アレルギーっ子の生活

<04-37      2001年09月08日(土)公開>

【アレルギーっ子と残留農薬】

 農薬を使うことによって、栽培植物につく害虫やカビなどを殺して、手間をかけずに多量の作物をきれいに作り上げることができるようになりました。その代わり、作物に残留する農薬によって健康が害されたり、農薬によって栄養素が少なくなった野菜を食べることになってしまいました。虫でさえ食べない野菜や果物を食べることになってしまったのです。アレルギーっ子は農薬の残留に敏感です。農薬の残留が多い作物はすぐアレルギーを起こしてしまいます。体に害のある農薬を知らないうちに避けているのでしょう。農薬の残留が多い食品は食べないで済むように心がけましょう。

 有機リン系、有機塩素系、カーバメイト系、合成ピレスロイド系の殺虫剤の中には外因性内分泌撹乱物質(環境ホルモン)として働くものが次々と見つかっています。輸入された果物の中には収穫後に農薬をふりかけたり、農薬のプールにつけてから日本に輸入されるものが多く、注意が必要です。収穫後の農薬使用をポストハーベストと言います。

ポストハーベストされた輸入果物

バナナ

 TBZ−チオベンダゾール、イマザリル、ベノミル(環境ホルモン)など催奇形性や発癌性がある農薬が残留。特に、バナナの場合、皮だけでなく果肉まで農薬が残留しているため、注意が必要です。洗わなくてもよく、ナイフを使うこともなく皮がむけて、安くておいしいバナナは若いお母さんたちや運動選手の間で人気のようです。しかし、アトピー性皮膚炎で来院し、農薬つきのバナナをたくさん食べていた小さな子供たちの多くがアレルギーを起こしています。ネグロス島や国産の無農薬のバナナが手に入る時があり、もし食べる時はこちらを食べるようにしましょう。

柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツなど)

 柑橘類はDP(ジフェニール)、OPP(オルトフェニルフェノール:環境ホルモン:輸入レモン・グレープフルーツ)、TBZ、アルディカーブ(環境ホルモン:輸入オレンジ)、パラチオン(環境ホルモン:輸入オレンジ)など様々なポストハーベストが使用されています。以前、レモンのヘタ枯れ防止に除草剤2−4D(発癌物質のダイオキシンを不純物として含み、ベトナムにまかれた枯れ葉剤の1つ:環境ホルモン)が使用されていることがわかりました。日本中のデパートやスーパーマーケットから輸入レモンはなくなり、代わりにカボスやスダチ、柚、国産レモンなどが売られるようになりました。皮に残留が高いため、もしどうしても食べなくてはいけない時は十分に水に浸けて農薬を落とし、皮をむいて食べるようにして下さい。農薬つきのレモンを皮ごと薄切りにして紅茶に浮かべ、農薬を煎じて飲まないように注意しましょう。皮を使ったマーマレードは原材料が厳選されたものでなければお奨めできません。輸入柑橘類を使ったジュース類はポストハーベストされた後にジュースの加工にまわされるため、農薬の残留が見つかっています。柑橘類を食べる時は農薬の少ない国産のものを食べるようにしましょう。

リンゴ

 リンゴが輸入されるようになり、農薬の残留したリンゴが出回るようになりました。リンゴジュースの原料となる濃縮還元液も多量に輸入されています。リンゴジュースはアレルギーを起こしにくいと思い込み、毎日のように飲んでいた子供たちの多くがアレルギーを起こしています。リンゴにアレルギーを起こすと同じバラ科の果物であるイチゴ、ナシ、モモ、スモモ、サクランボ等にもアレルギーを起こすことがあります。農薬が少ない国産のリンゴを食べるようにしましょう。

イチゴ

 輸入イチゴは必ずポストハーベスト(カルバリル:環境ホルモンなど)されています。イチゴはそのまま皮をむかずに食べるため、食べれば即農薬が体内に入ってきます。特に、クリスマスの時のイチゴのショートケーキは一時期に大量に作られるため、1ヶ月たっても腐らずカビが生えないという農薬漬けの輸入イチゴが、洗わないままケーキの上に乗せられています。もし、買ってきたショートケーキをその日に食べないで冷蔵庫に入れておき、一日たってから食べようとしたらイチゴにカビは生えていた場合は、国産の農薬の少ない安全なイチゴを使ったか、かなり日にちが経って腐りかけた輸入イチゴを使ったかのどちらかです

