アレルギーっ子の生活

<03-07       2000年09月11日公開>

 【注意欠陥・多動性障害とアレルギーっ子】

                         (ADHD:AttentionDeficit/Hyperactivity Disorder)

ADHD 注意欠陥多動障害  ダイオキシンやPCBなどの環境汚染化学物質が、生物の甲状腺ホルモンであるチロキシン(T4)の血液中濃度・胎児脳中濃度を低下させることがわかってきました。甲状腺ホルモンT4は胎児の脳の発達・分化に大切なホルモンです。一方、注意欠陥・多動性障害(ADHD:典型的な例はドラえもんの登場人物であるのび太やジャイアンの行動と似ているため“のび太・ジャイアン症候群”とも呼ばれています)の原因はまだよく分かっていませんが、その原因の一つとして、母親、または胎児自身の甲状腺ホルモン低下が、様々な脳の発達・分化に影響し多動症を引き起こすことが分かってきています。

  したがって、ダイオキシンやPCB、フタル酸エステルなど甲状腺ホルモンかく乱物質の影響を受け、ADHDが引き起こされる可能性が考えられています。

  アレルギー児たちはADHD的傾向を持つ場合が多くみられます。胎児期にアレルギーを起こしやすい体質と、ADHDの傾向を環境汚染化学物質の影響によって同時に引き起こされている可能性があります。

  また、ADHDの症状は脳神経伝達物質であるドーパミンやノルエピネフリン、セロトニンなどの機能失調状態が関係していると考えられています。また、様々な薬や化学物質がドーパミンなどの神経伝達物質の分泌に影響していることがわかってきています。それらの物質はダイオキシンやPCB様の状態が引き起こされる可能性もあります。

 また、ドーパからドーパミンを生成する芳香族Lア胎児期の甲状腺機能障害と注意欠陥・他動症候群 ADHDミノ酸脱炭酸酵素はビタミンB6が補酵素として働いており、食べ物からきちんと摂取することが大切です。芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素はドーパミン以外にも、脳のシナプス形成に関与するセロトニンの合成、神経抑制性伝達物質であるGABA(γアミノ酪酸)の合成に関与していて、ビタミンB6は行動の異常に関係が深いビタミンです−参考文献(1)−。

  ビタミンB6は、ニンジン、ほうれん草、ジャガイモ、大豆、白インゲン、ヒヨコマメ、レンズマメ、アンズ、ホシブドウ、玄米などに多く含まれますが、白米にも含まれ、量的にきちんと食べれば不足することはありません。また、腸内細菌が合成しているため、腸細菌を正常に保つことが大切です。

 人工栄養ではビタミンB6の不足を起こすことがあるといわれています。副腎皮質ホルモン剤やイソニアジド(抗結核剤)、抗てんかん剤などは抗ビタミンB6作用があります。経口避妊薬(エストロゲン製剤)も抗ビタミンB6作用があり、エストロゲン作用のある、様々な環境汚染化学物質との関係が懸念されます。

 環境汚染化学物質と、行動や情動の異常との関係は今後研究が進むことによって、徐々に明らかにされて行くでしょう。

 アレルギーっ子は、個別の能力はキラリと光るすばらしいものを持っています。ところが、精神活動や感情を全体的に統合してまとめる力があまりないため、すばらしい力を引き出せないでいることが多いのです。食事療法や環境の整備を行い、アレルギーの状態から抜け出て、注意力の散漫や、多動の状態をうまくコントロールできると、持っている能力や才能を発揮できるようになります。

化学物質によるパーキンソン病の発症

 また、なかなか人に溶け込めず、人との会話がうまくできない一方、敏感な感覚を持ちある面では非常に優れた能力を発揮するアスペルガー症候群も脳の微細な障害から起こっている可能性があり、アレルギーの家族にはその傾向をもつ人が比較的多くみられ、環境からの影響を受けている可能性があります。

 アレルギーっ子の親もADHDの傾向、アスペルガー症候群の傾向を持っている人が多いので、一度は参考図書を見ておくと日常生活でのアレルギー対策を進める上での気持ちの整理ができると思います。ADHDの傾向・アスペルガー症候群の傾向があると、アレルギー対策として食事療法や生活環境の整備を行なう時、計画(予定表を作る、未来の家族の理想を考えるなど)や実際の生活上のこまごましたこと(料理や掃除など)や日常の会話がうまくできなくなってしまうことがあります。したがって、親にその傾向がある時は、同時に治療が必要な場合があります。

