アレルギーっ子の生活

<03-23        2001年01月15日公開>

【室内のカビについての知識】

 日本は湿度が高くカビに囲まれて生活をしなければいけない“カビの国”です。日本人はそのカビをうまく利用してカビを生活に生かしてきました。例えば、みそ・しょうゆ・日本酒・酢などを醸造・発酵するためのコージカビはアスペルギルスというカビの仲間です。しかし、オイルショックによって、アルミサッシという石油節約のための道具が生み出され、家屋の気密性を高め石油燃料を節約することのみが優先されて普及されたため、換気の悪化を招き、室内のダニ・カビの増加、室内の石油ストーブやガスコンロなど石油燃焼物による汚染の悪化、タバコの煙の害、新築建材や接着剤から揮発したホルマリン・有機溶剤の害などを引き起こしてきました。冬には、外気と室内の間の断熱がないため壁や窓枠で結露の発生を高め、異常にカビを増やしてしまいました。
 適当な栄養(ヒトや動物のフケや毛や排泄物、食べ物のカス)と湿度・温度があればカビは増えていきます。さらに、空気の流れが少なくなると最悪の状態になってしまいます。浴室・台所・食べ物・汚れた衣類・洗濯物・タンスの後ろ・押入れの奥・結露した窓枠の周りなどはカビの大好きなところです。カビが増えればそのカビを餌にしてダニも増えます。アレルギー体質の人は増えすぎたカビに「もうこれ以上のカビはいらない」とアレルギーを起してしまいます。カビの対策はダニの対策と基本的には同じです。

・一般的なカビの対策

 空気の流れがあればカビは生えにくくなります。押入れの中にものを収納するときは、スノコを使ったり、押入れの後ろの壁と収納するものとの間に空間を作るようにします。タンスは壁と10cmほど隙間を作るようにしましょう。暖房器具と結露との関係やエアコンのカビ取りの話は換気と暖房の項を参照して下さい。

・なるべく乾燥状態を続ける

 カビは適当な温度・湿度・フケなどの餌があれば増えていきます(菌糸を伸ばして範囲が広がっていきます)。この状態では、触ったりするとアレルギーを起します。増えた後に、餌がなくなり、乾燥し、生き延びることが困難な状態になってくると、胞子を作り遠くに飛ばし、子孫を残し生存範囲を広げようとします。この胞子を吸い込んで鼻や気管支の病気が起こります。乾燥と高湿度を繰り返すとカビは菌糸も胞子も大量に作ってしまいます。カビの対策は乾燥状態を続けてカビを増やさないようにすること、および、胞子を飛ばす前の段階でカビを対処してしまうことが重要です。
 室内で石油やガスを燃やすと、大量の水が発生します。ストーブの上にやかんを乗せたりしないこと。加湿器は必要ありません。北側の寒い部屋は外気との温度差で結露します。この部屋は、換気を充分するか、除湿機を使って結露を押さえましょう。

