アレルギーっ子の生活

<07-12      2001年12月08日(土)公開>

【病気の時の食事】

 熱、吐き気・腹痛・下痢、鼻水・くしゃみ・鼻づまり、咳・痰、頭痛・からだの痛みなどは病気の時に出る症状ですが、ほとんどが体の中に入った病原菌やウイルス、アレルギーを引き起こす物質(異物)などを体の外に排除し、体を正常な状態に戻すために必要な反応です。しかし、軽いうちは良いのですが、症状がひどくなってしまうと体の方が耐えきれなくなってしまいます。この症状を、薬だけで抑えようとすると薬の副作用のため、ますます体の調子が悪くなってしまうことがあります。

 病気の時の症状は、食べものに気をつけることによって、かなり軽くなります。病気の時の食べ方(健康な時には、より健康になるための注意点になる)を覚えて、病気を軽く乗り切りましょう。

1)よく煮込んだものを食べる。

病気の時に食べて欲しい食べ物
土鍋で作ったお粥、野菜を煮た汁物の汁・味噌汁・澄まし汁、塩、醤油、梅干し、カツオブシ

熱を下げる
痛みを和らげる
腫れが引く
吐き気が止まる
アレルギーが軽くなる
お腹に優しくエネルギー・水・塩分・ビタミンが摂れる 体の中に病原体や異物(アレルギー原因物質、化学物質−農薬・殺虫剤・薬・食品添加物・合成洗剤など)が入ると体はこれを体外に追い出すために活性酸素という物質を作って対応します。活性酸素は病原体や異物を壊して分解してしまいます。ところが、この活性酸素が必要以上に作られ、体の細胞まで傷めつけてしまうと、痛みや腫れ・熱など不快な症状が激しくなります。余った活性酸素をうまく処理できると症状が軽くなりますが、この能力は人によって様々で、個人差があります。しかし、この活性酸素の処理能力は植物や穀物に含まれるビタミンなどの低分子の抗酸化物質によって補う事ができます。このビタミン類は植物の中で重合(手をつないでいる)しているため、生の状態では、人間が利用できません。重合を切るためには、じっくりとよく煮込む、よく噛み唾液とよく雑ぜ合わせる、じっくりと熟成させる(味噌、醤油、鰹節など)ことが必要です。土鍋を使って煮込むと土鍋から出る“遠赤外線”により、さらに重合を切ることができます。したがって、お米や野菜類を土鍋で弱火でじっくりと煮込んだ物(お粥・重湯・くずゆ・野菜のすまし汁・味噌汁など)、特に汁に活性酸素を抑える物質がたくさん存在します。野菜を煮た汁・スープを充分摂りましょう。緑茶や紅茶・ウーロン茶、アスパラサス・リネアリス(ルイボス茶)などにも低分子の抗酸化物質がいっぱい含まれています。カフェインを含むお茶(緑茶・ウーロン茶・紅茶)は興奮作用があるので夜などはあまり過量にならないように気をつけてうまく利用しましょう。

 病気の時はエネルギー効率の良い米(ごはんやお粥)の方が良いのですが、もし、小麦にアレルギーがない場合でうどんを食べる時は農薬の残留が少ない国内産小麦を使いましょう。お米の麺を煮込んで食べてもかまいません。お米でできた麺はアレルギー用品を扱うお店に置いてあります。パンは添加物や残留農薬の問題、含まれる卵や牛乳・油・イーストの問題、同時に水分を取れないなどの問題があり食べないようにします。また、小麦蛋白質であるグルテンは消化されにくいので、下痢している時は避けます

 私たちの体はエネルギーが米などの炭水化物から摂れなくなると、体内の脂肪を燃やしてエネルギーを得ようとします。この時に、脂肪に溶け込んだ環境汚染物質が放出され体調を悪化させる可能性があります。十分に炭水化物からエネルギーを摂れるように頑張りましょう。

 塩分の補給も大切です。塩(できれば色々なミネラルの豊富な天然の塩を使う)、野菜スープ、味噌汁、すまし汁、梅干し、醤油などを使って補給します。普通の生活では加工食品やスナック菓子で塩分の多い生活をしているのに、病気になると食欲がなくなり味噌汁や野菜スープが飲めず(または飲ませず)、口にするものはジュースや果物、ヨーグルト・アイス・牛乳ばかりになるため、あっというまに血液中のナトリウムが減り、具合が悪くなってしまいます。うわごとを言ったり変なことを口走る子もいます。ジュースや果物ばかりではNa(ナトリウム)やCl(クロール)が不足してしまうのです。生きていくためには、塩が必要という認識が薄いように思えます。「減塩」ではなく、「適塩」が必要です。