 ADHD・アスペルガー症候群を持つ人が「自分はADHD・アスペルガー症候群である」という認識を持たないまま行動すると、多くの生活上の支障をきたします。特に、子育ての場面では様々な波紋を生み出す可能性があるわけです。

 ADHDの傾向がある親は、行動に一貫性がなく(ある時はダメといい、ある時は良いと許神経末端のドーパミンによる神経伝達可する)、子どもとの約束が守れないため子どもからの信頼感が得られず、安定した子育てができません。子どももADHD・アスペルガー症候群の傾向があると言うことをなかなか理解できず、一度失敗したことは繰り返して失敗する傾向があるため、叱りつける場面が多くなりがちです。ADHD・アスペルガー症候群の傾向のある人は、待つことが苦手で、日常の生活がうまくできない、劣等感、不安感などのため、イライラが重なり、子どもが着替えや片付けなどをできないことを責めてしまったり、つい子どもを怒鳴ったり、叩いてしまったりすることが増えます。環境汚染物質による性ホルモンへの影響も加わり、子どもを愛そうとしてもなかなか愛情を注ぐことができない自分に嫌気がさし、自己嫌悪感に悩まされ、子育てに自信をなくしてしまいます。その結果、過度の干渉、または、過度の子育て放任になってしまう可能性があります。

 親自身が、ADHD・アスペルガー症候群の傾向のある親(子どもの祖父母)に育てられた場合には、子育てのワザを親から伝えられていないため、また、子ども時代の自分の悲惨な親子関係の思い出等から、自分(親)の子育てがうまくできない可能性もあります。

 「自分はADHDの傾向・アスペルガー症候群の傾向がある」と自覚しADHD・アスペルガー症候群の人の行動を理解している場合、自分の行動がわき道にずれてしまう時は自ら修正し、正しい行動に近づけることができます。子どもと向き合う時も、子どもの幸せを考えて自分の行動をより適切な状態にするように、努力することができます。自分の行動のおかしさを性格だけの原因にして自分だけを責めることなく、落ち着いて考えることができるようになります。「自覚したADHDを持つ人」「自覚したアスペルガー症候群を持つ人」として行動し、生活することが必要なのです。

 以下にADHDの診断基準とADHDの傾向をつかむために都立梅ヶ丘病院外来で使用しているアンケートの内容、大人のADHDの診断基準・問診表、アスペルガー症候群の診断基準、評定基準を記載します。

注意欠陥・多動性障害の診断基準(DSM-W)

A (1)か(2)のどちらか:

(1)以下の「不注意の症状」のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヵ月以上続いたことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応しないもの:

不注意

(a)学業、仕事、またはその他の活動において、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な過ちをおかす。
(b)課題または遊びの活動で注意を持続することがしばしば困難である。
(c)直接話しかけられた時にしばしば聞いていないようにみえる。
(d)しばしば指示に従えず、学業、用事、または職場での義務をやり遂げることができない(反抗的な行動または指示を理解できないためではなく)。
(e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。
(f)(学業や宿題のような) 精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、または嫌々行う。
(g)(例えば、おもちゃ、学校の宿題、鉛筆、本、道具など)課題や活動に必要なものをしばしばなくす。
(h)しばしば外からの刺激によって容易に注意をそらされる。
(i)しばしば毎日の活動を忘れてしまう。


(2)以下の「多動性-衝動性の症状」のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヵ月以上持続したことがあり、その程度は不適応的で、発達水準に相応しない:

多動性

(a)しばしば手足をそわそわと動かし、またはいすの上でもじもじする。
(b)しばしば教室や、その他、座っていることを要求される状況で席を離れる。
(c)しばしば不適切な状況で、余計に走り回ったり高い所へ上ったりする(青年または成人では落ち着かない感じの自覚のみに限られるかもしれない)。
(d)しばしば静かに遊ぶことや余暇活動につくことができない。
(e)しばしばじっとしていない、またはまるでエンジンで動かされるように行動する。
(f)しばしばしゃべりすぎる。


