アレルギーっ子の生活

<07-10      2001年12月04日(火)公開>

【発熱の時の対処法】

 私達の身体は、“免疫”という働きで病気を起こす微生物が体の中に入らないようにしています。健康でいられるということは、この免疫が平熱の状態で常に働いているからです。新しい病原体や多量の病原体が入ってきて、普通の免疫のカでは対応できない時、私達の身体は体温を上げて病原体を殺し、免疫の働きを強くして身体を守ろうとします。従って、体温が上がることは病気を治すために必要な、身体の正常な働きと考えられます。発熱の対処は、身体が病原体をやっつけ、病気を治すためにいかに上手に体温をあげるか−という方法になります。かぜのウィルスなど病原体を殺すために、39℃〜40℃ぐらいまで熱が上がります。この熱をなるべく身体の負担にならないように出し続け自分の持っている“自然治癒カ”を充分出せるように看護します。その場合、身体や熱の状況によって対処法が異なります。

身体の見かけの状態 身体の中で起こっていること 対 処 法
 熱が上昇中。
手足が冷たく、顔色が悪く、寒気があり震えます。
気分が悪く、辛い状態です。
 手足を触ってみましょう。冷たくなっているのがわかります。

      
 身体の熱が足りないので、筋肉をふるわせ、熱をつくり、手足の血管を収縮させて熱を身体の外に逃がさないようにし、体温を上げています(体温は上昇中)。
この状態は体力を消耗します。なるべく短くすむように体を暖めます。
 寒くないように布団をかけるか、抱いて暖めてあげます(湯タンポ・電気毛布を使う場合、熱が上がり過ぎることがあるので注意します。足だけ暖めるようにします)。
 熱の上がり方が激しいと熱性けいれんを起こすことがあります。
 油ものや甘いものをたくさん食べていると熱が急上昇しやすいので、普段の食生活に注意します。
 無理に、熱を下げようとすると具合の悪い時間が長くなってしまいます。
 手足が温かくなり、顔に赤みがさし、寒気がなくなり、気分が良くなります。
手足を触るとポカポカして暖かくなっています。

       
 熱は上がりきり、もうこれ以上の熱はいらないため、手足の血管を拡げて身体の外へ熱を逃がしています。病気の間はこの状態に保ちます。(39℃〜40℃ぐらいの熱でウイルスの増える事を抑えることができます。従って、体温は39℃前後になるようにします。)病気が治れば熱は自然に下がります。  寒気がない程度に衣類を薄めにします。 嫌がらず、気持ちが良ければ頭を冷やします。体温が40℃を超える時はよく絞った濡れタオルで体を拭いても良い。
 ただし、正常な体温調節機能があれば自然に熱が40℃以下に下がります。熱は下げ過ぎないようにします。
※市販の熱さましシートには防腐剤パラベンが含まれており、貼り続けることでアレルギーを誘発する可能性があるため使用を避けます。また、パラベンは環境ホルモン作用のあることが疑われており、体の正常な調整機能を妨げる可能性があります。

夕方上がって朝下がる熱は要注意!

 熱の出方で病気を判断することができます。「夕方に熱が上がり、朝になるとうそのように下がっている。少し具合が悪そうだが熱もないしと学校や幼稚園・保育園に送り出す。ところが夕方になり熱は急上昇。具合が悪く、明日は病院に行こうと思う。ところが翌日朝になると熱が下がっている。病院に行こうかどうか迷ってしまう。」この熱は、細菌感染や悪い病気のことが多く、早めに病院を受診した方が懸命です。反対にウイルスが関係する熱はいったん熱が上がると上がりっぱなしになり、朝も高い熱がでます。この場合は他に悪い病気の合併を思わせるような症状がなければ安静にして、きちんと食事をとり、落ち着いて対処すれば良いのです。

解熱剤(熱さまし)は必要ありません。

 解熱剤は、必要ありません。熱が高くても、元気がある時、すやすや寝ている時は熱を下げる必要はありません。解熱剤には病原体をやっつけ病気を治す力はありません。むしろ、解熱鎮痛剤を使うことによって病原体は増え、感染症は悪化してしまいます(文献1)。
 1度熱さましを使わずに食事や安静に気をつけて病気を乗り越えた親子は、その後は熱が出てもすぐ熱さましを使うことはなくなります。すっきりと治り、肺炎や中耳炎など合併症を起こすことも少なくなります。何よりも、熱が出たと夜中に大あわてで震えるお子さんを抱いて病院を訪れることはしないこと。熱に振り回されることなく、落ちついて病気と立ち向かうようにしましょう。

 解熱剤は、頭や身体の痛みのため眠れない、安静にできないなどの時に「痛み止め」として少量使用することがあるかもしれません。解熱剤を使った場合は、「熱が下がったから」と安心せずに、以下のことに注意しましょう。

