<03-11 2000年10月16日公開>
アレルギーを起こしやすくさせる様々な原因が私たちの生活環境中に潜んでいます。この原因を探し出してうまく処理できれば、病気がひどくなることはなくなるでしょう。
そして、アレルギーっ子たちは、環境中の体に合わない物質、体を傷つけ体の働きをおかしくさせる物質を敏感に見つけ出します。まるで、高性能のセンサーを持っているようです。
アレルギーっ子本人または周囲の人たちがそのことを理解できると、アレルギーの原因となる物は比較的簡単に生活のなかで見つけ出せるようになります。例えば、卵のアレルギーのある子がいました。その子は舌の上に食べようとする物を少量のせると、その中に卵の成分が入っているかどうかがわかってしまうのです。臭いや、舌に感じる何かで判断しているようです。
アレルギーっ子たちはそれが理解されていないと、好き嫌いの多いだめな子として見られていることがあります。しかし、実際は、だめな食物を知らないうちに避けている場合が多いのです。極端に嫌いな物は、アレルギーを起こしていることがあります。
こんな相談を受けたことがあります。14歳になるその男の子の家ではおソバが好きで、家族でよくおソバを食べました。ところがその子はある時から突然おソバを食べなくなってしまいました。お母さんは偏食と考え、おソバを食べさせようといろいろと手を尽くしましたが食べません。ある時、無理やり食べさせてしまったのです。すると、その子は具合が悪くなって吐きだし、苦しみ出しました。その後、病院を受診しました。ソバはIgE検査で強陽性でした。ソバアレルギーが強いこと、この子が食べられないのは好き嫌いではないことを、その子とお母さんにお話しすると、その子は泣き出してしまいました。きっと今までわかってもらえなくて苦しんだのでしょう。やっと、わかってもらえたのです。
こんな例もあります。その2歳の子は卵がきらいでした。お母さんは栄養をつけようと食べない卵を食べさせる方法を考え出しました。牛乳と砂糖、卵を混ぜたミルクセーキにするとその子は卵を口にしたのです。もちろん、アトピー性皮膚炎はどんどん悪くなっていきました。その子には卵のアレルギーがあったのでした。せっかく、本人は食べないようにしていたのに…。
反対に、大好きで毎日のように食べているもの、触っているもの、吸い込んでいるものの中に、体に合わない“物質”を含んでいる場合は徐々にアレルギーを起こす準備が進められ、ある時突然に発症します。例えば、牛乳のアレルギーは牛乳が体にいいと信じて毎日のように飲み、ある時突然に牛乳を受けつけなくなります。それでも、栄養があるという知識に振り回されて飲み飲み続けるとアトピー性皮膚炎や気管支喘息、蕁麻疹などの病気を引き起こしてしまいます。この場合やっかいなことがあります。大量に毎日続けた牛乳をやめると、2〜3日後に禁断症状が出ることがあります。むしょうに牛乳を飲みたくなり、少量飲むと症状が消え、気持ちがよくなります。しかし、たいていは飲みすぎてしまい、アレルギー症状を起こしてしまいます。牛乳以外にも同様なことがあります。他のアレルギーや感染症などで具合が悪い時に限って、アレルギーのあるものを食べてしまい悪循環におちいってしまうことがあります。
例えば、こんな子がいました。10歳の男の子は気管支喘息でした。発作を起こし、点滴になるとなぜか発作がひどくなり、決まって入院になってしまうのです。何回かそんなことを繰り返したあとついに原因がわかりました。気管支喘息発作が始まると、その子はパンが食べたくなり、点滴中に必ずパンを食べていたのでした。ところが、その子には小麦のアレルギーがあり、パンのために発作がひどくなっていたのでした。パンをやめ、おにぎりにしてからは、点滴すると必ず入院になってしまう悪いパターンはなくなりました。
私たちの体内では、体の状態を正常に保つため、神経系・内分泌・免疫やアレルギー反応が複雑に絡み合い常に働いています。この働きが何かの原因でおかしくなってしまった時、アレルギーは暴走して病気となってしまいます。農薬や化学薬品、ディーゼル車の排気ガス、過酸化物など、つまり、活性酸素を増加させるようなもの・環境ホルモン(外因性内分泌撹乱物質)の作用を持っているものが存在すると、アレルギーの病気を起こしやすいようです。これらの物質には、アレルギーの警告が無視され続けると癌や成人病(生活習慣病)などのさらに生命維持を困難にさせる病気を起こす可能性があるものが含まれます。環境汚染物質が含まれない自然の状態のものはアレルギーを起こしにくくなります。
