<05-14 2001年10月25日(木)公開>
アレルギーっ子は、予防接種で腫れたりじんましんやアナフィラキシーなどのアレルギー的な副作用を起こしやすい傾向があります。予防接種は本物の感染症にかかる大変さと、予防接種で起こるかもしれない副作用をてんびんにかけて、やった方が良いか、止めておくかを決めなくてはいけません。
注射をした場所の腫れ、じんましん、アナフィラキシー、喘息発作、アトピー性皮膚炎の悪化などです。注射後15分くらいから始まるはっきり型(即時型)の反応と、6時間後ぐらいから始まるかくれ型(遅延型)の反応があります。
多くのワクチンには安定剤としてゼラチンが含まれていたため、ゼラチンにアレルギーがあることを知らずに予防接種を施行し、じんましんなどの副作用を起こす子供たちが増えました。しかし、最近ではゼラチンを含まない、またはアレルギーを起こしにくいゼラチンを使ったワクチンが製造され、ゼラチンアレルギーがある場合にも安全に接種できるようになりました。
細胞成分(ニワトリ胚−麻疹、ミドリザル腎−ポリオ、ウズラ胚またはウサギ腎−風疹、ニワトリ胚−おたふく、ヒト2倍体細胞−水痘、マウス脳−日本脳炎、鶏卵漿尿膜−インフルエンザ)、抗生剤、防腐剤などが含まれているため、これらの物質に反応して副作用の出る場合があります(文献1)。
ゼラチンや牛乳・牛肉のアレルギーまたは卵などアレルギーのあることがわかっている場合、アナフィラキシーなどひどい症状を起こしたことがある場合は、予防接種を行う前に皮膚テストをして接種ができるかどうか確認します。皮膚テストで反応が弱い場合はその時の状況に応じて接種を行います。予防接種をしようと考えている病院・医院にあらかじめ電話をして、アレルギーっ子に対応して頂けるかどうかを聞いてから、受診するようにしましょう。
小学生以上の子供の場合、水痘やおたふくかぜ、風疹は知らないうちに軽く罹っていることがあるため、アレルギーがひどく予防摂取による副作用が心配な場合は、血液検査で調べると良いでしょう。掛かりつけの先生に相談してみて下さい。抗体価が上昇していれば予防接種を受ける必要はなくなります。
当院では、アレルギー的に良い状態にある時に、皮膚試験後に予防接種を行なうようにしています。予防接種に含まれる様々な成分によるアレルギー反応も他のアレルギーとの重なりがあれば副作用を起こしやすくなる可能性が高くなります。今までのところ、当院で予防接種を行って重篤なアレルギー症状を起こした方はいません。市の日本脳炎集団予防接種後に遅延型のアナフィラキシーを起こした2例とじんましん数例を経験しただけです。
1歳前の赤ちゃんが百日咳になると無呼吸を起こして突然死することがまれにあります。また、百日咳になった後から気管支喘息を起こすこともあるので、なるべく早めにすることをお奨めします。生後3ヵ月から接種できます。
早めに受けた方が良いのですが、皮膚にアトピー性皮膚炎があり引っかき傷がある場合、BCGの菌が傷口に入ってしまうとその場所はしばらくの間治らなくなってしまいます。アトピー性皮膚炎が落着き、傷が少ない時に受けるようにしましょう。BCGを接種した後はよく乾燥させ、自宅に帰ったら、夜は早めにお風呂に入り着替えをしてBCGの菌を落としましょう。ただし接種部位は不潔にならないように注意。ごしごし擦ったりせず、さっと洗い流して清潔なタオルで体を拭きましょう。
飲む生ワクチンのため、事前にテストはできませんが、注射と違って飲んで接種するために副作用は軽くすみます。体調を整え、調子が良い時に受けるようにしましょう。
すべて生ワクチンです。副作用の起こりやすい傾向があります。アレルギーがひどい場合は事前の皮膚テストが必要です。
・麻疹 | 罹ればかなりひどくなる感染症です。アレルギーっ子には本物の麻疹を経験させたくありません。予防接種ができる1歳になったらすぐ受けておくことをお奨めします。 |
・風疹 | 問題になるのは妊婦さんが妊娠初期に風疹になった場合にお腹の中の赤ちゃんが先天性風疹症候群という病気になってしまうことです。女の子は二次性徴前に予防接種をしておきましょう。小さい時に無理して受けることはありません。 |
・水痘 | 年令が高くなってから水痘にかかると、年少の時に罹るよりひどい状態になることが多く、水泡の後が残るため、子供時代に本物をやってしまうか、予防接種をすることをお奨めします。しかし、予防接種をしても水痘になってしまう人がまれにいます。 |
・おたふくかぜ | 男子が二次性徴以後にかかると睾丸炎を起こすことがあります。そのため、男の子は接種をしておいた方が良いでしょう。しかし、接種後の無菌性髄膜炎の発症など現在のワクチンは問題があります。接種するかどうかは掛かりつけの先生とよく相談して下さい。 |
不活化ワクチンです。その地域の日本脳炎の発症の状況などによって必要性が変わります。掛かりつけの先生と相談して下さい。
不活化ワクチンです。インフルエンザにかかった場合に重症化するような疾患(持病)がある場合は、主治医の管理下で行なうと良いでしょう。現在使われている不活化ワクチンでは発病を予防はできませんが、症状を軽くさせることができます。
生ワクチンを接種した後は、そのワクチンによって軽く病気を起こすため、潜伏期(病原体をもらってから病気が起こり始めるまでの期間)に発病期間を加えた日数の間は、無理をせずに体が疲れないようにさせておく必要があります。各疾患の潜伏期は以下のごとくです。この日数+4〜5日の間は無理をしないようにしましょう。
病気の潜伏期 | |
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麻疹 | 9〜11日 |
風疹 | 16〜18日 |
おたふくかぜ | 14〜21日 |
水痘 | 7〜20日 |
ポリオ | 7〜20日 |
参考文献:
(1)木村三生夫、平山宗宏、堺春美:予防接種の手引き第八版、近代出版、2000