行動性

(g)しばしば質問が終わる前にだし抜けに答えてしまう。
(h)しばしば順番を待つことが困難である。
(i)しばしば他人を妨害し、邪魔する(例えば、会話やゲームに干渉する)。

B 多動性−行動性又は不注意の症状のいくつかが7歳未満に存在し、障害を引き起こしている。
C これらの症状による障害が2つ以上の状況において(例えば、学校[または仕事]と家庭)存在する。
D 社会的、学業的または職業的機能において、臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在しなければならない。
E その症状は広汎性発達障害、精神分裂病、またはその他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例えば、気分障害、不安障害、解離性障害。または人格障害)ではうまく説明されない。

問診表(都立梅ヶ丘病院)

A.言語について

1.始語の遅れがあった。たとえば「マンマ」や「ブーブー」等の意味のあることばの始まりが普通より遅かった。
2.しゃべり方がぎこちなく、スムーズに会話ができるようになるまでに時間がかかった。
3.発音やしゃべり方が不明瞭だった。

B.行動について

4.落ち着きがなく、絶えず動き回っている。
5.幼児期によく迷子になったことがあったが、見つかってもケロッとしていた。
6.座っていても、よそ見や手遊びや身体ゆすりが多い。
7.遊びや興味・関心がパターン化しやすく、新しい場面に臨機応変に対処できない。同じ遊びや質問を繰り返す。
8.集中力が散漫で、まわりのちょっとした出来事に気を取られやすい。
9.注意カに乏しく、何度も同じ間違いを繰り返す。身だしなみがだらしなく、整理整頓ができず、忘れ物や遅刻が多い。
10.根気がなく飽きっぽい。何もせずにボーッとしていることがある。
11.取り掛かりが遅いわりには、いざ始めても仕上げが悪い。

C.情緒について

12.人の話しを最後までよく聞くとか、物事をよく考えてから行動せずに衝動的に行動しがちである。
13.思うようにならないとカッとなりやすい。情緒が不安定である。
14.協調性がなく、自分勝手な行動が多いので、いじめや仲間外れの対象になりやすい。
15.物事がうまくいかなかったり、叱られたり注意されたりすると、すぐやる気をなくしてしまう。あきらめやすい。
16.共感性に乏しく、相手の立場に立って物事を考えることが苦手である。

D.手先・運動について

17.手先が不器用で箸や鉛筆の握り方がいつまでも下手である。
18.身のこなしがぎこちない。例えばボール・ゲームや鉄棒や縄跳びが苦手である。
19.スポーツや外遊びが苦手である。

E.学習について

20.文字や文章を書いたり読んだりするのが苦手である。
21.算数の計算が苦手である。
22.知能がよく見えるわりには成績が伸びない。

大人のADHDの診断基準(「へんてこな贈り物」より)

注意:同じ精神年齢の人と比べて、非常に頻繁に起こる時のみ「診断基準に合う」とします。

A.次のうち少なくとも15項目において、慢性的な障害をみる。

1.力が出しきれない、目標に到達していないと感じる(過去の成果に関わらず)。
2.計画、準備が困難。
3.物事をだらだらと先送りし、仕事に取り掛かるのが困難である。
4.沢山の計画が同時進行し、完成しない。
5.タイミングや場所や状況を考えず、頭に浮かんだことをパッと言う傾向がある。
6.常に強い刺激を追い求める。
7.退屈さに耐えられない。
8.すぐに気が散り、集中力がない。読書や会話の最中に心がお留守になりやすいが、時として非常に集中する。
9.しばしば創造的、直感的かつ知能が高い。
10.決められたやり方や「適切な」手順に従うのが苦手。
11.短気でストレスや欲求不満に耐えられない。
12.衝動性。
13.必要もないのに際限なく心配する傾向。
14.不安感。
15.気分が変わりやすい。
16.気ぜわしい。
17.のめりこむ傾向。
18.慢性的な自尊心の低さ。
19.不正確な自己認識。
20.ADHDまたはそううつ病、うつ状態、薬物中毒(アル中を含む)あるいは衝動や気分が抑制しにくいなどの家族歴がある。