1)薬の効果がきれると体は熱が必要なため、再び熱が急激に上がり、さむけ、ふるえが起こり、気分不快になります。その時、けいれんをおこすことがあるので注意します。
2)使いすぎると、鼻出血しやすくなる、吐き気がひどくなる、食欲がなくなる、などの病状を起こすことがあります。
3)熱がでたり、頭が痛くなった時にすぐ解熱鎮痛剤を使っていると、解熱鎮痛剤の過敏症を起こしてしまうことがあります。解熱鎮痛剤に過敏になってしまうと、何かの病気の時に使った薬や、食品添加物(保存剤、人工香料、人工着色料など)で強い反応(じんましん、気管支喘息発作、アナフィラキシーなど)を起こす可能性があります。安易に解熱鎮痛剤を多用することは控えましょう。また、解熱鎮痛剤は活性酸素を増やし、一時的に症状が軽くなっても、その後は使用前よりも症状が強くなる場合があります。
4)解熱鎮痛剤は腸管粘膜の透過性を高くしてしまいます。そのため、食物アレルギーのある食べ物を消化しないまま体内に吸収し、激しいアレルギー症状を起こす可能性があります。また、同じことが、脳に起こる可能性があります。脳にはウイルスなどの異物が入り込まないように「脳脊髄関門」という防衛網が働いていますが、解熱鎮痛剤のためにこの働きが落ち、ウイルスや病原体が分泌する毒素を脳内に入れてしまい、脳炎や脳症などの重症な病気を起こす可能性があります。また、脳に重症なアレルギーを起こし、脳がはれてしまう危険性もあります。
5)ライ症候群:当アレルギー外来では12年前、発熱時に解熱鎮痛剤を使用しライ症候群(発熱、意識障害、けいれんで発病し、脳浮腫、肝臓の脂肪変性を起こす原因不明の症候群)を発病して死亡する症例を多数経験してから、発熱に対して解熱鎮痛剤を使用していません。その後、当院内でのライ症候群の死亡例は激減しました。現在では他の病院で処方された解熱鎮痛剤を使ってライ症候群を起こした例が救急搬入されてきます。処方された解熱鎮痛剤に対してアレルギーであった例(8歳男児はアセトアミノフェン、7ヵ月男児はジクロフェナックナトリウム、3歳男児はメフェナム酸のリンパ球刺激試験が陽性でした。後の2例はアレルギーっ子です)においては、解熱鎮痛剤自体が脳浮腫を引き起こした可能性が考えられます。また、アレルギーっ子がアレルギーの原因食品を食べると同時に解熱鎮痛剤を使い、脳の浮腫を引き起こした可能性がある症例も経験しています。
 199912月、20日厚生省医薬品安全対策課発表の「インフルエンザの臨床経過中に発症した脳炎・脳症の重症化と解熱剤の使用について」では、インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班の報告を受けて、ジクロフェナックナトリウムまたはメフェナム酸が使用された症例では、使用していない症例に比較して死亡率が高い傾向のあることが報告されています。

熱だけであわてて病院に行く(特に夜間)必要はありません。

 しかし、以下の場合は緊急に処置が必要なので、早めに病院に行きましょう。
   ・けいれん、ひきつけがあった
   ・吐き気、嘔吐がひどく、水分がとれず、ぐったりしている(脱水)
   ・下痢がひどく、水分がとれず、ぐったりしている(脱水)
   ・腹痛がひどい
   ・咳がひどく、呼吸がうまくできない(気管支喘息の発作や肺炎)
   ・呼びかけても返事をせず、意識がおかしい
   ・熱が40℃以上あるのに手足が冷たく、顔色が悪くふるえがとまらない時
           (熱の調節が自分でできない時・髄膜炎や脳炎など中枢神経の病気のことがあります)
  その他、
   ・親がどうしても心配の時、
   ・熱が5日以上続く時
     このような場合は、検査の必要な場合が多いので、午前中の外来を受診して下さい。

熱がある時の食べ物

 発熱時は、水分、電解質(塩分)、炭水化物(エネルギー)の補給が必要です。寒気がして熱が足りない時は、温かいものをとるようにします。熱が上がりきったら、すこし冷たいものをとってもかまいません。湯ざまし、番茶、くず湯、おもゆ、おかゆ、ニンジン・ダイコン・カブなど野菜を煮て塩や味噌・醤油などで薄く味つけしたもの、リンゴ等果物を煮て砂糖を少し加えた果物スープ、果物のジュース等で、充分水分と塩分とでんぷん質と糖分をとります。脂肪の多いもの、油の多いもの・乳製品など消化の悪いものはお腹の具合が悪くなりやすいので避けます。また、油物は熱や痛み・腫れをひどくさせるため避けるようにします。甘いものは病原体に対する抵抗力を落とすので食べ過ぎは控えます。体調が悪い時は、過去にアレルギーがあったもの、また現在アレルギーがあるものは避けるようにします。病気の時はアレルギーの症状が出やすくなっています。また、アレルギーの状態の時は他の病気が重くなります。

その他

熱があってもお尻だけは清潔に! 熱が高くでも、ふつうのかぜやへんとう炎、肺炎などの時には頭が悪くなることはありません。熱を下げることだけに気をとられず、病気を治すために体や心の安静を保ち、合併症をなるべくおこさないように、落ち着いて対処しましょう。

 熱性けいれんを起こしやすい場合は、ひきつけ止め(けいれん止め)の薬が必要になることがあります。かかりつけのお医者さんに相談すると良いでしょう。

 お風呂は、熱が上がりきり手足がぽかぽかして元気が良い時は入っても良いでしょう。ただし、暖め過ぎないこと、長湯しないこと、湯冷めさせないこと。もし、寒気が強かったり、吐き気があったりなど、具合が悪い時は止めます。お尻は汚くしていると膀胱に感染し、膀胱炎や腎盂炎を起こすことがあるので、きちんと洗ってあげて下さい(特に女の子)。

熱が下がってから

 前の日の夜に熱があった場合は、朝に熱がなくても休ませた方が良いでしょう。まる一日(夜・朝・昼)熱がなくて、元気があり、食欲もあり、他に具合の悪くない時に普段の生活に少しずつ戻していくことを考えます。インフルエンザや麻疹(はしか)など強烈なウイルス感染の後は、免疫力・体力がかなり落ちています。このような場合は、インフルエンザで3〜5日、麻疹で1〜2週間ほどの安静期間が必要です。この時期に無理をすると肺炎・中耳炎、ウイルス性の心筋炎など合併症を起すことがあります。

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