 穀物からエネルギーとなるデンプン質と蛋白質・ビタミンが、そして野菜を煮て塩味をつけた汁・スープから水とミネラル(塩)・ビタミンが摂れれば、生きていくために最低必要なものは確保できます。これが食べられなければ点滴などで補充しなければいけません。さらに、野菜を煮たもの(食物繊維がいっぱい)も食べられれば、なおいいでしょう。

 蛋白質は病気がやや軽くなったところで、味噌・豆腐・煮豆・よく煮込んだ新鮮な魚・よく煮込んだ豚の赤身などから摂ります。豚肉を使えると炭水化物から取り入れたエネルギーを使う時に必要なビタミンB群も食べることができます。もちろん、汚染の少ない魚、安全な育てられ方をした豚肉が望ましいですね。

 ポカリスエットなどのスポーツ飲料は今まで述べたようなものがすぐには手に入らず、仕方がない時だけ使います。病気の時は、家の人の手作りのできたてで、新鮮な、愛情いっぱいの食べ物が欲しいですね

2)牛乳・乳製品は食べない。病気の時に避けたい食べ物
<牛乳製品>乳糖が消化できない、脂も多い→嘔吐、下痢、腹痛
<油脂>熱が高くなる、痛みが強くなる、腫れる、痒みが強くなる、嘔吐、下痢、腹痛、免疫力が落ちる
<甘いもの>免疫力が落ちる、ばい菌が増える
<果物>摂り過ぎに注意
<アルコール>
<残留農薬>免疫力が落ちる

 牛乳には100ccあたり約7gの乳糖が含まれています。日本人は赤ちゃんの時代をすぎると、ほとんどの人において、乳糖を分解する乳糖分解酵素のはたらきが落ちてくるため、牛乳を飲むと吐き気・嘔吐・腹痛・下痢などの症状を起こしやすくなります。病気の時、その中でも特に下痢や嘔吐などお腹の症状のある時には乳糖を分解する力はさらに低下するため、乳製品は症状を悪化させます。とくに、アイスクリームは脂肪が多いため食べないようにしましょう。ヨーグルトは乳糖が分解され少なくなっていますが、含まれる砂糖やゼラチン(牛の骨から作られる物が多い)・牛乳によるアレルギー、油脂の問題があり、食べないようにします。また、牛乳はそのカロリーの50%が脂肪です。お腹の調子の悪い時は消化が悪く、症状を悪化させます。

3)油物は避ける。

 油の中のリノール酸は体の中で代謝されて発熱・痛み・むくみ・発赤などを起こす物質に変わります。普段からリノール酸の多く含んだ食べ物を大量にたべていると、高い熱を出しやすく、頭痛や体の痛みが激しく、扁桃腺や粘膜が赤く腫れ上がり、体がむくみ、アレルギーの症状が激しくでやすくなります。リノール酸を多く含むたべもの(獣肉脂身、卵、バター・チーズ、植物性油−サラダ油つまり大豆油となたね油の混合油・コーン油・特にベニバナ油など)、ピーナッツ、チョコレートなどはなるべく食べないようにします。反対にα(アルファ)リノレン酸はリノール酸の働きを抑えますのでこの油を適量食べるようにします。αリノレン酸は野菜・海草・魚・貝・エゴマ(ジュウネン)などに含まれます。ただし、魚や貝は新鮮なうちはいいのですが、古くなると脂が酸化されて過酸化脂質となり体に悪影響を与えます。魚貝は新鮮なうちに少量食べます

 また、汚染された魚・魚卵・獣肉の油脂やレバー(肝臓)、牛乳・バター・チーズ、卵などの油脂にはダイオキシンやDDTなど脂溶性の有機塩素系環境汚染物質が蓄積されています。これらの化学物質は病気に対する正常な防衛反応を乱してしまう可能性があります。病気の時は、特に避けるようにしましょう。

4)甘いものは食べすぎない。

 甘い物を大量に食べると、有害菌が増え化膿しやすくなります。腸の中にカビがはえて、抵抗力を落としてしまいます。扁桃腺炎・中耳炎・気管支炎・肺炎・とびひなど化膿する病気の時は極力甘い物は避けます。アレルギーの病気の時は免疫の力が落ちて化膿しやすくなりますので、同じように甘い物はさけます。

 炭酸飲料・大量のジュース・アイスクリーム・ヤクルト・ヨーグルト(砂糖入り)・アメ・チョコレート・ケーキ・あんこなどは食べないようにします。

 もし、甘い物を欲しい時は、農薬の少ない国産の果物をそのままか、絞ってジュースにしたり、煮てスープにします。量的な目安は、一日体重1kg当たり砂糖・果糖1gまでです。体重20キロの子ども(小学1年生)でリンゴ半分、温州みかん2個、ハッサク1個、桃1個、イチゴ2/3パック、ブドウ(デラウエア)1房半が果糖20g相当で一日量です。必要なエネルギーはお粥やくず湯で摂るように心掛けましょう。

