読売新聞−2000年(平成12年)10月17日(火)
厚生省 中古・新築それぞれに暫定目標値を設定
建材などから発生する化学物質により、頭痛や目まいなどを起こすシックハウス症候群。その防止のため厚生省はさきころ、室内の化学物質の総量規制を打ち出した。今後は対象物質などをリストアップすることになっており、室内の環境を守るために建材や住宅メーカーの化学物質低減の取り組みが前進することが期待される。
総量規制は、建材の接着剤の原料に使われるホルムアルデヒドなど、室内で発生する多くの揮発性有機化合物(VOC)の濃度を、トータルで規制すること。あらゆる化学物質を測定するのは不可能として、主なもの数10種類を選んでその濃度を合計、規制対象とするやり方だ。また、選定されなかったVOCも選定VOCと同じ濃度で存在すると想定し、実測値の2倍の数字を使う。
厚生省が打ち出したのは、1立方b当たり、中古住宅は400μg(μは100万分の1)、新築は1000μgという「暫定目標値」だ。
この数値は97、98年に全国の住宅約300戸を対象に、40種の化学物質による室内汚染を調査。約半分の家がクリアできるレベルを目標値とした。厚生省は今後、総量規制や暫定目標値について一般から意見を募ったうえで、調査対象物質や測定方法などを詰めたい考えだ。
同省は97年から、シックハウス症候群の原因とされるホルムアルデヒドなど4種類の化学物質に個別の「指針値」を定め、住宅業界などに改善を求めてきた。現在も別の4物質の指針値を策定中だ。
だが、100種類以上にのぼると考えられる化学物質にそれぞれ指針値を定めるのは時間がかかる。また、規制物質の代わりに未規制の物質が使われる恐れもあることから、総量規制という方法をとったもの。総量規制は海外にもほとんど例がない。
「指針値」より緩やかな「目標値」にしたのは、現段階では個々の化学物質の危険度や混合時の毒性評価などが確定しておらず、科学的な裏付けが弱いためだ。
だが、同省生活化学安全対策室は「ホルムアルデヒドの指針値ができて以降、メーカーの低ホルムアルデヒド化が進んだ。目標値を示せば、化学物質総量を減らす刺激になるはず」と期待している。
また、武蔵野女子大学の村松学非常勤講師(住環境)は「化学物質を使った建材などを多く使う日本は、欧米に比べ室内の汚染度が高い。新築の1000μgという目標値は、現状ではかなり厳しい水準で、実現すれば喜ばしい」と話している。
ホルムアルデヒドを吸着、分解するというインテリア用品が続々発売されている。兵庫県立生活科学研究所(神戸市)がこのほどレースと織物のカーテン各1銘柄、押し入れなどに敷いたりするシート3銘柄を抽出調査したところ、すべてに効果が確認された。
カーテンは、ホルムアルデヒドを吸着し化学分解する特殊高分子が付着させてある。シート2銘柄は、ホルムアルデヒドを化学分解する薬剤を表面にコーティングしてあり、1銘柄は備長炭の粉末を利用していた。初期濃度0.144ppmでホルムアルデヒドを放散させたキャビネット内にこれらの商品を入れた場合と、入れない場合の濃度を30分ことに測り、比較した。結果はグラフの通り。いずれも商品使用の効果が現れた。
ただ、カーテンを何時間閉めておくかなど、使い方次第でもテスト品の効果が違ってくる。また、商品によって有効期間も違っていた。
商品だけでは、シックハウス問題の根本的な解決とは言えそうもなく、同研究所は「商品に頼りきるのでなく、換気を心掛けてほしい」と呼び掛けている。
★いっぽのコメント★ 最近の住宅のコマーシャルを見ても「VOC対策済み」だとか「ノン・ホルムアルデヒド」等と謳ったものが増えてきている。それだけ消費者の関心が高くなっている証拠だろう。 しかし、「バリア・フリー」対策住宅の時もそうだったが、只単に「セールスポイント」としてのみに利用され、内容が伴わないものも少なくないようだ。 最近、当店のお客様の中でも自宅を改築した方がいらっしゃった。その際、「VOC対策で」と業者に依頼したそうだが、出来上がって入居したとたんに息子さんの体調が少し悪くなってしまったそうだ。 高価になっても、出来るだけ気を付けて作ってもらったはずなのに結果が悪かったことにショックを受けていたが、考えようによっては「気をつけたから少しで済んだ」のかもしれない。 他人には何ともなくても新築のビルや建物に入って具合が悪くなる人は増える一方だ。化学物質が増える一方なのだから当然と言えば当然だ。 3年程前だったか、仙台市泉区に新築された宮城県図書館に入って具合が悪くなったと言う人が結構いた。公共の建物こそ、真っ先に対策を練って欲しいものだ。 |