<02-08 2000年06月05日公開>
ヘルパーTリンパ球:アレルギー反応を起こすように指令するリンパ球 Bリンパ球:IgEを作り出すリンパ球 Th1:遅延型アレルギー(細胞性免疫)を活性化させるヘルパーTリンパ球 Th2:IgEなど即時型(はっきり型)・遅発型アレルギーを活性化させるヘルパーTリンパ球 |
何が原因で“アレルギー”を起こしてしまったのか? 見つけ出すことはお医者さんでもなかなか難しいことが多いのです。薬剤や昆虫による虫刺症で起きた“アレルギー”や“アナフィラキシー”はすぐ分かります。問題は、その他の食物や、化学物質の場合です。誘因・悪化因子としての“環境アレルギー”を見つけ出すことはさらに大変です。腸内の状況にいたってはきちんと検査のできる施設がなければ診断がつけられません。しかし、なんといっても一番大切なことは“アレルギー”を起こした経過を詳しく思い出し、そこから原因を推測することです。
原因を見つけ出すときに一番大切な項目です。よく経過を振り返ることで原因の分かることが殆どです。発症1日前、できれば2〜3日前までさかのぼって詳しく食べたものや、したことを日記につけてみることが大切です。何回か繰り返している症状から『共通するもの』を見つけ出します。即時型(はっきり型:数分から数十分で始まる)、遅発型(数時間で始まる)、遅延型(かくれ型:半日から数日で始まる)を考慮して原因を考えます。原因と同時に誘因も考え、再発防止に努めます。
食べたものは何か(“アレルギー”を起こしやすいもの、農薬・食品添加物等)
触ったものは何か(そばにいた人が食べたものでも症状が起きます)
吸い込んだものはないか(ダニ、花粉、動物の毛、カビ、小麦などの粉状食品など)
何かに刺されたりしなかったか(ハチ、蚊、アブ、ブヨ、クモ、ヘビなど)
どこで起こったのか?
何をしていた時か?
他のアレルギーを起こしていないか?
他の病気を起こしていないか?(特に、お腹の病気)
疲労・寝不足がたまっていなかったか?
合成洗剤を多用していないか?
一緒に飲んだ薬はないか?(特に、解熱鎮痛剤)
“アレルギー”対策の程度(各“アレルギー”の原因対策がうまく行われているかどうか)等
全身の状態を見ます。“アトピー性皮膚炎”の状態(場所、皮疹の状態、感染の有無等)、蕁麻疹の出ている場所が体全体か? 衣服で覆われた場所か? 露出した場所か?目や鼻は腫れていないか? のどが腫れていないか? 肛門の周りが赤くなったりただれたりしていないか? 呼吸が苦しくなっていないか? 等を見ます。
IgE(アイジーイー)検査 |
即時型(はっきり型)の検査です。アレルギーの原因となる物質が体の中に侵入するとその物質だけに反応する特別な『IgE』いう蛋白質ができます。2回目に同じ物質が体内に入ってくるとその『IgE』が“アレルギー原因物質”とくっつき、“アレルギー反応”を引き起こします。『IgERIST(アイジーイーリスト)検査』は『IgE』の総値を、『IgERAST(アイジーイーラスト)検査』は個々物質に対する特異的な『IgE』を測っています。『IgE』の値が高い場合(IgERASTクラス3以上)、“はっきり型のアレルギー(数分から数時間以内に起こりはじめるタイプ)”は起こしやすくなります。ただし、この値が低いからといって“アレルギー”を起こさないとは言えません。陰性でも“アレルギー”は起こります。
特に、乳児から幼児の低年齢では値が低くても症状が起きます。また、40歳以上の年齢でもIgE値が低くてもアナフィラキシーなどの激しいアレルギーを起こす場合があります。先ほども書きましたが、アレルギー反応がIgEを介した経路だけで起こる訳ではないため、陰性でもアレルギーは起こります。
反対に、年齢が高くなると陽性でもアレルギーを起こさない場合もありますが、“陽性”であるということは過去にアレルギーを起こした証拠であり、今は大丈夫でも、食べ続けたり吸いこみ続けたりすれば、またアレルギー反応が起こり始める可能性があります。
IgEの値が低い場合には、同じ量の同じ原因でも、そのときの身体の状態によってはアレルギーを起こしたり、起こさなかったりします。たとえば、夏、ダニの影響を受けにくい時期には少量の卵なら食べても大丈夫だった人が、秋、ダニでアレルギーを起こしやすい時期になると同じ量の卵を食べるとアレルギーを起こしてしまいます。普段は食べても症状が起こらないのに、5月から6月のイネ科の花粉が飛ぶ時期に小麦製品を食べるとアレルギーを起こす場合があります。
原因と同時に、誘因となる他のアレルギー、ダニや花粉、ペット、カビなどのアレルギー状態も調べておくと、アレルギーが重なって、症状の悪化しやすい時期が判断できます。