B.幼少期にADHDだった(正確な診断でなくても生い立ちに徴候や症状がある)。
C.他の医学的あるいは精神医学的状態では説明のつかない状態にある。

ADHD問診内容の例

A.DHDの診断に必要な問診の内容を記載しました(「へんてこな贈り物」より)。あてはまる項目が多いほどADHDの可能性が高くなります。試してみて下さい。

1.左利き、もしくは両手利きですか?
2.家族の中にアル中や薬物中毒、うつ病、躁うつ病の人がいますか?
3.気分屋ですか?
4.学校で、充分能力を出していないと思われていましたか? 今はどうですか?
5.何かをやり始める時、苦労しますか?
6.指を鳴らしたり、足踏みしたり、歩き回ったり、常にそわそわしていますか?
7.本を読んでいると、ぼんやりして同じ箇所を読み返したり、同じ頁をまた読まなければならなくなったりしませんか?
8.ぼんやりすることが多いですか?
9.くつろぐのがむずかしいですか?
10.度を越して短気ですか?
11.一度にいくつもの仕事をやっていて、まるで自分が扱えるよりも、6個も多くお手玉を操っている曲芸師の気分になることがありますか?
12.衝動的ですか?
13.気が散りやすいですか?
14.気が散りやすいのに、時にはレーザー光線並みに集中できることがありますか?
15.いつもやることを延ばし延ばしにしますか?
16.あることにとても興味を持つのに、やり遂げられないことがよくありますか?
17.人と比べて、自分のことを分かってもらうのは難しいと感じますか?
18.記憶が定かでなく、何かを取ろうと思って別の部屋へ行って、何を取りに行ったか忘れてしまうことがありますか?
19.煙草を吸いますか?
20.酒を飲みすぎますか?
21.コカインを使用したことがあれば、その時、興奮状態になるよりも、落ち着いて集中できましたか?
22.車に乗っていてラジオのチャンネルをしょっちゅう変えますか?
23.テレビのリモコンをしょっちゅう使いすぎて駄目にしたことがありますか?
24.自分の中にエンジンがあるように、何かに駆り立てられる感じがしますか?
25.子どもの時、「怠け者」「馬鹿」「衝動的」「ぼんやりしている」「分裂している」とか、単に「悪い」などと言われていましたか?
26.親しい間柄でも会話がなかなかスムーズにできませんか?
27.さほど望んでいるわけでなくても、絶え間なく活動していますか?
28.普通の人以上に、行列を作って待つのが嫌いですか?
29.「まず説明書を読む」ことができませんか?
30.ちょっとしたことで、かんしゃくを起こしますか?
31.うっかり間違ったを言わないよう、いつも自分を抑えていなければなりませんか?
32.ギャンブルが好きですか?
33.誰かが要点をのみこめない時など、心の中で爆発しそうになりますか?
34.子どもの時、多動でしたか?
35.刺激の強い状況を好みますか?
36.簡単なことより難しいことをやろうとする傾向がありますか?
37.飛び抜けて直感力が優れていますか?
38.全く無計画に何かを始めることがありますか?
39.計画を立てて実行するくらいなら、歯に穴を開けられた方がましですか?
40.めちゃくちゃになる寸前まで、生活を改めようとしませんか?
41.痒いのにあと少しのところで手が届かないとか、何か分からないけど、何かが「もう少し」あれば良いといった気分になりますか?
42.自分はセックス中毒だと思いますか?
43.のちにADHDが判明した一人の男の言葉-「コカイン中毒、いつもポルノを読む、クロスワードパズルに夢中」-あなたにこういう症状がないにせよ、この人の気持ちがわかりますか?
