<04-18 2001年06月09日(土)公開>
人類は甘い物を求めてきました。砂糖がすぐに手に入らなかった時代、砂糖は“薬”でした。食べる物がなく、飢餓で病気になった人に砂糖を食べさせると、とたんに元気になりました。甘い物がなく、食べたくても食べられない時代は人類の歴史が始まってからずっと続いてきました。甘い物がすぐ手に入り食べられる時代はつい最近始まったばかりです。そのため、ヒトの体は甘いものがないことには耐えられますが、甘い物が多いことには耐えられないようです。現代の子供たちは甘い物の食べ過ぎによって病気の危機にさらされています。
@化膿する病気を起こしやすくなります。
皮膚の感染症(とびひ、おでき、単純ヘルペスなど)、化膿性中耳炎、へんとう腺炎、肺炎などの感染症を起こしやすくなります。
A腸管内にカビ(カンジダなどの酵母菌)を増やし腸内細菌叢を乱します。
カンジダは腸の粘膜を壊し、アレルギーを悪化させます。
B虫歯の原因になります
C砂糖を代謝するときにビタミンB1を使うため、ビタミンB1の不足を起こします。その結果、心が不安定で落ち着きがなく、イライラした子供になってしまいます。
D砂糖や果物など甘いものを過剰にとった場合、血糖値は一過性に上昇しますが、その後急激に低下し、かえって低血糖になってしまうことがあります。低血糖は神経をいらだたせ、正常なヒトの脳の働きを乱してしまいます。ご飯など穀物を食べた場合はお腹の中ででんぷんがゆっくりと糖に変えられるため、血糖値が徐々に上昇し急に低下することがなく、脳に安定したエネルギーを供給します。そのため、落ち着いた精神活動・安定した神経系統の反応を保つことができ、その子の持つ能力を充分発揮することができるようになります。
砂糖は必ず必要なものではありません。ヒトやブタ、ネズミなどデンプンを消化する酵素(アミラーゼなど)を持つ動物は、デンプンを徐々に消化してブドウ糖にし吸収しています。吸収されたブドウ糖は血液の流れにのって体の各臓器に運ばれ、エネルギーを供給しています。砂糖ではなく、米や小麦、大麦などのデンプン質がヒトのエネルギー源として必要なのです。
砂糖は体重1Kg当たり1gが一日の最大量です。例えば体重10Kgの子供の場合、砂糖10g/日
体重20Kgの子供の場合、砂糖20g/日
ただし、大人でも20g/日以下に控えるようにしましょう。
果物に含まれる“果糖”も砂糖と同様に考えます。甘いものを食べるときは農薬の残留の少ない季節の果物を、季節を食べるつもりで味わって食べるようにしましょう。ジュースにして飲むと短時間でお腹の中に入ってしまうため、甘いものを食べた信号が脳にたどり着く前に多量を飲んでしまうことになります。果物は丸のまま、または皮をむきながらゆっくりと味わって食べましょう。
様々な食品に含まれる『糖分』の量 |
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小児科をしていれば当然毎日病気の子どもたちを診察するわけですが、子どもたちを連れて来るお母さんたちの看病の仕方、特に食べさせ方がどうもおかしいのです。
嘔吐下痢がひどくて来院した子供のお母さんに「水分を取らせて下さい」と言うと、「この子は水を飲んだことがないんです。」・・普段はジュースか牛乳しか飲まないとのこと。驚いて理由を聞くと「水は汚いから」と。・・一理あるのですが、ジュースと牛乳では嘔吐下痢は良くなりません。
いつも扁桃腺を化膿させてくる子のお母さんに「甘い物の食べすぎではないですか?」と聞くと「そんなに多くはありません。少ない方だと思います」と言うので、詳しく尋ねると毎日ジュースは2〜3本、アイスは風呂上がりに1個を欠かさず、ヨーグルトかゼリーはどちらか、その他にアメ、ガム、ケーキ、チョコレート、果物など合わせて1日の糖分摂取は100g以上・・!「どうして少ないと思ったのですか?」と再度尋ねると「隣の子は一日でペットボトルを1本飲みますから・・」「・・!!」
これ以来、お母さんの「少ない」はあてにせず1日どのくらい口にするのか具体的に聞くことにしています。ちなみに砂糖(が使われているもの)ばかり食べている子はインスリンの過剰分泌状態にあるため、病気で食べられなくなるとすぐ低血糖になり点滴になります。
人間は哺乳動物という生物です。その生命を輝かせるためには生き物としての最低の条件を持っている必要があります。
人間は100万年の長い間本能的に甘いものを求めてきました。それが生きていく上で欠かすことができないものだからです。しかし、甘いものはなかなか手に入りませんでした。したがって、甘いものがない状態には人間はなれていますが、甘いものが多すぎる状況にはなれていないようです。甘いものの食べ過ぎは病気を引き起こします。甘いもの大好きのあなた!。扁桃腺炎や中耳炎、肺炎を繰り返していませんか?急にイライラしておこりっぽくなりませんか?