細胞性免疫*を調べます。反応がはっきり型よりも遅く現れ、長く続くため患者さんを苦しめる遅延型(かくれ型)の検査です。この型の“アレルギー”が強く出る場合は薬を使っても急には改善しないため、入院になることが多くなります。血液中からリンパ球を取り出し、原因と思われる物質からエキスをとりだしてリンパ球にふりかけ、その物質に反応して増殖するリンパ球があるかどうかを見ます。現在の医療制度では保険が利かないため、1項目で数千円かかります。食べたそのものを血液と一緒に出せば検査できます。(検査会社:SRL等)(*:IgEは血液中の液性成分に存在するので“液性免疫”といわれます。それに対して、血液中や組織中のリンパ球などの細胞によって起こる免疫の働きは“細胞性免疫”といわれます。)
スクラッチ・プリック、皮内注射、皮下注射等があり、原因と思われる物質のエキスを皮膚にたらして引っかいたり(スクラッチ)、軽く刺したり(プリック)皮内や皮下に注射して、発赤や腫脹がでないかどうかを検査します。皮膚に原因となる物質のエキスを注入するため、反応しやすい場合はこの検査を施行して“アレルギー”を起こす場合がありますので、充分な監視・救急体制下で行わなければいけません。
血液中細胞の検査 |
血液中好塩基球(“即時型アレルギー”を起こす)、好酸球(“遅発型アレルギー”を起こす)等の“アレルギー症状”を引き起こす化学物質(ケミカルメディエーター)を放出する白血球数を調べ、“アレルギー状態”を見ます。
肝機能検査 |
肝臓の働きが悪いと“アレルギー”を起こしやすくなるため、必ず検査します。
栄養状態の検査 |
血中の蛋白質・脂肪・貧血等の検査をします。特に、脂肪の検査で血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を調べておくと、“アレルギー”の反応の強さを一定推測できることがあります。LDLコレステロールの高い人は症状が強く起こる場合があります。
感染症(溶血連鎖球菌、黄色ブドウ状球菌、マイコプラズマ、単純ヘルペス感染等) |
溶血連鎖球菌や黄色ブドウ状球菌・マイコプラズマ等の感染は細菌の作った毒素のために激しい症状が出ることがあります。単純ヘルペス感染も同様です。その他のウイルス感染症でも蕁麻疹等の“アレルギー”を起こす場合があります。
腸内の細菌の状態(カンジダや病原性腸内細菌の状態) |
便の培養はできる限り行ないます。病原性腸内細菌やカンジダの仲間の異常な増殖は、作りだされる毒素のために腸内の消化吸収が正常に保てなくなり、急激な“アレルギー症状”を引き起こしやすくさせます。
咽頭の培養 |
咽頭の培養や溶血連鎖球菌の定性反応で毒素を作る細菌の感染状態を調べます。必要あれば皮膚の感染症の状態(細菌、カビ、単純ヘルペス感染等)を調べます。
血清コリンエステラーゼ(偽性コリンエステラーゼ)・赤血球コリンエステラーゼ(真性コリンエステラーゼ) |
有機リン系殺虫剤はアレルギー反応をはげしくさせる可能性があります。有機リン系の殺虫剤を吸いこむ、接触する、汚染された食品を食べるなどで体内に取りこんだ場合、多量に取りこんでしまうと急性の中毒を起こし血清コリンエステラーゼ値は低下します。しかし、微量の有機リン系殺虫剤を長期にわたって摂取した場合は、血清コリンエステラーゼはかえって高値になります。その場合は、赤血球のコリンエステラーゼ(真性コリンエステラーゼ)を調べると、微量を長期に曝露された場合には値が低くなるため、慢性有機リン中毒の疑いが濃厚になります。保険適応外ですが数千円で検査できます。正常値はアメリカで1.8−2.2単位ですが、日本人では、SRL(株)が1.2−2.0単位としています。日本の正常値は1988年に測定され、有機リン系殺虫剤を使用した防虫畳や白蟻駆除剤を床下に使用した人たちのデータが元になっていますので、実際の正常値はもっと高いと思われます。実際の症例では1.6単位以下になると症状が現れます。
肺機能検査 |
肺の働きを調べ喘息の状態を評価します。
心電図・胸部レントゲン |
不整脈・他の心臓の疾患を調べます。
その他の様々な“アレルギー”の検査 |
その他、ヒスタミン遊離試験など専門的な“アレルギー検査”は多種にわたります。その施設やお医者さんによって様々です。
これらを総合して原因を見つけ出すことになります。検査は病院で受けなければなりませんので、かかりつけのお医者さんか専門の病院で相談して調べてもらう必要があります。原因を見つけ出すためには経験と環境・食品・化学物質について一定の知識が必要です。“アレルギー”の原因が分かればそれなりの対策方法が見えてきます。