<05-10 2001年10月18日(木)公開>
連休やお盆お正月出産での実家・故郷へのお泊り旅行、家族や友人とのお楽しみ旅行などアレルギーっ子が自宅以外で宿泊する時、困ってしまうのは泊る場所でのダニやカビ、ソバガラ枕など。喘息発作が起きるのでは? アトピー性皮膚炎がひどくなるのでは? と心配です。しかし、きちんと準備をしていけば大丈夫。どうしたら良いのか考えてみましょう。
アレルギーっ子の最初の試練になります。楽しく出かけたものの、何も用意せずに行ったため、寝たとたんに喘息発作を起こして病院に駆け込み点滴した。―よくある話です。ほとんどが、しまってあったお客さん用のフトンなど寝具を出してすぐ使ったためです。長い間押し入れにしまってあった寝具はダニの死骸のかけらや糞、カビなどがいっぱいついています。この寝具を使えば、ダニやカビを吸い込んで喘息や鼻炎、湿疹を起こします。特に、梅雨を越えたばかりの夏の帰省の時や、秋口には高温・多湿でダニ・カビが増えた後なので要注意です。
では、どうすれば良いのでしょう? もし実家の方でやっていただけるようなら、帰る前に寝具は何回か日に干して掃除機をかけておいてもらい、洗える毛布や枕カバーは洗濯をしておいてもらえば良いのです。それが、できない場合は、実家に着いたらすぐにフトンなど使う寝具に掃除機をかけます。掃除機が実家にない時は、自宅の掃除機を自動車に積んで持って行くことも考えて下さい。それもできない場合は防ダニ用に作られた高密度に編んだシーツやフトンカバー(カービックジャパン、テイジンのミクロガードなど)を持って行き、ダニ・カビだらけのフトンを覆ってしまう方法もあります。最近では、フトンを持って行くという方もいます。後で、お話するように、封筒型の寝袋を持って行くのも良い手です。
ソバのアレルギーがある場合は、ソバガラ枕は厳禁です。ソバガラ枕はすべてポリ袋にしまって、ソバガラの粉が落ちていそうな場所にはよく掃除機をかけておきましょう。
旅館やホテルに泊る場合、空調がきちんとされていて、寝具も清潔でダニ・カビが少なければ良いのですが、なかなかそううまくはいきません。電気掃除機を自動車で運んで掃除機をかけるという手もありますが、こんなうまい方法があります。最近では寝袋が安くなり、質の良いものが簡単に手に入るようになりました。表面が木綿でできているもの(中は化学繊維でも仕方ないでしょう。)を買い、1週間以上かけて何回か干し、掃除機をかけ、ダニ・カビを少なくして、旅行に持っていきます(できれば使う前に洗うと更に良い)。封筒型の寝袋は広げると1枚のフトンほどの大きさになり、暑い場合は旅館のフトンの上に広げて寝てしまえば、ダニ・カビのフトンに直接触れることがなく、便利です。お腹にかけるタオルは忘れずに持っていきましょう。もちろん寒い場合は、封筒型にして中に入って寝ます。寝袋の色も黒や紺色ばかりでなく、クリーム色や白もあり、室内の寝具との違和感も軽くすみます。掃除機をかけてダニ・カビを少なくした寝袋さえあれば、アレルギーっ子でも比較的安心して、どんな所にでも出かけることができます。ただし、旅館の寝具の上で飛び跳ねたりしてほこりを立てて吸い込まないようにご注意。ソバガラ枕はソバのアレルギーがない人に頼んでポリ袋の中に密封してしまいましょう。
やはり、封筒型の寝袋が便利です。荷物は1つ増えますが、簡単で効果も期待できます。ソバガラ枕は同じようにポリ袋にしまいますが、できれば、本人は直接触らず同伴の先生にお願いした方が無難です。合宿や修学旅行の場合は、フトンを子供たちが敷く時や、フトンの上でふざけて遊んだり、枕投げが始まった時などにほこりを吸い込んで喘息発作を起こすことがあります。こんな場合は、騒ぎが収まるまでその場から逃げることを覚えておきましょう。2段ベットの場合、ほこりは下の方が多くなるので、上の段になるように前もって同伴の先生と相談しておきましょう。ソバのアレルギーが強い場合は事前に旅館と相談して、ソバガラ枕のない部屋を用意してもらうことも必要になります。