5)アルコール(お酒・ビール・ウイスキー・焼酎など)は避ける。

 子供やアレルギーのある人は多量のアルコール摂取を避けます。アルコールは免疫力を落とし、感染しやすく、化膿しやすくなります。オロナミンCや強壮剤のドリンク類にはアルコールが含まれており、飲用は止めます。必要なビタミン類はドリンク剤に頼らず自然な形で野菜類から摂るようにします。

6)輸入食品は避ける。

 グレープフルーツやオレンジ、レモン、バナナなど輸入果物、輸入された小麦などは収穫後に使用された農薬(ポストハーベストといいます)がかなり高濃度に残留しており、病気の時に食べると活性酸素の発生を高め、病気を重くします。輸入小麦に残留している有機リン系殺虫剤は神経の興奮を高め過敏な状態にして、興奮・喘息・痰・発熱の調節障害・吐き気・下痢・頭痛などの症状を重くさせてしまいます。国内産の農薬の残留の少ない物を使用するようにします。

 輸入小麦のパン・うどん・果物等は止めて、お米・国産小麦のパンやうどん・国産の果物等を使いましょう。

7)食品添加物の多い加工品は避ける。

 発色剤(亜硝酸塩、硝酸塩)や防腐剤・保存料(パラベンやソルビン酸Kなど)、乳化剤、合成着色剤(黄4、赤3など)、人工香料などが含まれるハムやソーセージ、かまぼこ・ちくわ・さつまあげなど練り製品、インスタントラーメンなどインスタント食品、ガム・チョコレート・アイスクリーム・スナック菓子等はなるべく食べないようにします。これら食品添加物も活性酸素の発生を高め、病気を悪化させます。加工品を食べる時は、添加物の少ない安全なものを選んで食べましょう。

8)仮性アレルゲンは注意。

 仮性アレルゲンの食べ物は、粘膜が腫れて病気をひどくさせることがあります。食べ方に注意。具合が悪い時は食べすぎないようにしましょう。加熱調理すると反応が弱くなります。

仮性アレルゲン表
含まれる化学物質 食      品
ヒスタミン ホウレンソウ、ナス、トマト、エノキダケ、牛肉、とり肉、発酵食品(パルメザンチーズ、ブルーチーズ、赤ワイン、みそ、しょうゆなど)、鮮度の悪い青背魚(サバ、カツオ、マグロ、イワシなど)
アセチルコリン タケノコ、トマト、ナス、ピーナッツ(落花生)、ソバ、ヤマイモ、サトイモ、マツタケ、クワイなど
セロトニン トマト、バナナ、キウイ、パイナップル、メロン、アボガド、プラム
チラミン チーズ、ワイン、チョコレート、アボガド、プラム、バナナ、ナス、トマト、鶏レバー、ニシン酢漬など
フェニルチラミン チーズ、赤ワイン、チョコレートなど
イノリン サンマ、タラ、サケ
トリメチールアミンオキサイド エビ、カニ、イカ、タコ、アサリ、ハマグリ、カレイ、タラ、スズキなど

9)そして、なによりもアレルギーのある食べ物は口にしないこと。食べ物以外の環境中のアレルギーにも注意すること。

 アレルギーのあるものを食べアレルギーを起こすことは抵抗力を落とし、病気を悪化させる最大の原因になります。例えば、卵のアレルギーのある子が卵製品を食べていると、細菌やウイルス、カビに対する抵抗力が落ち、化膿する病気を起しやすくなります。ダニやカビのアレルギー、花粉のアレルギーを起した状態では、抵抗力が落ち病気を起しやすくなるため、環境中のアレルギーに対しても十分な注意が必要です。

10)母乳の場合

 母乳を飲ませている場合は、お母さんが食事の注意をして、母乳を飲ませてあげて下さい。お母さんが、普通の感染症、つまり、インフルエンザや鼻かぜなどのウイルス感染症や扁桃腺炎、気管支炎などに罹患した時に母乳を止める必要はありません。抗生物質など多少の薬をお母さんが飲んで、赤ちゃんに母乳を与えてもかまいません。

 その理由は、
@お母さんが病気になった時はすでに赤ちゃんには移っています。病気が移らないようにと、あわてて母乳を止めても時すでに遅しなのです。
Aお母さんが病原菌と戦ってできた免疫の力は母乳を介して赤ちゃんに与えられ、赤ちゃんの病気を治す手助けをします。母乳を飲ませていれば、お母さんが治ると同時か、やや遅れて赤ちゃんの病気は治っていきます。

 母乳は病気の赤ちゃんには最良の薬です。

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