<02-04 2000年05月07日公開>
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“アレルギー”の原因となる食物(食物抗原、“アレルゲン”といいます)を食べると“食物アレルギー”を起こします。“アレルギー反応”が暴走してしまうと“劇症型のアナフィラキシー”となってしまいます。
では、体の中ではどんな反応が起こっているのでしょうか? 様々な化学物質の名前が出てきますが、むずかしい名前は覚える必要はありません。食べた食品が腸の中でどのように吸収され、体の中でどんな細胞と出会い、その細胞がヒスタミン等の化学伝達物質(ケミカルメディエーター)を放出し、その結果様々な“アレルギー症状”が起こること、食べたものと症状の関係がある程度わかっていただければ十分です。
牛乳や卵など、体に合いにくい食物を食べ続けていると、体は耐え切れなくなります。そして、ある時点からその食物を認識し記憶します(感作といいます)。感作が起きた後、“アレルギー”の原因となる食物が再び体内に入ってくると、体外に排泄するために“アレルギー反応”が始まります。
“アレルギー原因食物”が食べられました。本当なら食物は細かく噛み砕かれ、消化されて、小さなかたまりになって進んでいきます。小さなかたまりまで消化されてから吸収されると、“アレルギー”を起こすことはありません。食べたものは栄養の素になり体で各所で使われます。
腸管粘膜には“アレルギー”の原因となる抗原の侵入を防ぐため、リゾチーム、ラクトフェリン、分泌型免疫グロブリンIgA等が働いています。しかし、腸管粘膜に損傷や異常があると、消化しない大きなかたまりのままの状態で吸収されてしまいます。授乳中の乳児の場合は、母乳中の成分はそのままで吸収するという特殊性があるため、異種の蛋白質も消化されずに吸収されてしまいます。
腸管組織中に侵入した未消化の食物抗原は、以前に出会ったことがあり、その食物を記憶した肥満細胞と出会い、免疫グロブリンであるIgEを介して結合します。すると、肥満細胞の細胞質内にある小さな袋から、蓄えられていたさまざまな化学伝達物質を細胞外に放出します(脱顆粒)。
放出されたヒスタミンやロイコトルエン(LTC4)等の化学伝達物質は、 粘液の分泌亢進、血管透過性亢進や血管拡張を起こし下痢、腹痛、吐き気、嘔吐等が始まります。
放出された化学伝達物質は、血液中に移行し、全身に広がり様々な症状が始まります。
軽い“食物アレルギー”、“腸管アレルギー”はここまでで終息していきます。
“アレルギー反応”が強い場合、腸の状態が悪く消化吸収がうまく行われない場合、体調が悪く“アレルギー反応”を押さえきれない場合には、“全身型のアレルギー”である“アナフィラキシー”を起こすことになります。
食物は未消化のまま吸収され血管内に侵入してしまいます。
血管内には肥満細胞と同様に化学伝達物質を蓄えた好塩基細胞がいます。食物抗原はIgEを介して好塩基細胞と結びつきます。
好塩基細胞から脱顆粒が起こり、血管内に化学伝達物質が放出されます。
化学伝達物質は急激に血管の拡張を起こすため、血圧が下がりショック状態になります。この時、顔色は悪くなり、吐き気や嘔吐が始まります。ひどい場合には、立っていることができず倒れてしまいます。赤ちゃんでは寝てしまいます。死亡例ではここまでの反応が激しく、数分という短時間に起こります。
その後、血管の透過性が高まり、血管内の成分が組織中にもれ出て、むくみ(浮腫)が始まります。同時に血管の拡張がさらに進み、体全体が赤みを帯びていきます(紅潮、紅斑)。同時に、じんましんが始まります。血管内にあった食物抗原は組織中に漏れ出ていき次の反応が始まります。
漏れ出た食物抗原は、組織中の肥満細胞と出会い、IgEを介して結合し、脱顆粒が起こります。
放出された化学伝達物質によって、粘液の分泌亢進が始まり、鼻水、痰、水様下痢を起こします。神経が刺激されかゆみや灼熱感、異常な感覚が起きます。気管支が収縮し“気管支喘息”や胸痛が始まります。腸管の蠕動運動が亢進して、下痢や腹痛が始まります。
肥満細胞から放出された化学伝達物質は血管拡張、血管透過性をさらに激しくさせ、気道粘膜、肺組織の浮腫、喉頭浮腫を生じ呼吸困難を起こします。脳がはれると、頭痛、意識障害、けいれん等の神経症状が現れます。心臓に影響がでると不整脈を起こすこともあります。
肥満細胞は血管内から好酸球を呼び寄せます。好酸球は細胞を障害する力が強い顆粒蛋白や活性酸素を放出し、強い組織の障害を起こし、“アレルギー症状”はさらに激しく、長く続くことになります。
ここまでの間に、原因となる食物を食べてから数時間が経っています。組織の障害が強い場合は、血圧が再び維持できなくなり、ショック状態になることもあります。
消化管と食物の関係と同様に、ダニやカビ、花粉、動物の毛、食物のカスと気道粘膜や鼻粘膜、皮膚との関係も同じような反応をしています。
“アレルギー”の反応の経過がわかると、予防するために何をすれば良いのかが見えてきます。
“アレルギー”治療に大切なことを考えてみましょう。原因となる食品を食べないことが、まず大切です。乳児の場合は、消化管粘膜を保護してくれる母乳が大切です。そして、母乳以外のもの、特に“アレルギー”を起こしやすい食品を乳児期には食べさせないことが大切です。よく噛むこと、よく煮込むこと、発酵の力を利用することなどのよって消化を十分におこなうこと、甘いものに注意して腸の状態を常に良い状態に保つこと、“アレルギー反応”を起こさせるロイコトルエン等の原料となる油脂の摂取を避け、“アレルギー反応”を抑制できなくさせている様々な環境汚染化学物質に対する対策をおこなうことが大切です。