい食品表示の見方がよくわかる本(中経出版)