<06-02 2001年07月03日(火)公開>
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仙台から仙石線にのって20分、下馬駅で降りるとそこにでんと病院がそびえています。坂総合病院は仙台市の北東に位置する塩釜市にあり、410床の入院ベッドを持つ病院です。周囲の2市3町(塩釜市、多賀城市、松島町、利府町、七ヶ浜町合わせて人口18万9千人−1996年12月現在)と仙台市の一部、北部地域の一部を診療圏とし、24時間救急を受け入れています。外来数は96年1年間で35万2500人(平日1日で約1100人)、そのうち2万2500人(6.4%)が夜間休日の来院、救急車の搬入件数は96年1年間で1628台、うち1104台(67.8%)が夜間休日の搬入です。従って様々な急患の人たちが押しかけます。そんな中を、これからお話するアナフィラキシーを起こされた患者さんたちが来院されます。
アナフィラキシーは多くの症例報告はあるのですが、発症頻度などの統計はなかなかありません。まだ、調査がされていないのです。そこで、当院の症例をまとめてみることで推測してみましょう(新しいデータ-は角田先生の著書『アナフィラキシーに負けない本』に書かれています)。
図1は1987年から1996年までに当院にアナフィラキシー・アナフィラキシーショックで入院、または、他の疾患を治療するために入院中にアナフィラキシー・アナフィラキシーショックを起こした症例89名を年令別にまとめたものです。入院が必要な症例は重症度が高いことを意味しています。これらの症例をみると、21才から40才頃までの体力が比較的充実した年代は少ないのですが、20才までの成長期と、40才以降には多くなります。男42才、女33才の厄年を過ぎるとアナフィラキシーが起こりやすくなるような感じがします。
図2は1987年から1996年までの間に入院したアナフィラキシー・アナフィラキシーショックの患者さんたちを年度別にまとめたものです。年々増加していることがわかります。また、図3のように内科、小児科に占めるアナフィラキシー入院患者さんの割合は内科では横バイかやや増加ぎみですが小児科ではここ数年で急上昇しています。
これから紹介する方たちは外来を訪れたアナフィラキシー症例のすべてではありません。特に大人の例は食物の関与が疑われ、くりかえす場合に内科医から紹介されたり、本人の希望、たまたま私が当直の時に来院された方だけがアレルギー外来を受診し相談をうけています。グラフの白抜きの部分は私が経験した患者さんたち(今回報告症例)ですが、その他にも約同数のアナフィラキシー患者さんたちが入院しています。その方たちは多くが薬剤や輸血製剤、ハチ刺されによるアナフィラキシーです(表1)。
外来で経験するアナフィラキシー患者さんの実数は今回報告する症例のおそらく数倍はいることと思います(特に大人)。多くの大人のアナフィラキシーの方は対処療法を受けただけで帰宅されています。はっきりした原因は不明のまま、ひょっとすると自分のなった病気がアナフィラキシーだということも知らないまま毎日をすごされているかもしれません。また、ハチに刺されてアナフィラキシーを起こした方たちや薬剤性のアナフィラキシーの方のほとんども私の外来には来院されません。これからお話する85名(122回)のアナフィラキシー症例の報告はそんな状態からの報告です。これからみなさんは、当院のアナフィラキシーの一部を垣間見ることになります。
表1 | |
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