アレルギーっ子の生活

<07-09      2001年12月02日(日)公開>

【咳・呼吸困難の時の対処法】

咳・くしゃみ・鼻水で病原体を体外に追い出しています。 ヒトは空気中の酸素を肺に吸い込んで体内に取り入れ、血液に酸素を溶かしこみ、体のすみずみまで運び利用しています(これを呼吸といいます)。空気の通り道はまた、空気中に浮かぶ様々な病原体(細菌・ウイルス・カビなど)や空気の汚染物質(ほこりや排気ガスなど)の入り込んでくる進入路でもあります。この道(気道といいます)を通って病原体が入ってこようすると、体は入らないように頑張ります。まず、することは? そうです、くしゃみ。くしゃみをして猛烈なスピードで鼻から息を噴き出し、病原体を体外に追い出してしまいます。次は鼻水。鼻水と一緒に病原体を洗い流してしまおうとします。不幸にして病原体がさらに奥に入り込むと(気管や気管支まで)咳をして超スピードの息と一緒に病原体を吐き出します。くしゃみや咳がうまくでないと病原体は鼻や肺の中で増えて気管支炎や肺炎を起こしてしまいます。つまり、くしゃみや咳は気道をきれいにして、きれいな空気を体に取り入れるために重要な役割りをしているのです。咳がでると一生懸命咳を止めようと薬を飲ませるお母さんがいますが、あまり無理には止めない方がいいのです。薬で無理に咳を止めた場合は肺炎を起こしやすくなります。病気の最初に咳をする子は肺炎を起こしにくいのです。

 でも、くしゃみ・鼻水・咳がひどく眠られない、飲めない、食べられない、食べても咳で吐いてしまうなどの時は、くしゃみ・鼻水・咳を軽くするような治療が必要です。

呼吸困難・気管支喘息発作時の対処法(気管・気管支がせまくなり呼吸困難が強い時)

正常の状態の時の気管支(=空気の通り道)は充分に広いが、喘息の発作を起こしている時の気管支は収縮し、粘膜が腫れているために狭く、通りにくくなってしまっている。 呼吸困難が主な症状となる病気の代表が気管支喘息です。

 ぜんそく発作の時は、気管支が収縮し気管支内の粘膜がはれるため空気の通り道がせまくなり、ゼーゼー、ヒューヒューし呼吸が苦しくなります.また大量のたんがでるため、せき込みます。なるベくはやく発作を軽くするため、適切な対処をしましょう。

●これ以上発作を強くさせないため、空気中の発作の原因となるものを避けます。窓をあけて部屋の空気を入れ替えるか、別の部屋に連れて行き、新鮮な空気を吸うようにします。しまってあった寝具や衣類を洗わずに使った時、または掃除機をかけずに使った場合は、保管中に衣類や寝具で増えたダニの死がいやダニの糞、カビ、防虫剤(パラジクロロベンゼン:パラゾール、ピレスロイド系殺虫剤など)や押入れの合板から揮発したホルムアルデヒド等の化学物質などを吸い込んでしまうため発作がおきます。よく掃除機をかけた寝具や洗いたての衣類に替えて、ダニ・カビ・化学物質を吸い込まないようにします。その他、花粉、ペットの毛、そばがらの枕なども避けます。また、タバコの煙、自動車の排気ガス(特にディーゼル車排気)、ゴミ焼却ガスなどの大気汚染に注意します。

●アレルギー(の可能性)がある食べ物、または、過去にアレルギーがあった食べ物は避けます。特に、乳製品、卵製品、大豆油の製品、小麦製品、そば、ピーナッツ、チョコレートなど。

●仮性アレルゲンの食品は発作を強くしますので食べないようにします。

仮性アレルゲン:
  とろろ、そば、たけのこ、なす、ほうれん草、トマト、キウイ、メロン、パイナップル、さば、いわし、さんまなど
                                
 (病気の時の食事−仮性アレルゲンの項を参照)

