<03-03 2000年08月14日>
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アレルギーの人を診療して、原因とのあるものを追求するとダイオキシンを含んだ食品がアレルギーを引き起こしているのではないかと考えられる例を多数経験します。ダイオキシンは免疫に影響を与え、アレルギー反応を激しくさせ、アレルギー性疾患を増加させている可能性があります。
ダイオキシンは、非意図的、つまり、作ろうとしてできたものではなく、人がさまざまな化学物質を生産する過程で副産物として作られてしまった化学物質です。
ダイオキシン類は毒性がきわめて強いために、微量でも、生体に対して強い影響を与えます。水には溶けず脂溶性であるため、食物連鎖で生体濃縮を起こし、環境汚染を増大させ、難分解性で半減期が長いため(2〜10年)汚染を持続させています。極微量で生物の生命活動に影響を与えることがわかっています。以前はダイオキシン類というと、ダイオキシン(ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンPCDD)とダイベンゾフラン(PCDF)を指していましたが、最近ではこの2つに加えコプラナーPCB(Co-PCB)を加えるようになりました。
ダイオキシン類の主な4つの生成過程は、
(1)塩化フェノールとそれを原料とする殺菌剤・除草剤・枯葉剤・木材防腐剤の製造過程での生成
(2)PCBの製造と燃焼による生成
(3)塩素を含む製品燃焼による生成
(4)塩素殺菌や塩素漂白過程での生成です。
現在は(4)が騒がれていますが、過去には(1)の除草剤に混入したダイオキシンが水田に多量に散布されていますし、(2)のPCBもまだ日本各地に放置されています。
動物に対して与える影響は、遺伝子、生殖、免疫、内分泌、神経、癌などさまざまです。
人体への進入経路は、水の汚染から食物連鎖を介して、煤煙を吸い込むことで、土を介して土埃や土埃が付着した野菜からとさまざまです。
妊娠初期に胎児に与える影響が大きいと言われています。そして、胎盤は、ダイオキシンが母体から胎児に移行することを阻止出来ないことが分かってきています。図は、大阪医大産婦人科の報告ですが、分娩直後の母親の体脂肪に蓄積されたダイオキシン類は母乳の脂肪にも胎児の脂肪にも同じ濃度で移行することが分かります。
アトピー性皮膚炎は原因となる食品や環境中のアレルギー原因物質を取り除けば、その場はよくなっていきます。しかし、アレルギーの起こしやすさは続くため、他のアレルギーを起こし始めます。
皮膚は外界から体を保護すると同時に、体内からさまざまな物質を排泄する臓器でもあります。汗からは水溶性の化学物質が、皮脂からは不要な油と脂溶性の化学物質が排泄されます。アトピー性皮膚炎は体内の臓器を守るため、自らを犠牲にして化学物質を体外排出しているように思えます。したがって、赤ちゃんから食事療法や環境整備をおこないダイオキシン類などの汚染物質を食べないようにした場合はダイオキシン類の半減期である2から10年ぐらいでアトピー性皮膚炎は改善してきます。つまり、体内の汚染物質を排泄したためでしょう。年齢が大きくなってから食事療法や対策を始めた場合も、ほぼ同じ期間で改善してきます。うまく食事療法がすすまず、ダイオキシンの摂取を少なくできない場合はなかなか治っていきません。
アレルギーの進行を予防するためには、これからアレルギーを起こす可能性がある物に対する対策をあらかじめ実施しておくことと同時に、アレルギーが起こりにく状態をつくりだすためダイオキシンなどの食品汚染や環境汚染に対する対策を行っておく必要があるのです。
ダイオキシン類の仲間は異性体と多数あるため、各異性体において2.3.7.8四塩化ダイオキシンの毒性を1とした場合の比較で表わす毒性等価係数が算出されており、その合計を毒性等価量(TEQ)として現しています。また、ダイオキシンの単位はpg(ピコグラム、1兆分の1g)というごく微量の単位を使います。表を参照してください。
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