第2の問題は食べ物です。
連休やお盆お正月出産での実家・故郷へのお泊り旅行の場合は実家の方たちの理解さえ得られれば、必要な食品・調味料を持っていき料理すれば良いので簡単です。ただし、アレルギーが強い場合は、調理器具に付いた微量の食べ物でも症状を強く起こすことがあり、鍋やフライパンなどを持っていかなくてはいけない場合もあります。また、アレルギーのある食べ物に触って接触性の湿疹やジンマシンを起こすことが多いので、アレルギーの強い食べ物は実家にいる間は食べないようにしてもらうことが大切です。お父さんの実家に行く場合はお父さんが、お母さんの実家に行く場合はお母さんが実家の方たちに充分説明して下さい。もし、ひどく症状が出てしまった場合は、何でひどくなったのか考えて次回に備えましょう。
この場合は、事前に食べられる物を準備していくか、現地で調達することができれば簡単です。お米のアレルギーがあり雑穀などを食べている場合は、小さな電気炊飯器を持って行くか、湯煎するだけで食べられるヒエやアワ、低アレルギー米のレトルトパックを利用します。泊るホテルや旅館に腕の立つ料理長さんやシェフがいる場合は、事前に相談をして、食べることのできる素材でつくってもらったり、素材を送って調理してもらったお母さんもいます。
担任の先生と相談し、事前に献立メニューを教えてもらい食べられるものと食べられないものを子供と相談しておきます。もし、食べられない物が多い場合は“代替え品”を持ち込めるか相談します。最低、ご飯と味噌汁が食べられれば大丈夫ですが、その他、梅干し、海苔、ふりかけ、缶詰(豚肉や豆など)、アレルギー用ソーセージ、食べられればお湯を注ぐだけで食べられる味噌汁の素などを持っていけば何とかなります。当日分は作って持っていくこともできますし、宿泊先に保管をお願いできる場合は事前に作ったものをクール便で送ることも方法の1つです。食べ物を持っていく時は引率の先生に事前に相談しておきましょう。合宿や修学旅行の目的は食べに行くことではないので、目的を充分考えて、みんなと同じ物が食べられないことを悲観して、悲しい旅行にならないようにしましょう。無理して食べて具合が悪くなってつまらない旅行にしてしまうより、食事も気をつけて楽しい旅行にしましょう。初めて、親元から離れて、自分で考えて、ダニの対策や食べ物を選ぶことを実践してみる絶好の機会です。出かける前の準備を充分にして、楽しく行動し、一回り大きくなって帰ってくると良いですね。もし失敗してしまったら、くよくよせずに失敗を教訓にして次の旅行の時のために何がいけなかったのか充分考えておきましょう。
猫や犬のアレルギーがある場合、もし実家にこれらの動物がいると、症状は悪化します。特に部屋の中を自由に動き回る猫や、室内犬の場合は確実に症状が出てしまいます。猫や犬のアレルギーの場合、これら動物のフケや毛に触ることで痒くなったり、吸い込むことで喘息発作を起こします。その他、うんちの乾燥物に触ったり吸い込んでも、おしっこに触っても、唾液でも(つまり、舐められても)症状が出ます。動物そのものに触るだけでなく、排泄物でも赤くなってしまう訳です。猫を抱っこしたおばあちゃんがそのままの服装で赤ちゃんを抱っこすると、赤ちゃんは湿疹になります。したがって、これを避けることは大変困難です。