●ピーナッツやチョコレートは粘膜の腫れる物質(アセチルコリン、チラミン、フェニルチラミン)が含まれているため、喘息発作の時は厳禁です。また、ピーナッツはかけらを気管支に吸いこんでしまうと、肺炎を繰り返して起こし、喘息様の症状を繰り返すようになります。子供、特に年齢が小さな乳幼児には口にさせること自体が厳禁です。いったん気管支内に入ったピーナッツは咳をしても排泄されません。

●解熱鎮痛剤は気管支喘息発作を誘発するので、使用しないようにします。

●水、ゆざまし、番茶などのお茶類、野菜スープ、果物の煮汁などで水分を補給します。アレルギーのある子供達は、程度の差は有りますが、乳製品や卵製品にアレルギーを持っていることが多いので、牛乳やヨーグルトなどの乳飲料で水分を補給することは避けます.炭酸飲料はおなかがふくれて苦しくなるので、飲まないようにしましょう。どうしても飲む時は炭酸の入っていないスポーツドリンク(アクアライトなど)にします。

身体を横にして寝かせると苦しくなることが多いので座らせるか、背中に布団を入れて状態を高くします。赤ちゃんの場合はお母さんが抱っこをして布団か何かに寄りかかると楽な姿勢になります。

●からだを横にしてねかせると苦しくなることが多いので、座らせるか、背中にフトンを入れて上体を高くします.赤ちゃんの場合はお母さんがだっこをしてフトンか何かに寄りかかると楽な姿勢になります。

●ゼーゼー・喘息がひどい時は哺乳方法を次のようにします。まずは必ず抱いて飲ませること。仰向けに寝かせたまま飲ませると、肺に吸い込んでしまうことがあります。肺に吸い込むと肺炎を起こしてしまいます。むせた場合は、必ずきちんと咳をさせて気管に入ってしまったおっぱいを出させてから再び飲ませます。母乳が出過ぎてしまい、飲ませ始めにむせてしまう時は軽くしぼってから飲ませるとむせが少なくなります。人工ミルクを飲ませている場合、乳首はあまり出過ぎない物を使用します。哺乳ビンをさかさまにすると勢いよく出るような乳首はやめます。ヌークの乳首はミルクの穴が数箇所あり飲むと口の中に広がってむせが少なくなります。噛まないと出てこないため、もし、使えればヌークにします。噛む力が弱く、ヌークでは飲むことができない赤ちゃんの場合は小さな穴の普通の乳首を使います。

できれば腹式呼吸で呼吸を整えます。赤ちゃんの場合は、腹式呼吸ができないので、背中や胸をさすって呼吸を整えさせます。

●発作が軽くても、その後にいつもひどくなってしまう経過をとる場合は早めに発作時の薬を飲みます。または、発作時の吸入をします。発作が中発作以上の時、または、おさまらずひどくなりそうな時は早めに発作時のくすり(気管支拡張剤)を飲むか、発作時の吸入をするか、発作時の座薬(気管支拡張剤)を使います。それでもだめな時は病院へ行きます。喘息の発作はひどければ命取りになることもあるため、無理して自宅でがんばることは禁物です。ひどい時は早めに病院を受診するようにようにしましょう。

●気管支拡張剤の吸入は、発作が軽いうちは良いのですが、重症な喘息発作の時に使うと、急激に病状が悪くなることがあります。あまり発作がひどい時は、吸入器に頼らないで、早めに病院を受診しましょう。

小発作の時
 普通に遊ぶ、普通にお話ができる,普通に食べられる、よく眠る、ヒューヒュー,ゼーゼー聞こえる
→薬を飲んで様子を見る

中発作の時
動きが悪い、話しかければ返事はする、食欲が落ちる、夜中に何回か目を覚ます、陥没呼吸(息を吸う時に肋骨の間や鎖骨の上がへこむ)がある
→薬を飲んだり吸入をする。良くならなければ病院へ行く

大発作の時
動くどころではない、話しかけても返事できない、食事できない、苦しくて横になれない、眠れない、陥没呼吸ひどく唇が紫色(チアノーゼ)になる
→すぐに病院へ行く