44.自分はとても夢中になりやすいタイプだと思いますか?
45.自分で思っている以上に浮ついていますか?
46.問題の多い、ごたごたした家庭で育ちましたか?
47.一人でいるのが辛いですか?
48.仕事のしすぎ、浪費、飲みすぎ、食べすぎという、潜在的に害のある強迫的行為をしたあと、気が滅入ることがよくありますか?
49.読字障害がありますか?
50.家族にADHDや多動の人がいますか?
51.退屈を我慢するのがとても辛いですか?
52.いつも落ち着きませんか?
53.本を読み通すのが難しいですか?
54.規則に従ってイライラするくらいなら、少々の法律や規則は守らない?
55.不条理な不安につきまとわれますか?
56.字や数字を逆にしてしまうことがよくありますか?
57.これまであなたの責任で事故を起こしたことが4回以上ありますか?
58.お金の扱いがいい加減ですか?
59.やる気満々タイプですか?
60.生活の中に枠組みや習慣がほとんどなく、それが見つかるとホッとしますか?
61.一度ならず離婚したことがありますか?
62.自尊心を保つのが難しいですか?
63.不器用ですか?
64.子どもの時、スポーツが苦手でしたか?
65.何度も職業を変えたことがありますか?
66.異端児ですか?
67.メモを読んだり書いたりができませんか?
68.住所録や電話帳の類をいつも整理しておくことが、ひどく難しいですか?
69.あなたの暮らしは、ある日はパーティーなのに(元気で明るいのに)、翌日はしょんぼりしていますか?
70.予定外に暇な時間ができると、有効に使えなかったり、気が滅入ったりしたことがよくありますか?
71.たいていの人より独創的、空想的ですか?
72.注意を集中することや気をそらさずにいることに悩みがありますか?
73.短期決戦で仕事をするのが得意ですか?
74.家計の収支を人に任せていますか?
75.何か新しいことをするのが好きなほうですか?
76.事がうまく運んだあと、気が滅入ることがよくありますか?
77.寓話(ぐうわ)や、「かくあるべし」ということを教えてくれるような物語に目がないほうですか?
78.自分の可能性が出しきれていないと感じますか?
79.とくに落ち着きがないですか?
80.授業中にぼんやりしていることが多かったですか?
81.クラスの中で道化役だったことがありますか?
82.これまでに、「貧欲」とか「飽くことを知らない」と言われたことがありますか?
83.自分が他人にどんな影響を与えるか、正確につかめなくて困りますか?
84.問題に対して、直感的に対処することが多いですか?
85.道に迷った時、地図を見るより、勘で見つけようとしますか?
86.セックスの途中で気が散りますか?
87.養子ですか?
88.アレルギーがあれこれありますか?
89.子どもの時よく中耳炎を起こしましたか?
90.自分がボスの時のほうがうまく仕事が運びますか?
91.「本当はもっと頭が良いのに」と思いますか?
92.特に不安感が強いほうですか?
93.秘密を守るのが苦手ですか?
94.何かを言おうとして、何を言うつもりだったか忘れてしまうことがよくありますか?
95.旅行が好きですか?
96.閉所恐怖症ですか?
97.自分が狂っているのではないかと思ったことがありますか?
98.物ごとの要点をすばやくつかむのがうまいですか?
99.よく笑うほうですか?
100.この質問表を読む間、集中していることがむずかしかったですか?