ペットにアレルギーのある場合は実家に帰る前にペットの入らない部屋を確保してもらい徹底的に掃除し(掃除機をかける、拭き掃除をする)、アレルギーっ子がいる間は部屋の中にペットが入らないようにしてもらいます。ペットを触った場合は、服を着替えてもらうか、ペットの面倒をみるための専用の服を用意してそれを着てペットに触り、アレルギーのある子にはペットのフケや毛、唾液・糞・尿などが触れないように気をつけてもらいます。これらができない場合は事前に飲み薬や軟膏を使用しなるべく接触しないようにします。症状が悪化した場合は、残念ながら帰ってくるしかないでしょう。
連休やお盆お正月出産での実家・故郷へのお泊り旅行の場合は寝具や食事に気をつけられれば、普段使っている薬を持っていくだけで良いでしょう。家族や友人とのお楽しみ旅行では、喘息発作がある場合、吸入器(電動)かハンドネブライザーを持っていけると、もし発作が起きた時に早めに処置ができます。主治医の先生に相談して下さい。
学校での合宿や修学旅行の場合は家族の同伴は普通はないので、飲み薬・軟膏・ハンドネブライザーは事前にきちんと準備しておきます。準備は必ず本人と一緒に確認しながら行ないます。お母さんがやってあげたりすると、いざ飲む時に本人がわからなくなることがあります。1回分の薬を小さな袋に入れて何月何日の朝・昼・夜と飲む時間を書いておきます。吸入する・軟膏を塗るなどもメモを作り忘れないようにします。喘息発作の時飲む薬も1回分ずつ小さな袋に入れて「発作時」と書いておきます。本人が自分できちんと薬を管理するための良い練習になりますので、時間をとって考えながら薬を揃えましょう。ひどくなった時の連絡場所、いつも使っている薬の内容などはもしも病院を受診する場合には必要になるので、メモして本人に持たせます。
●水筒―水やお茶を持っていけば自動販売機の前に立つことが減らせます。
●薬―飲み薬・吸入器(ハンドネブライザー・電動式)・軟膏(湿疹用・虫刺され用)。
●傷用 キズバン・消毒薬(イソジンなど)。
●ティッシュペーパー・ハンカチ・タオル―鼻水や汗を拭くのに欠かせません。
●帽子・日傘―直射日光は湿疹を悪化させます。
●蚊よけ―虫除けスプレー(ディート:ジエチルトルアミド)は吸い込んで喘息発作を起こしたり、湿疹になることがあります。超音波式蚊よけは、蚊しか効果がありませんし、少しうるさいのですが、虫除けスプレーを使いたくない場合は便利です。効果のほどは色々と論議があります。アレルギーっ子たちのキャンプで10年ほど使っていますが、確かに効果はあります。テントで寝る時に、入り口につるしておくとそのテントでは蚊に刺さされる率がぐんと減ります。痒み止めのオイラックス軟膏は事前に皮膚に塗っておくと虫除けの効果があります。
●大きめのポリ袋―旅館のソバガラ枕をしまう時に使います。
●寝袋―事前に掃除機をかけて持って行きます。
●枕 ・ダニ用シーツ―もし持っていければ安心して眠れます。
●電気掃除機―荷物にはなりますが持っていければ安心です。
●食品―梅干し・アレルギー用ふりかけ・水煮の缶詰(豆・サケ・豚肉・馬肉など食べられるもの)・レトルトのご飯(低アレルギー米や雑穀)・おせんべい・ポンセン・お茶の葉など。
●浴用石けん・石けんシャンプー―体に合う今まで使っていたものを持っていきます。
●洗面道具 歯ブラシなど。
●電気釜―低アレルギー米や雑穀を炊く場合に必要になります。
●合宿や修学旅行の時、親の付き添いがなく一人で出かける場合、もし出来るのなら携帯電話またはPHSを使うと便利です。ただし、本人が困った時に親に相談するために使うだけです。親から心配してかけることは慎みます。