アレルギーっ子の生活

<04-17      2001年06月02日(土)公開>

【腸内のカビ・病原性細菌の話】

 植物達はその根を大地にしっかりと食い込ませ、土の中にすむ細菌やカビなどの微生物達と共生しています。土に含まれる栄養素の一部は微生物達の働きでさまざまな物質に変えられて根から吸収され植物達の栄養となります。陸上に生活し、土にとどまることなく動き回れる動物達は、母なる海や川から離れ土から離れるときに、体内に海と土を取り込みました。海は細胞の内と外の体液に、土はお腹の中、腸内の細菌達に変わりました。

 正常な腸の中では食べ物はよく消化され小さなかたまりとなって吸収されます。この状態では体に吸収された食べ物は栄養となり、体の中で様々な臓器をつくる材料となり、エネルギーのもとになります。

 しかし、今、子供達のお腹の中は、砂糖づけ、加工食品、合成洗剤、ヒトの消化機能にあわない食品(牛乳など)を過剰に食べることなどによって、腸内に住み着いている正常な細菌やカビのバランスがくずれています。異常に増えたカビや病原性の細菌は毒素をまきちらし、体に備わっている免疫力や抵抗力を落としてしまいます。その結果、病原体の感染やアレルギーを引き起こし、腸の粘膜の働きをマヒさせ、悪循環におちいります。とくに、腸管内にカンジダというカビ(酵母)の仲間が異常に増えて起こす病気をイーストコネクション、慢性カンジダ過敏症と言います。

 ところが、カンジダなどのカビや病原性細菌が異常に増えてしまうと、腸の粘膜は壊され、正常な働きができなくなってしまいます。カンジダは腸の壁にトンネルを掘り、腸粘膜は穴だらけになってしまいます。

 壊れた腸の中では消化と吸収がうまくいかず、食べ物は消化されないまま腸粘膜を通り抜け、食物アレルギーを起こしてしまいます。

こわれた腸では、栄養となるのは少しだけ
腸内の状態がアレルギーの起こしやすさを決める

1994年5〜7月受診のアトピー性皮膚炎患者の便培養結果 グラフは19945月から8月の間に外来を受診したアトピー性皮膚炎患者さん108人の便培養の結果です。一般の市中病院では大便中のすべての菌を調べることは不可能です。そこで、カンジダアルビカンスなど酵母カビの仲間はカンジダ選択培地を使い、病原性大腸菌などは診断用免疫血清を使って検出しました。その結果、アトピー性皮膚炎の患者さんの8割以上からカンジダや腸管病原性細菌がみつかりました。

 じんましんの患者さんでもアナフィラキシーの患者さんでも同様にカンジダや腸管病原性細菌が検出され、腸内の状態が悪いことが推定できました。

93〜94年のじんましん症例の腸内状況 アナフィラキシー患者さんの発症直前・直後の便培養結果


腸の中にカビや病原性細菌を増やさないための方法―こんな物を止めましょう

 砂糖がいっぱい入った甘いもの・果物・アルコールはやめるか控えます。
 イースト(サッカロミセス=ビール酵母:カンジダと同じ酵母の仲間です)を含む食品は控えます。天然酵母もイーストの仲間です。
 加工食品中の防腐剤・発色剤や殺菌剤。
 合成洗剤や食品中の乳化剤。
 ポストハーベスト農薬・残留農薬などの化学物質。
 水道水中の残留塩素・トリハロメタン。
 抗生物質を使った直後には腸内にカビが増えます。
 体調が良くないときはキノコ(カビの仲間です)は避けます。

 

腸の中にカンジダや病原性細菌を増やさないための方法−こんなものを食べましょう!

 米・新鮮な野菜・海草・新鮮な魚貝・脂身の少ない肉・アレルギー用のいい油を使って、食物繊維の多い和食を食べるようにしましょう。
 小麦を食べる場合は、パンはやめてウドンにします(できれば農薬の残留の少ない国産小麦にしましょう)。
 漬物を食べましょう。ぬかみそ漬けやたくあん漬けは日本人のヨーグルトです。野菜を乳酸菌で発酵させた漬物は日本人が考え出した整腸剤です。韓国のキムチも乳酸菌で発酵させたものです。食べることができる人は適量食べましょう。  
 味噌やしょうゆ、カツオブシなどはアスペルギルス・オリザというカビの力を使って出来上がります。このカビは古来、日本人が慣れ親しんできたカビです。このカビを使った食品を食べましょう。  
 ニンニクはカンジダの増殖を押さえます。ニンニクのアレルギーを起こさないように注意しながら、ときどき食べるようにしましょう。ニラやセリ・ミツバなど香りのある野菜を食べましょう。
 お茶(緑茶・紅茶・ウーロン茶)やアスパラリネア・ハーブティーはカンジダの増殖を押さえます。抗活性酸素作用があり、カフェインが含まれないため小さな子供でも飲めるアスパラリネアがおすすめです。
    浄水器をつけて塩素や発癌物質トリハロメタンを取り除いた水を使いましょう。


腸の中にカビや病原性細菌を増やさないための方法―体質に合った食べ方をしましょう!