牛乳・油脂(卵・肉の脂身・魚の脂・植物性油)の過剰摂取・砂糖の過剰摂取などヒトの食性に合わない物・合わない食べ方はアレルギーを起こしやすいのです。食性にあった穀物(とくに米)や、野菜などは多く食べても強いアレルギーを起こしにくく、もしアレルギーになっても軽く早く改善します。日本人は日本人の土地と風土に合った食べ方・暮らし方が大切なのです。
消化されず大きな分子のままで体内に入ってしまうとアレルギーを起こしてしまいます。反対に、充分消化されたものはアレルギーを起こしにくくなります。例えば、アレルギー用のミルクは牛乳から作られますが、牛乳蛋白を充分消化した状態にしてあるのでアレルギーを起こしにくくなっています。加熱していない生の状態ではアレルギーを起こしやすく、よく煮込んだりして充分熱を加えたもの、よく噛みくだいて食べたもの、充分発酵させたものはアレルギーを起こしにくくなります。
大量に長期間にわたって接触すれば、どこかで体は対応しきれずアレルギーを起こし始めます。日をおいて食べる食べ方(回転食)、または季節の旬の物を食べる食べ方(日本の昔からの食べ方)では、アレルギーを起こしにくいのです。
例えば、腸管粘膜では、ジクロフェナックNa(解熱鎮痛剤)、アスピリン(解熱鎮痛剤)などの非ステロイド系の消炎鎮痛剤、合成洗剤・乳化剤や、卵レシチンなどが腸管の粘膜の吸収を促進させる働きがあります。皮膚では合成洗剤(家庭用・農薬に含まれるもの)がそうです。これらの物質は粘膜や皮膚から未消化の状態で異物を吸収してしまいます。大きな分子数のままで吸収されれば異物と認識し、体はアレルギーを起こし攻撃します。
下痢をしている時、熱が出ている時、アレルギーを起こした後、疲れがたまっている時、精神的にまいっている時、寝不足の時、暴飲暴食をした時などはアレルギーが軽くても、ひどい症状を起こすことがあります。「今までは何でもなかったのに…」と思うような物が原因となります。
運動が加わると、運動なしではアレルギー症状が起こらないような軽いアレルギーでも急に悪くなることがあります。例えば、カモガヤなどのイネ科花粉症の季節に屋外で激しい運動中に花粉を吸い込み、鼻水といっしょに飲み込んで蕁麻疹や気管支喘息、アナフィラキシーなどを起こす事があります。小麦のアレルギーがあり、食べるだけでは症状がでないけれど、食べた後に運動をするとアナフィラキシーなどを起こすことがあります(運動誘発性食物依存性アナフィラキシー)。入浴後に全身に赤い発疹が出ることがあります。軽いアレルギーを起こしていて入浴前は目立たなかったものが、入浴で体が温まり目立つようになります。時間が経って体が冷えると発疹は消えてしまいます。
花粉やダニ、食物などのアレルギーを起こした後は粘膜や体内の状態が悪く、そこに他のアレルギーを起こすと急激で激しい症状の起こることがあります。カモガヤ花粉症の時に小麦を食べると起こる運動誘発性アナフィラキシー、夏の間は食べても大丈夫だった卵が、秋口になり、ダニの季節が始まってからでは食べると蕁麻疹になってしまうなどです。それぞれのアレルギーの重なりを避けることが大切です。
リノール酸が多量に含まれる食品を多く食べているとアレルギーを起こした時に症状が激しくなります。リノール酸の含まれる食品(卵・植物性油脂・肉の脂身・バター・チーズなど)は食べ過ぎに注意します。
また魚・魚卵や獣肉の脂・肝臓(レバー)や卵・牛乳などの脂肪には脂溶性の環境汚染物質(環境ホルモン物質)が食物連鎖の結果、濃度高く残留している可能性があります。それらの物質は私たちの体の中の正常な内分泌や神経の働きや免疫力を乱れさせ、アレルギー反応を暴走させるかもしれません。汚れた魚・油脂・卵・牛乳類は食べないようにしましょう。
腸内にカビや病原性細菌などが増え腸粘膜の損傷、毒素の生産があるとアレルギーのあるものが急激に多量に吸収されて体内に侵入し激しい症状を起こします。腸内の状態を健康に保つことがアレルギー予防には大切です。
@の場合を漫画で見てみましょう。アレルギーが起こる原因はまだよく分かっていませんが、こんな風に考えることができます。