アスペルガー障害の診断基準(DSM-W)(アメリカ精神医学会、1994)

A.人との関わり方に、質的に欠陥があり、次のうち少なくとも2項目に現れる

1 人との関わり方を調節する、視線の接触、表情、姿勢、身ぶりなど多様な非言語的表現を用いることが著しく欠けている
2 発達レベルに相応した友人関係を、作り上げることができない
3 楽しみ、興味、できたことなどを、ほかの人と自然に共有しようとしない(例えば、興味をもったものを他人に見せたり、持ってきたり、指したりしない)
4 人と社会的・感情的なやりとりを交わす関係に欠ける

B.狭く限られた反復的・固定的な行動・興味・活動のパターンがあり、次のうち少なくとも1項目に現れる

1 1つまたはいくつかの固定した狭い範囲に没頭する形で、何かに興味を持ち、その熱中度、または興味の対象が普通ではない
2 明らかの柔軟性を欠いた、ある一定の、有用性のない生活上の決まりや儀式的行動への固執
3 いつも決まった形で繰り返される習癖的な身体の動き(例えば、手をパタパタさせる、指をひねる、全身の複雑な動き)
4 ものの一部、またはもの自体に、いつまでも没頭する

C.その行動の偏りのため、その人の活動する社会的・職業的・その他の重要な領域で、臨床的に問題となるまでの支障が生じている
D.言語には、臨床的に問題となるまでの全般的遅れはない(例えば、2歳までに単語を話す、3歳までに意思を伝える語句を用いるなど)
E.認知的発達に、つまり年齢相応の身辺処理技能や、適応的行動(人との関わりを除き)、また小児期の周囲に対する興味の持ち方に、臨床的に問題となるまでの遅れはない
F.その他の広汎性発達障害や精神分裂病の基準には当てはまらない

アスペルガー症候群診断のための評定スケール(オーストラリア版、1995)

                                   ガイドブック−アスペルガー症候群、東京書籍P22より

以下の質問表は小学校時代の子どもに見られるアスペルガー症候群の兆候を示す行動や能力の有無を確認するためのものです。それぞれの質問には、その年代の子どもに期待できる「通常レベルをゼロ(0:ほとんどない)」とし、「よくある」を6とした評定尺度によって評価されます。

A 社会的・感情的な能力

1 他の子どもとの遊び方の理解に欠けることがありますか? 例えば、グループ遊びに暗黙のうちにあるルールに気づかないなど。
2 昼休みのような、他の子どもと自由に遊べる時間に、他の子どもとの接触を避けますか? 例えば、離れている場所を見つけたり、図書館に行ったりするなど。
3 人との接し方の決まりやマナーが分からないらしく、穏当を欠く行為や発言をすることがありますか? 例えば、相手の容貌に関することを口にして、それが相手の感情を傷つけるかもしれないことに気づかないらしいことなど。
4 相手の気持ちに共感する、つまりその直感的な理解に欠けることがありますか? 例えば、相手に対して謝れば少しは機嫌を直してもらえると分かっていないなど。
5 他人は自分の考えや経験、意見などを分かっているものと思い込んでいるようなことがありますか? 例えば、何かに居合わせていない人は、そんなことを知らないことをよく分かっていないなど。
6 普段とは違うことをしたり不都合に対処したりする時に、普通以上にそれを繰り返し確認してやることが必要ですか?
7 感情の表わし方に分別を欠いたところがありますか? 例えば、実際とは掛け離れた感情の落ち込みや起伏を見せるようなこと。
8 感情の表出を、適度に行えないことがありますか? 例えば、相手が違えば、妥当な感情表出レベルも違うことを理解していないようなこと。
9 スポーツやゲーム、その他の課外授業でも、勝ち負けの争いに加わることに興味をもてないことがありますか?
10 仲間からの社会的圧力に「無感覚」なことがありますか? 例えば、遊具や服装などの新しい流行を追わないなど。

B コミュニケーションの技能

11 言われたことを、字義どおりに受け取ることがありますか? 例えば、「えりを正す」「お目玉を頂戴する」「胸に手を当てて考える」のような言い方に混乱するなど。
12 口調にどこか不自然なところがありますか? 例えば、「外人風」のアクセントだったり、肝心な言葉を強調しない一本調子だったりすることなど。
13 子どもと話しているときに、相手側のことに関心がないように思えることがありますか? 例えば、会話中に相手の考えや意見を聞かなかったり、それに対する自分の考えを述べなかったりなど。
14 会話中に、期待するより目を合わせることが少ない傾向がありますか?
15 話し方があまりに厳格だったり、細かなことにこだわったりすることがありますか? 例えば、形式ばった言い方をしたり、生き字引のような細かな話をしたりするなど。
16 会話をスムーズに継いでいくことに問題はありますか? 例えば、相手の言ったことが分からない時に相手に聞き返さないでいつもの話題に移ったり、延々と返事を考えたりしているなど。

C 認知的な技能

17 本を読むのは知識を得るためが中心で、フィクションには関心がないようにみえますか? 例えば、事典や図鑑、科学の本には夢中になるが、冒険物語には熱心ではないなど。
18 以前あったことや事実に関してはずば抜けた長期的記憶力がありますか? 例えば、隣家の数年前の車のナンバーを覚えている、何年も前に起きた場面をありありと思い出すなど。
19 仲間との想像的遊びをしないことがありますか? 例えば、自分のする想像的遊びには他の子どもを入れず、他の子どものしているごっこ遊びにはとまどって入れないなど。