●発作時の周囲の人の心構え:決して慌てたり、騒いだり、怒ったりしないこと.平然と行動し、発作を起こしている本人が動揺しないようにしましょう。むしろ、「大丈夫だからなになにしよう」と励まします。苦しくて泣き出すと発作はひどくなりますので、泣かないようになだめます(泣きやまず泣きっぱなしの時は発作が重症のことが多いので早めに病院へ行きましよう)。

●中学生や高校生以上の喘息の人は、喘息発作がひどくなったことが他の家族や友人にすぐわかるように体制を整えておきましょう。一人でいる時(特に夜間・朝方)に発作がひどくなり、発見が遅れると取り返しのつかない事態になることがあります。発作がひどいと声を出して助けを呼べなくなるので、呼び鈴や楽器など音が出るものを枕元に準備しておきましょう。兄弟や父母が同じ部屋に一緒に寝るとか、時々様子を見に行くことなども考えておきましょう。小さな子供の場合は、親が気をつけていれば早めに対応することができます。

●発作の時は刺激のあるものや環境汚染化学物質を吸い込んでも発作はひどくなります.タバコや花火・蚊取り線香・お線香・焚き火の煙、ヘアースプレー・殺虫剤・土ぼこり・自動車やストーブの排気ガス・焼却灰などは吸い込まないように注意して下さい。食物アレルギーがある場合には、その食品を焼いた煙で(例えば、魚を焼いた煙や卵焼きの煙など)発作を起こすことがあるので、吸い込まないように注意します。

●お風呂はゼーゼーが軽く、元気があって、食べることも遊ぶこともいつもと同じようにできる状態(小発作)なら、入って良いでしょう。ただし、体が温まると、発作・呼吸困難がひどくなることがあるので、短い時間にさっと体の汚れを落とす程度に入るようにしましょう。

運動誘発性喘息

●運動をすることで喘息発作を起こすことを言います。多くの場合、運動を中止して休めば改善します。前の日や当日の朝に発作があった場合は、運動前に落ち着いても運動誘発されやすくなっています。このような時は、無理をせず激しい運動は避けて、もし発作が起きたらすぐに運動を中止ます。

●急に激しい運動を始めないで、ウォーミングアップ・準備体操を十分にして徐々に運動を強くしていきます。小さい子供の場合、急に走りはじめると咳込んで、発作につながることがあります。

●暖かいところから急に寒い屋外に出ると、寒冷の刺激で発作が起きやすくなり、運動が加わるとすぐ発作になります。この場合、寒い屋外に出たら、口元を両手でお椀をつくっておおい、自分の吐き出した暖かい息をもう一度吸い込みながら、徐々に寒さに慣れていくことです。または、マスクを使っても同じ効果があります。

●どうしても、運動で発作を起こしてしまう場合には、運動直前に経口薬を飲むか、インタール吸入等の薬を使用すると発作を予防できる場合があります。

仮性クループ・クループ

仮性クループ
 喘息の場合は気管支が狭くなりますが、仮性クループの場合はもっと太い気管、喉もとの声帯付近が腫れて呼吸困難が起こります。ひどい場合は顔色が紫になり(=チアノーゼ)危険な状態となりますので,大至急病院に駆け込まなければならないことがあります。

●喘息の場合は気管支が狭くなりますが、仮性クループの場合はもっと太い気管、のどもとの声帯付近が腫れて呼吸困難が起こります。犬が吠えるような咳をして、夜寝ている時や、昼寝の時に急に咳き込み、呼吸困難になるためフトンの上に起きあがり、苦しみます。ひどい場合は顔色が紫になり(チアノーゼ)危険な状態となりますので、大至急で病院に駆け込まなければなればならないことがあります。

●対処の方法は気管支喘息の場合と同じです。空気の汚れ・食べ物に気をつけます。とくに、卵やソバなどの食物アレルギーがある場合、ウイルス感染や細菌感染を起こしている時にアレルギーのある食べ物を食べてしまうと仮性クループを起こしやすくなります。

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