・壁などカビの生えてしまったところの処置

 ブラシやスポンジなどで軽くこすり落とすことがアレルギーっ子のカビ対策の基本です。カビがひどいところは消毒用のアルコール(エタノール)を脱脂綿に含ませて塗りつけ、胞子が飛ばないようにした後、ブラシで軽くこすってから水で洗い流し、再びアルコールを塗っておきます。これで多くのカビが死滅します。
 エタノール以外にも、乳酸を利用したもの(乳酸、過酸化水素、界面活性剤)、輸入の柑橘類に防カビ剤として使われているTBZ(チアベンタゾール)を利用したものが市販されています。乳酸を使ったもの(カビコロジなど)は匂いも少なく、安全性も高いのでアレルギーっ子のお宅にはおすすめですが、界面活性剤=合成洗剤が入っており、皮膚についたり吸い込んだりしないように注意が必要です。TBZは食品添加物として口に入れば発癌性・催奇形性のある危険な物質です。吸い込みや皮膚への付着が増えるためスプレーでの使用は止めたほうが無難です。
 吸い込まないように、また、皮膚につかないように、ローラー、水鉄砲のように線状に液が出るようになったもの、または注射器などを使って塗布します。広範囲に塗る場合は、円筒型のローラーで塗り付ける方法がお勧めです。次亜塩素酸を使ったカビ取り剤は霧を吸い込むと気道が炎症を起こし、皮膚につくと皮膚がただれてしまうので、とくに注意が必要です。
 どれも、使うときは手に付かないように手袋が必要です。手が荒れない、ポリエチレン製の手袋などを利用しましょう。ゴムの手袋はゴムのアレルギーが増えており手荒れを起す人が多くなってきています。ゴムの手袋は、合わないようなら早めに使用を中止して下さい。
 アレルギー検査では特にクラドスポリウムという黒カビにアレルギーを起こしている場合が多いので、お風呂場や台所など湿気が多いところの壁、天井、洗いオケ、浴槽のふたなどにつく黒いカビは早めに処置して下さい。

・寝具・衣類のカビ対策

 寝具にもカビは大量に生えています。なるべく乾燥させて掃除機で吸い取ること。日光に干してカビを殺菌して下さい。干したら、必ず掃除機をかけてカビの胞子を吸い取って下さい。酵母菌は掃除機をかけてもあまり取り除けないので、洗えるものは洗濯をして、カビを洗い流すことが大切です。
 洗濯をしてすぐ干さずそのままにしておくと、衣類に残ったカビが増えて、その後に干した時は乾いてもカビがいっぱい残ってしまいます。衣類は洗ったらカビが増える前になるべく早く干すようにしましょう。洗濯機の中は洗濯物の汚れがついた部分にカビが生えます。時々は洗濯槽の中を点検してカビを掃除しましょう。表面は使い古しの歯ブラシとエタノールがあれば掃除できます。内部は電気器具店に頼んで掃除をして貰うといいでしょう。
 衣類に付着した食べ物、特にご飯や小麦が衣服や皮膚に残っているとカビの温床となります。食後はきちんと手を洗い、小さい子の場合は顔も拭いて下さい。パジャマについた場合は着替えないと寝ている間にカビが増えてしまいます。食べ物のカスを寝具の上にこぼさないようにしましょう。

・浴室・入浴時のカビ対策バスタオルは毎日交換していますか? 翌日にはカビやばい菌だらけになっています!

 湯上がりにはきれいな上がり湯やシャワーを体にかけて汚れ落とし、洗濯をした湯上がりタオル(バスタオル)を使って体を拭きましょう。一度使ったタオルは洗濯をしてから使いましょう。
 一度使ったタオルをそのまま室内に干しておくと、充分な栄養(ヒトの体から出たアカ)と適当な湿度・温度があるため、カビや雑菌が増えてしまいます。そのタオルを翌日以降も使うと、せっかく入浴してきれいになった体に、前の日に体から落としたはずのカビや雑菌をまた体につけることになってしまいます。実際、湯上がりタオルを培養してみると、第一日目に使った直後には皮膚にいたと思われる多数の酵母菌その他のカビが付着しており、二日目にはさらに増えていました。アトピー性皮膚炎の患者さんで皮膚にカビや細菌の感染を起している人は、湯上がりタオルの洗濯回数が2日〜1週に一度ぐらいと少ない場合が多く見受けられます。3日も洗わずにそのまま使えば、タオルはカビだらけになっているはずです。アトピー性皮膚炎がある場合は皮膚にひっかき傷があるため、その傷からカビや細菌が入って、アトピー性皮膚炎をこじらせてしまいます。入浴後は洗ったきれいなタオルを使うように心がけましょう。浴室内でよく洗いしぼった小さなタオルで体についた水を拭き取り、浴室から出たらきれいに洗って乾燥させた小さなタオルで仕上げ拭きをすると、洗濯が楽になります。また、家族全員で同じタオルを使われている家庭もありますが、家族同士でカビや細菌の感染を回し持っていることも多く、各個人ごとに違うタオルを使うようにしましょう。

