<04-34 2001年09月02日(日)公開>
ラパスガイは和名をダイオウスカシガイと言い、チリからペルーの沿岸に普通に生息する貝で、現地にて採取・冷凍し輸出されています。食感が日本のアワビやトコブシに似ているため、チリ産アワビ、チリ産トコブシと称して安く売られてきました。
チリから輸入されアワビ・トコブシと称される貝は2種類あり、1つは問題のラパスガイで、チリでは北から南までほとんどの地域で採れます。スカシガイ科の貝で、殻にはかぎ穴のような孔があいているため、英語ではGrand Keyhole Limpetと言われます。チリ産アワビは他にもう一種あり、ロコガイと言われるアクキガイ科の貝です。日本のアワビ・トコブシはミミガイ科の貝であり、まったく別の科に属します。
ラパスガイは、現地で採取後、3〜5分ボイルして、身を殻からはずし、洗浄されてサイズ分け、冷凍し、5Kg単位で製品となります。日本に輸入されてから、国内でスライドのように珍味として加工され使用されています。チリ大使館の商務部の話では、1996年頃から食べて腹痛を起こす例があり、珍味の会社で使用をやめる例があるとのことでした。
ロコガイも珍味として輸入加工されて売られていますが、アナフィラキシー例の報告はまだありません。
グラフは、チリ大使館の資料を使って、ラパス、ロコガイのチリでの生産量を経年的に見たものですが、近年生産量は減っているようです。日本への輸入量は不明ですが、大部分は日本に輸出されているようです。
ラパスガイは1986年にハワイでの食中毒事件があり、その後に国内でも10例以上のアナフィラキシーの報告があります。スカシガイ科の貝から抽出したKeyhole Limpet Homocyaninは化学実験の抗原として使われており、強い抗原性を有すると思われます。このタンパク質は他の科の貝にも含まれており、アワビやサザエなど他の科の貝との共通抗原性も示唆されています。貝を多食し、感作された(アレルギーを起こす準備状態になった)ところに多量の抗原(アレルギーを起こす原因)を含んだラパスガイを摂取しアレルギー反応が激しく起こると思われます。
ラパスガイは大量に輸入され、「アワビ」または「トコブシ」と称し、「煮貝」として土産品や寿司ダネ用として使われています。ミミガイ科の日本産のアワビやトコブシとは別物であり、アレルギー体質の人が食べる場合には注意が必要です。