 アレルギーのある食べ物は食べないようにしましょう!  腸管の粘膜がアレルギーを起こすと、カビや病原菌が増えます。
  牛乳の乳糖にご注意!  乳糖を分解する酵素を持たない日本人の成人、子供が乳糖を多量に口にすると腸の状態が悪くなり、カビや病原菌を増やすことになります。アレルギーがなく今は飲んで大丈夫な人もほどほどにしましょう。

腸の中にカビや病原性細菌を増やさないための生活

 寝不足・疲れをためる・ストレスをためることは抵抗力を落とし腸内のカビや病原性細菌を増やします。朝はきちんと起き、3度の食事をきちんと摂り、夜更かしをせずにぐっすりと眠るようにしましょう。
 ダラダラ食いは腸内の状態を悪くさせます。おなかの空いている状態で腸の中は正常に回復します。元気いっぱい遊び、おなかを空かせましょう!
 ダニや花粉などのアレルギーを起こしたときも、鼻水や痰と一緒にダニの死骸・糞や花粉を飲み込み、腸粘膜が荒れます。これらのアレルギー対策も忘れないようにしましょう。  
 食物繊維の多い食べ物を食べ、便秘にならないようにしましょう!
 環境中のカビの対策をしましょう!衣類・部屋の中・寝具などにカビが増えると症状が悪化します。
    寝具に掃除機をかけてカビを減らしましょう。
    しまってあった衣類や寝具は使う前に洗うか掃除機をかけてカビを少なくしてから使うようにしましょう。
    部屋の中を乾燥させてカビが増えないようにしましょう。
    換気・除湿をして結露がでないようにしましょう。
    部屋の中のカビは消毒用アルコールなどで拭き取り掃除しましょう。



@整腸剤 ミヤBM(ミヤイリ菌・酪酸菌):生きた腸内細菌を乾燥させたものです。飲むとお腹の中で生き返り増えます。乳酸菌を増やし、腸内細菌を正常にします。清浄な腸内細菌が増えるため、カンジダなどのカビや病原性大腸菌など悪い細菌を減らします。ビタミンB群(B1,B12)やビタミンK、ニコチン酸、葉酸を作り出し、甘いものの食べ過ぎで足りなくなったビタミンを補います。少量の乳糖とトウモロコシデンプンが入っているためほのかに甘みがあります。
 朝1〜2個、夜1〜2個をかみつぶして食べてください。乳児の場合はつぶしたり、ぬるま湯で溶かしてもかまいません。熱湯で溶かすと菌が死んでしまうので熱い湯は使えません。
●エンテロノンR(抗生剤耐性腸内細菌):粉の薬です。抗生物質使用時に使います。牛肉エキスを培養液に使いますので牛乳アレルギーのある場合は症状の出ることがあります。  
●その他の整腸剤:ラックBなどいろいろありますが、培養時に脱脂粉乳を使っている場合があり敏感な人は注意が必要です。  
乳酸菌を増やす働きのあるオリゴ糖(ラフィノースなど)を利用してもいいでしょう。  
A抗カンジダ剤・抗カビ剤  どうしてもカンジダやカビが減らないときに医師の処方の元に使います。
 ジフルカン、イトリゾール、ナイス達ン、ファンギゾンなどがあります。服用時の説明をよく聞いてからきちんと飲むようにしましょう。
 飲みはじめて2〜3日後、一時的に症状が悪くなるときがあります。たいていの場合はそのまま飲み続けると症状が改善してきます。薬のためにカビが死に、死んだ菌体から放出された毒素のためにでる症状です。あまりひどい時は薬を一時中止し病院で相談してください。
 
Bビタミン剤  パンビタンなど総合ビタミン剤は、抗カンジダ剤を使ったときに腸内で生成が減ったビタミン類を補います。ただし、ビタミン剤には保存剤や酸化防止剤としてブチルヒドロキシルアニソール(環境ホルモン物質の疑いあり)の入っているものがあり、妊婦や乳幼児の使用は注意します。  

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