アレルギーっ子の生活

<04-33      2001年09月01日(土)公開>

【魚の寄生虫アニサキスによるアレルギー】

 魚の寄生虫 アニサキスはアジやニシン、イワシ、イカなどの海産の魚に住みついている、長さが20〜40mmの糸状の寄生虫です。アニサキスが寄生した魚を食べているうちにアレルギーを起こし、再び寄生した魚を食べることで、じんましんやアナフィラキシーを起こします。魚の好きな40歳以上の人に多く見られます。アジ、ニシン、イワシ、サバ、サンマ、ハマチ(ワカサやブリ)、スケソウダラ、イカなどの海産の魚にはアニサキス幼虫という虫体の長さ2040mmの糸状の寄生虫が住みついていることがあります。寄生された魚をおろすと、内臓の表面に小さな丸い袋があります。この袋を開くと中に糸状のアニサキスが出てきます。アニサキスが寄生した魚を食べているうちにアレルギーを起こし、再び寄生している魚を食べることで、じんましんやアナフィラキシーを起こします。魚の好きな40歳以上の人に多く見られます。

 アニサキスの最終宿主はクジラやイルカなので、クジラやイルカがいる海域の魚・イカなどにはアニサキス幼虫が寄生している可能性が高くなります。クジラ・イルカ類がいない海域の魚・イカへの寄生は少なく、河口近くの魚を除いて川の上流に棲息する川魚(ヤマメ、イワナ、ニジマスなど)への寄生はありません。

 アニサキス幼虫は魚やイカが死んでしまうと内蔵から筋肉内に移行していきます。したがって、魚やイカが死んでから時間がたつほど肉の中に存在する可能性が増えます。魚やイカが生きてアニサキスアレルギー アニサキスの幼虫が寄生した魚介類・魚卵の生食・加工調理食品を食べてアレルギーを起こす。大人の場合:魚介類を食べて起こすアレルギー症状の多くがアニサキスアレルギーの可能性大。魚IgEは陰性、アニサキスIgE陽性が多い。 子どもの場合:小児では魚介類のアレルギーが急増中。魚のみがIgE陽性の場合と、魚・アニサキスともIgE陽性の場合が混在。いる間は、主に内臓に寄生しているため、内臓近くの肉(ハラス)には存在する可能性が強く、背側の肉には少ないと思われます。旬の新鮮な魚が入手できるようにしておくこと、アニサキスが寄生しているかどうかを見分けられるようにしておくこと、背側の肉を調理すること、アニサキスが寄生できないような小さな魚(シラスなど)を食べることが大切な予防法です。アレルギー反応は死んだ虫体でも起きます。また、熱を加えても多少アレルギーを起こしにくくなるだけです(1)。そのため、サンマのツミレ汁、イカの腑の煮物でアナフィラキシーを起こした例があります。もちろん、アニサキスが寄生した魚の刺身によるアレルギー反応は多くの例で見られます。また、魚の加工品、特にカマボコ類は原料のスケソウダラへの寄生率が高いため、アニサキスアレルギーを引き起こす誘因の1つになっている可能性があります。

アニサキスによる急激な腹痛(アニサキス症)

 アニサキスが寄生した魚を刺身や酢味噌あえなど生で食べ、寄生していたアニサキスが胃の粘膜や腸の粘膜に食いつき、胃腸の粘膜がアレルギーを起こして脹れあがり激痛が起こります。内視鏡をおこない、胃粘膜に食いついているアニサキスを取り除くと症状は改善します。

 当院の症例でみると、サンマの刺身やヌタ(酢味噌あえ)での症例が多くみられます。

アニサキス症 アニサキス幼虫が寄生した魚介類・魚卵を生食→アニサキス幼虫が腸粘膜に食い込み進入→腸粘膜がアレルギーを起こし、激しい腹痛・腸閉塞に 1987〜97年に坂総合病院で摘出した「胃アニサキス」54例の中で多かった原因魚は@サンマ(25件)、Aカツオ(10件)、Bマグロ(5件)、以下サバ、アジ、サケ、ハマチ、イカ、イワシ、タラコ、ヒラメ、メヌケと続きます。

 アニサキス症は、アニサキスが食いついた腸粘膜に限局したアレルギーを起こしますが、アニサキスアレルギーは、そのアレルギー反応が全身に広がってしまった状態です。

参考文献

(1)粕谷志朗、古賀香理:Anisakis関連疾患における特異IgE測定の意義、アレルギー41106-1101992

その他

平井俊二:蕁麻疹の重要原因アニサキス‐特異IgE抗体による検討 アレルギーの臨床2018-252000
赤尾信明:アニサキス症―今日的課題― 最新医学54(6月増刊号):1592-15991999
白井敏博ら:魚の生食によりアナフィラキシーを呈した成人食物アレルギー5例の臨床的検討 アレルギー46:3051997
粕谷志郎、泉清弥:サバ蕁麻疹はアニサキス・アレルギーか アレルギー39:2411990
日本水産学会編:魚類とアニサキス 水産学シリーズ(7)、恒星社厚生閣刊、1974
Alonso.A,et al:Anaphylaxis with Anisakis simplex in the Gastric Mucosa.New England Journal of Medicine 337:350-351、1997
Kasuya S,et al:Mackeral-induced urticaria and Anisakis.Lancet 335:665、1990
川中正憲:食品によって媒介される寄生蠕虫症−国内での最近の話題 食品衛生研究48(No2):41-50、1998
安藤由記夫ら:千葉県鴨川市及び周辺地域において発生したアニサキス症、即時型アレルギー症状を伴った集団発生例 寄生虫学雑誌41:811992
石倉肇:日本におけるAnisakidosisの発生状況の解析 臨床と研究72:1152-11581995
名和行文:寄生虫感染とアレルギー 医学のあゆみ192966-9702000

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