朝日新聞−2002年(平成14年)年12月02日(月)

一面

脂の乗った魚介類に高濃度ダイオキシン
−水産省裏づけ「バランスよい食事で大丈夫」−

 脂が多かったり、大都市周辺で取れたりした魚介類は、ダイオキシン類濃度が高いことが水産庁の調査で分かった。国の定めた安全基準(TDI)を大きく上回る魚種もあった。日常生活で口にする機会が多い魚介類を調査対象にしているため、濃度が特に高かった魚種について、追加調査で原因や汚染状況を突き止めることを検討している。
 調査は水産庁が99年度から実施。これまでに93種の結果がまとまった。漁獲量と輸入量が多い魚種が対象。同じ魚種でも海域を分け、食べられる部分の濃度を調べた。
 海域別でダイオキシン濃度が高かったのは東京湾、大阪湾、瀬戸内海といった大都市周辺で取れたコノシロやタチウオ。
 脂の多いマグロ類やブリも同様。最も高かったのは米国東海岸沖で取れたクロマグロ。体重50`の大人が毎日20c(刺身で2切れ程度)を生涯、食べ続けるとTDIを超えることになる。
 逆にバカガイやスルメイカ、マダコはダイオキシン濃度が低かった。カニは、甲羅内のミソが北陸沖、山陰沖のズワイガニやベニズワイガニで高い値を示した。
 同じ魚種、同じ海域でも、年によって濃度が異なる事例がいくつかあった。全体の濃度の平均は1c当たり0.748ピコ(「ピコ」は1兆分の1)cで、日本人が体内に取り込んでいるダイオキシン量を大幅に下回った。
 同庁漁場資源化は「以前から指摘されていたことが裏付けられた結果となった。バランスよく食事をとれば健康面の心配はない」と説明している。

ダイオキシン類濃度が高かった魚介類
海域 種類 魚名 検査値
米国沖大西洋 輸入 クロマグロ 10.1
大阪湾 天然 コノシロ 9.1
瀬戸内海東部 天然 アナゴ 8.3
関東沖 天然 カジキ 6.7
東京湾 天然 スズキ 6.5
米国沖大西洋 輸入 クロマグロ 6.5
瀬戸内海東部 天然 タチウオ 6.0
中部太平洋 天然 キハダマグロ 5.1
山陰沖 天然 ベニズワイガニ 4.5
瀬戸内海西部 天然 タチウオ 4.4
東京湾 天然 スズキ 4.3
瀬戸内海南部 養殖 ブリ 4.0
数値は1c当たりの含有量。単位はピコグラム。
グロマグロとスズキの二つの数値は調査年が違う。
TDI
ダイオキシン類を含んだ食品を一生涯、毎日食べ続けても健康に影響しないとされる1日の耐容摂取量。体重1`当たり4ピコグラムまで。厚生労働省の調査だと、日本人が1日に平均して食品や空気から取り込んでいるダイオキシン量は体重1`当たり1.5ピコグラム。

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