典型的な例は次の表のように、スギなどの花粉とディーゼル車排気ガスとの関係などの場合があります。たとえば
自然界の物質 | ヒトが作り出した化学物質 |
---|---|
ダニ | 室内汚染(石油ストーブの排気・煙草の煙・合成洗剤・抗菌剤・殺菌剤・新建材から出るホルムアルデヒド・有機溶剤など) |
スギ花粉・キク科花粉 | 自動車排気ガス特にディーゼル車排気ガス |
イネ科花粉 | 水田に散布された農薬や自動車の排気ガス |
卵 | 卵を産む母鶏に食べさせた化学薬品・飼料中の残留農薬 |
獣肉 | 飼育される時に使われた化学薬品・飼料中の残留農薬 |
魚貝 | 河川・海を汚染する汚染物質 |
バナナ | バナナに付着したポストハーベスト農薬 |
獣肉の脂・肝臓(レバー) 魚・魚卵・貝、牛乳・卵中の脂 |
ダイオキシン類、PCB、有機塩素系殺虫剤(DDTなど)の脂溶性の環境汚染物質(環境ホルモン物質) |
その他の食品 | 残留農薬・ポストハーベスト・抗菌剤・殺虫剤・食品添加物など |
アレルギーを起こしにくい食品 | アレルギーを起こしやすい食品 | 特に注意してほしい食品 | |
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動物性食品 | ●天然の魚介(サヨリ、キス、カレイ、アユ、メバル、カワハギ、アジなど)・汚染の少ない魚 ●新鮮な魚介、 ●旬の魚 ●自然に近い状態で健康に飼育された動物の肉(豚・地鶏)や卵 ●自然の中で育った動物の肉(豚肉、鹿肉、鴨肉、うさぎ肉など) |
●粗悪な飼料を使って養殖した魚介(ハマチ、ウナギ、エビ、アジなど)・油脂が多く化学物質で汚染された魚・魚卵 ●古くなって鮮度の落ちた魚介(サケやタラの切り身カスズケなど) ●解凍魚(サンマなど) ●酸化を防止するため薬品を使った魚(アカウオ、エビ、冷凍魚など) ●アニサキスが寄生した魚やイカなど ●粗悪で不自然な(草食動物に動物性蛋白を混ぜる等)飼料を使って過密飼いした動物の肉や卵・牛乳 ●食品添加物を多量に使った魚介・肉加工品 |
●エビ(輸入エビ) ●サバ(鮮度が落ち易い) ●アカウオなど脂の多い魚 ●ラパス貝 ●イクラ・スジコ・タラコ・カズノコ ●鳥肉(ブロイラ−)、鶏卵・卵製品、牛乳・乳製品・牛肉・ゼラチン ●かまぼこ等ねり製品、ハム・ソ−セ−ジ・イクラ・スジコ・タラコなど |
植物性食品 | ●国産の穀物 ●低・無農薬の穀物 ●農薬の使用の少ない野菜や果物 ●旬の野菜や果物 |
●薬品・農薬処理された輸入穀物、農薬の使用の多い穀物 ●旬からはずれた、農薬の使用の多い野菜や果物、遺伝子組換え作物、ポストハ−ベスト(収穫後の農薬使用)をされた輸入果物 |
●輸入小麦・輸入とうもろこしを使った菓子(スナック菓子など) ●めん類やパン類 ●グレ−プフル−ツ、オレンジ、トマト、レモン、キウイ、バナナなど |
植物性油脂 | ●昔ながらの圧搾しぼりで作った新鮮な油(なたね油など)(※「大豆油」の混入のないもの) ●エゴマ(ジュウネン)の利用(※但し、「えごま油」は酸化しやすいので取り扱い、使い方に注意が必要) |
●化学薬品・石油製品を使って大量に抽出した植物性油脂 ●古くなり酸化した油 ●加工食品に使用された植物性油脂、遺伝子組換え作物から作られた油(なたね、大豆、とうもろこし) 2003/01/14訂正 ※記載ミスを教えて下さいましたM物産のY様には心から御礼申し上げます。 |
●サラダ油(大豆油や、コ−ン油、米油、紅花油など) ●植物性油脂の使われた加工品 ●冷凍加工食品・インスタント食品、マ−ガリン、マヨネ−ズ、スナック菓子など |
加工品 | ●昔ながらの乾物 ●(干ししいたけ、切り干し大根、こんぶなど) ●みそ・しょうゆ(本醸造のみそやしょうゆ) |
●化学調味料、合成保存剤、合成着色剤、発色剤など添加物の多い加工品や調味料 | ●インスタント食品、レトルト食品(特に油を使ったもの)、アイスクリ−ム、チョコレ−ト、ハム・ソーセージなど |
仮性アレルゲン | ●仮性アレルゲンとなるもの(体調が悪い時に食べると、アレルギ−症状を起こしやすくなります) | ●とろろ(やまいも)、そば、トマト、ナス、ホ−レンソウ、タケノコ、キウイフルーツ、バナナ、メロン、パイナップル、チーズ、チョコレートなど |