サクランボ

 サクランボは国産のものでも農薬の残留が高い食品です。輸入ものとなるとさらに不安が増します。カルバリル(環境ホルモン)などが使われています。

その他

 キウイや南国の果物類など多くの輸入果物は注意が必要です。キウイにはビンクロゾリン(環境ホルモン:1998年登録失効)が使われていました。輸入マンゴーからはパラチオン(環境ホルモン)などが検出されています。なるべく良心的な生産者が作られた国産の果物を食べるようにしましょう。ジュースにすると、いっきに飲んで飲みすぎてしまうため、ゆっくり時間をかけて食べられるように、果物そのものを食べるようにしましょう。自分の目や香りで果物の状態を確認できるように、ジュースではなく、そのままの形で皮をむいて食べるようにしましょう。

 輸入セロリにはペルメトリン(環境ホルモン)、輸入ブロッコリーからはフェンバレレート(環境ホルモン)なども検出されています。

輸入穀物

輸入小麦

 輸入小麦は貯蔵時、輸入時に有機リン系の殺虫剤(フェニトロチオン、マラチオン:環境ホルモンなど)を混ぜられて運ばれてきます。殺虫剤は小麦の外殻に多く残留します。小麦の一番外側(フスマ)は牛や鶏の餌になります。その次の外側は2等粉といわれ、アジアへの輸出用の小麦粉、学校給食のパン用にまわされます。したがって、全国の学校給食のパンからは有機リン系の農薬の残留が見つかっています。市販のパンは、小麦の一番内側の1等粉を使っているため、殺虫剤の残留はわずかです。1等粉は市販の小麦粉として販売されます。ただし、この小麦粉からも、残留は見つかっています。国産の小麦粉は、収穫後の貯蓄期間も短かく、遠方に運ぶ必要もないため、農薬の残留は激減します。「国産小麦」の表示は「農薬が入っていません」という意味を持っています。アレルギーっ子は農薬の残留が少ない国産小麦の製品を食べるようにしましょう。

輸入大豆

 日本人は納豆、豆腐など大豆を食べる機会が多くあり、大豆の残留農薬(アラクロール:環境ホルモンなど)は命取りになりかねません。アレルギーっ子は輸入大豆を使った豆腐や納豆、大豆油および大豆油が使われた食品(植物性油脂と表示されています)は極力食べないようにし、国産の農薬の残留が少ない豆腐や納豆を食べるようにしましょう。

輸入トウモロコシ

 その多くはヒトの口には入らず、牛や鶏、豚などの飼料として使われます。私たちの口には、トウモロコシの残留農薬が肉に残留する形で入ってきます。また、ブドウ糖果糖液糖(清涼飲料水の甘味料)として多量に飲み込んでいます

雑穀

 輸入された雑穀(アワ、ヒエ、キビなど)からも農薬の残留が見つかっています。重症な食物アレルギーの人の中には、雑穀に強く反応する人もよく見かけます。最近、アレルギー用無農薬と表示された食品からも残留農薬が見つかり、大問題になりました。信頼のおけるお店で購入しなければいけません。食べて症状が悪化する場合は、使用を控えます。

お米

 日本人が食べる国産米は、栽培中に農薬が使用されても、精米して白米にしてしまうと残留はかなり少なくなります。ただし、玄米は外側に農薬の残留があるため、玄米を食べる場合は無農薬に近いものを食べるようにしましょう。アレルギーっ子は玄米を消化する力が弱いことを考えると、農薬の少ない胚芽米を食べた方が良いでしょう。輸入米が入ってきています。輸入米は小麦と同様に有機リン系農薬(マラチオン:環境ホルモンなど)でポストハーベストされており注意が必要です。

 農薬が残留した農作物を食べないことは、農薬を使わない農地を増やすことにつながります。農薬を使わない農地が増えることは地球の環境を守ることになります。環境を守り、農薬で汚染された土地や河川を増やさないために、私たちはなるべく無農薬の作物を食べるように心がけなければいけません。そのことがアレルギーっ子と地球を守ることになります。

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