D 特別な興味

20 ある特定の関心事に熱中して、その情報やデータを熱心に集めたりしますか? 例えば、乗り物や地図、リーグ戦の順位表などの知識がまるで生き字引のように詳しくなるなど。
21 毎日の決まりや予測が変化すると、はなはだしく気分を害することがありますか?例えば、いつもと違う道順で学校に行くことに苦痛を覚えるなど。
22 やらねば気が済まない手の込んだ約束ごと、つまり儀式的行動がありますか? 例えば、寝る前に必ずおもちゃを一列に並べるなど。

E 運動の技能

23 動作のまとまりが悪いですか? 例えば、ボールの受け取りがうまくできないなど。

24 走るときに、足の運びがぎこちないですか?

F その他の特徴

ここではそれぞれの特徴が少しでもあればチェックします。

a) 次のようなものに、独特な恐れや苦痛を覚える
 ・電気器具などの日常的な物音
 ・肌や髪の毛に軽く触ること
 ・特定の衣類を身につけること
 ・予期せぬ物音
 ・ある特定のものを見ること
 ・人の集まるスーパーなどの騒々しいところ

b) 興奮したり困難にぶつかると、手をパタパタさせたり、身体を揺する

c) 低レベルの痛みへの感受性に欠ける

d) 話し始めるのが遅かった

e) 顔を不自然に歪めたり、チックが出たりすることがある


 このスケールの質問への答えの多くがイエスで評点が2から6(通常より明らかに目立つ)だったとしても、自動的にその子がアスペルガー症候群をもつことを示すわけではありません。しかし、その可能性は示されています。

ギルバーグ(Gillberg)とギルバーグ(Gillberg)によるアスペルガー症候群の診断基準(1989)

1.社会性の欠陥(極端な自己中心性) 次のうち少なくとも2つ

a 友達と相互に関わる能力に欠ける
b 友達と相互に関わろうとする意欲に欠ける
c 社会的シグナルの理解に欠ける
d 社会的・感情的に適切さを欠く行動

2.興味・関心の狭さ 次のうち少なくとも1つ

a ほかの活動を受け付けない
b 固執を繰り返す
c 固定的で無目的な傾向

3.反復的な決まり 次のうち少なくとも1つ

a 自分に対して、生活上で
b 他人に対して

4.話し言葉と言語の遅れ 次のうち少なくとも3つ

a 発達の遅れ
b 表面的にはよく熟達した表出言語
c 形式的で、細かなことにこだわる言語表現
d 韻律の奇妙さ、独特な声の調子
e 表面的・暗示的な意味の取り違えなどの理解の悪さ

5.非言語コミュニケーションの問題 次のうち少なくとも1つ

a 身振りの使用が少ない
b 身体言語(ボディランゲージ)のぎこちなさ・粗雑さ
c 表情が乏しい
d 表現が適切でない
e 視線が奇妙 よそよそしい

6.運動の不器用さ

  神経発達の検査成績が低い



参考図書:

前川喜平:注意欠陥・多動障害、小児科voL39:909-920、1998
司馬理英子:注意欠陥・多動性障害(ADHD)−のび太・ジャイアン症候群−いじめっ子、いじめられっ子は同じ心の病が原因だった、主婦の友社、1997
司馬理英子:注意欠陥・多動性障害(ADHD)−のび太・ジャイアン症候群−ADHDこれで子どもが変わる、主婦の友社、1999
エドワード・M・ハロウェル、ジョン・J・レイティー:へんてこな贈り物-誤解されやすいあなたに―注意欠陥・多動性障害とのつきあい方、司馬理英子訳、インターメディカル、1998
Tony Attwood:冨田真紀、内山登紀夫、鈴木正子訳:ガイドブック−アスペルガー症候群−親と専門家のために、東京書籍、1999


参考文献:

(1)岡達三:ビタミンB6、日本臨床57:2199-2204、1999

関連記事−読売新聞(岩手県版)−2000年(平成12年)10月02日(月) 「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」
        読売新聞−2000年(平成12年)10月28日(土) 「注意欠陥・多動性障害(ADHD)と向き合うー5」

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