浴槽は毎日洗い、フケやアカを洗い落とし、カビや雑菌を増やさないここに付着した垢には皮膚から落ちたカビ・ばい菌が入っており、翌日には大量に増加しています

 浴室内の壁や床などヒトのアカや 石鹸カスが飛び散ったところはやはり栄養・温度・湿度ともカビや雑菌の生える条件を充分満たしているため、翌日になるとかなり増殖しています。浴槽内側の湯面のすぐ上にはアカがこびりつきます。そのアカに皮膚から落ちたカビ・細菌がつき、増えます。皮膚にカビや細菌の感染を繰り返している人は、お風呂の湯の交換や浴槽・浴室の掃除が少なく、2日〜1週に一回の家庭が多くみうけられます。これは宮城県の特徴かもしれません。親の幼少時代にはどうだったかとたずねると、やはり2日に一回とか3日に一回だったようです。昔の隙間風だらけの寒いお風呂場と現代の気密性の高い風呂場の違いもあると思います。昔の宮城県のお風呂は家の外にあることが多く、とにかく寒かったようです。入浴後は風呂の水やタオルは凍ってしまい、カビや雑菌が生えることはなかったかもしれません。現代の暖かな室内にある風呂場では、できれば毎日湯を交換して、浴槽内・浴槽のフタ・床(特に排水口の周り)・浴室の壁・洗いおけの内側やまわりなど、アカがつきやすいところは掃除をして汚れをとりカビや雑菌が増えないようにしましょう。

入浴最後に浴室内にカビが生えやすく、身体に接触しやすいところ−排水口付近、たらいの内側、浴槽のふた、周囲の壁や床 冷たい水を散布しカビの増える条件を1つでも減らす

 浴室の天井や壁を毎日掃除するのは大変です。でも、ちょっとした事でカビの増殖を抑えることができます。最後にお風呂に入った人は、冷たい水道水を壁や天井にかけて下さい。付着したアカを落とし、浴室を冷やすことでカビの増加を多少抑えられます。でも、定期的にはきちんと掃除しないといけません。

その他

 水不足で水が使えないなどの時は、最低でもタオルは毎日洗いたてのものを使い、湯上がりにきれいな上がり湯かシャワーを使うことだけはおこないましょう。
 新しいお湯に交換したら、塩素の害をさけるため、ビタミンCやお茶などをお湯の中に入れて塩素を取ってから入浴して下さい。

・洗濯物のカビ対策

ヒトの体についているカビや細菌は着ている衣類に付着します。洗濯をするとほとんどのカビや雑菌は洗い流されてしまいますが、ほんの少量が衣類に残ります。洗濯をしたあとすぐに乾いてしまえば残ったカビや雑菌はあまり増えることはありません。しかし、乾くまでに時間がかかると、カビや雑菌は増えてしまいます。こうなると、乾いたときに変な匂いがするようになります。そこまでいかないとしても、カビのアレルギーのある人がこの衣類を着てしまうとカビのために、かゆみが起き、はれたり赤くなったりして、接触性皮膚炎やじんましんを起してしまいます。衣類を洗ったらなるべく早く乾かして、カビや雑菌を増やさないようにしましょう。どうしても乾きが悪く、一日たっても乾かないときは、アイロンをかけると高熱のためにカビや雑菌は死んでしまい、衣類も乾くので効果的です。衣類乾燥機でも熱のためにカビや雑菌は死んでしまいますのでうまく利用しましょう。

・その他

 金魚や熱帯魚、カメなどの水槽にもかなりのカビが生えます。水槽の周りやフィルターはこまめに掃除しましょう。室内植物の鉢にもカビは生えます。怪しい鉢は、なるべく室外に出すようにしましょう。

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