<02-03 2000年04月30日公開>
“アレルギー”の病気が発症するためには、“体質”と“環境”の2つが必要です。“アレルギー体質”はお母さんのおなかの中で受精した瞬間に遺伝子上で決定されています。その上に、妊娠初期に母体の体脂肪に蓄積された脂溶性の環境汚染化学物質、そのときの母体の食べ方、周囲の環境状態などから影響を受け“アレルギー”を起こしやすい体質を作り上げてしまう可能性があります。“アレルギー体質”を持った子供たちは“アレルギー”を起こしやすい環境で育てられると、いろいろな“アレルギー”の病気を起こしながら成長していきます。これを“アレルギーの行進(アレルギーマーチ)”と言います。
“食物アレルギー”
この世に生まれる前、お母さんのおなかの中ですでに“アレルギー”は始まっています。妊娠中期以降、お母さんの食べたものの一部は高分子のまま(“アレルギー”を起こしやすい形)腸の粘膜を通過し、胎盤を介して胎児に“アレルギー”を起こさせます。生後、母乳を飲み始めると、母乳中に分泌された高分子の物質(卵や牛乳、大豆、小麦、ピーナッツ等)を腸粘膜から吸収したり、皮膚に触ることで、湿疹、“アトピー性皮膚炎”、下痢、嘔吐、鼻づまり、ゼロゼロ等の“アレルギー症状”を起こすようになります(本来は、これらの反応は赤ちゃんが自分の体に合わないものを体外に排泄するための自己防衛反応です)。不幸にして、母乳が出なくなってしまうと、人工ミルクを飲むことになりますが、人工ミルクは牛乳や大豆油を使っているため、牛乳や大豆で“アレルギー”を起こすようになります。離乳食が始まると、卵・牛乳・小麦・ピーナッツなどを直接口から食べるようになりますが、すでに“アレルギー”を起こし抵抗力が落ちた体は、他の食物に対してもアレルギー”を起こしやすく、次々に雪だるま式に“アレルギー”を起こしていきます。
ダニ・ペット・そばがら・カビの“アレルギー”
“食物アレルギー”は腸粘膜がしっかりしてくる4〜5歳ぐらいになると軽くなっていきます。“アトピー性皮膚炎”も食事療法や環境の整備がされれば3歳ぐらいで改善していきます。そして、1歳ぐらいから吸い込むものに対する“アレルギー”が明らかになっていきます。ダニ・猫や犬などのペット・そばがら・カビなどがその代表です。咳・ゼーゼー・“気管支喘息”・くしゃみ・鼻水・鼻づまり・“アレルギー”性鼻炎・目のかゆみ・目の充血・“アレルギー”性結膜炎・“アトピー性皮膚炎”などをくりかえすようになります。
花粉の“アレルギー”
ダニの“アレルギー”と同時に、幼児期から起こりはじめた花粉(カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ、スギなど)の“アレルギー”は徐々に症状が出始め、季節の変わり目に“アレルギー性鼻炎”や“アレルギー性結膜炎”、頭痛、腹痛、吐き気、下痢、咳、“気管支喘息、“アトピー性皮膚炎”などを起こし始めます。最近では、1歳前の乳児でも花粉に“アレルギー反応”が陽性になる例が出てきています。さらには薬品や、食品添加物、金属等の“アレルギー”も起こしていきます。
なかなか治りにくい“気管支喘息”や、“重症のアトピー性皮膚炎”の子供たちを診療していると、ひどくなる前になんとかできなかったかなと考え込んでしまいます。“アレルギー”の病気がひどい状態になることを予防するためには、なるべく早く“アレルギー体質”であることを見つけ、病気の状態が目にみえてよくわかる“アトピー性皮膚炎”を起こしている間に、食べ方や生活環境改善の知識を身につけ“アレルギー”の進行を食い止めることが大切です。現在“アトピー性皮膚炎”を起こしている子供たちは、食生活に注意し、ダニやカビの少ない、空気や水が化学物質で汚染されていないきれいな環境を作り出し、子供らしい生活リズムや活気ある生活を実現できるように、考え実行しましょう。