アレルギーっ子の生活

<04-15       2001年05月19日公開>

【活性酸素の話】

活性酸素と過酸化脂質 活性酸素に脂質(不飽和脂肪酸)が加わると過酸化脂質ができる
体内での活性酸素の役目
胃液処理・加熱・発酵前後の植物内抗酸化物質
活性酸素を取り除く物質

 人間は体の中に侵入したウイルスや細菌などを殺菌・分解する時に“活性酸素”を利用しています。体の防御のために使われた残りの余った活性酸素は抗酸化酵素によって処理されます。この処理がうまくいけば、過剰の活性酸素により、体の細胞が傷つけられることはありません。ところが処理能力を越えた過剰の活性酸素は、体の細胞をきずつけ、細胞の働きを障害し、最悪の場合は癌化へ導きます。過剰の活性酸素によりアレルギー疾患の病状は悪化します。活性酸素は神経の働きを混乱させ、ヒトが精神的に豊かな生活を築くことを妨害しています。活性酸素は細胞の正常な働きを妨げ、成人病(生活習慣病)などさまざまな現代病の原因となっています。さらに、活性酸素はリノール酸などの不飽和脂肪酸と反応して強力な過酸化脂質を作り出し、体を傷つけます。

 はるか太古の昔、地球の大気は二酸化炭素であふれていました。その二酸化炭素と水と太陽光線を使って酸素と有機物を作りだす植物が現れ、大気には酸素が増えてきました。酸素はオゾン層を形成し地上にふりそそぐ紫外線を減らし、地上に生物が生存できる環境を作りだしました。ところが、酸素は生物にとっては非常に危険な気体でした。酸素を利用するためには、同時に酸素の毒性を抑える能力が必要でした。現在この地球上にいる酸素を呼吸する生物たちは酸素の毒性を抑える力を獲得した生物の子孫たちです。

 酸素の毒性(活性酸素)はヒトの体内にある酵素(SOD=活性酸素還元酵素、ペルオキシダ−ゼ、カタラーゼなど)で処理されます。この能力には個人差がありますが、植物体内にある低分子の抗酸化物質(ビタミンC、?カロチン、カテキン、フラボノイドなど)を食べることによって補充されます。動物は植物が作りだした有機物と酸素を使ってエネルギーを得、使用した酸素の毒性を植物中に含まれる低分子の抗酸化物質を利用し処理して生存しているわけです。

 植物中の低分子の抗酸化物質はお互いに手を結び合い、生の状態では利用できません。動物たちは食べて消化することでこのつながりを断ち切ります。ヒトは火を使用してから本来の消化能力が落ちてしまったため、火や発酵の力を借りてこの結合を断ち切らなければなりません。とくに、野菜を煮ると煮汁に活性酸素を抑える力が大幅に増えているため、野菜を煮た汁物(具だくさんの味噌汁やすまし汁、野菜スープなど)を食べることが、アレルギー治療の第1条件となります。汁に入れる野菜は、袋から出してすぐに使える物(豆腐や“おふ”なめこ、ワカメなど)だけでなく、土がついた野菜を洗って切って鍋に入れましょう!大地にはえた植物をしっかりと食べましょう!!味噌や醤油は、大豆や米、麦などを煮て麹(コウジ)で発酵させるため、低分子の抗酸化物質を多量に含んでいます。日本人が作り出した健康を維持させるためのすばらしい食品です。十分に利用しましょう。

 毎日の食事に野菜を何種類も入れたスープ・味噌汁・すまし汁などを取り入れ、一日回は食べましょう。特に汁はきちんと飲みましょう。もちろん、野菜の煮た物も食物繊維がたっぷりですからいろいろな汚染物質を体の外に排泄したり、おなかの状態を正常に保つために大切です。

 ビタミンCは少量の生野菜や多量の果物だけから摂ろうとせず、熱を加えた分少なくはなっていますが、煮た野菜や野菜スープを食べることで食物繊維と一緒に充分摂るようにしましょう!

 病気などで具合が悪い時、忙しくて疲れがたまっている時には、お粥・ご飯や野菜スープ(味噌汁やすまし汁)、お茶をとりましょう。土鍋でつくると土鍋からでる遠赤外線の影響で抗酸化物質同士の結合が切れ、さらに利用されやすくなります。

活性酸素が発生する時

 活性酸素は次のような時に体の中で増えます。
@スポーツなどで大量に酸素を消費した時
A煙草の煙、自動車の排気ガス(特にディーゼル車の排気に含まれる炭素の微粒子が問題)や工場の排煙、オゾンなど大気汚染物質を吸った時
B環境汚染化学物質・化学薬品を摂取または接触した時―ダイオキシン類やPCB(ポリ塩化ビフェニル)、トリクロロエチレン、農薬(パラコートや、DDT、BHC、ディルドリンなどの有機塩素系農薬、その他)、食品添加物など
Cアルコールを大量に飲んだ時
D太陽の紫外線を浴びた時―熱帯魚は何故きれいな色なのか知っていますか? 赤道の強い紫外線による活性酸素の障害を減らすために、きれいな色を身にまとっているといわれています活性酸素が増えるとき
E体内に病原体が侵入し、それを殺菌する時―これは正常な生体反応
F血液の流れが一時的に途絶え(虚血)、再びもとどおりに流れる(再環流)時―医療の現場では、脳血栓、狭心症や心筋梗塞、心停止後などがこの時にあたります
Gレントゲンなど、放射線をあびた時
H薬品―解熱鎮痛抗炎症剤(アセトアミノフェン、アスピリン、アミノピリン、インドメタシンなど非ステロイド系抗炎症薬)、抗癌剤などIさまざまな原因で精神的ストレスが発生した時
J重金属(カドミウム、水銀、鉛など)

 以上の条件が重ならないように注意しましょう。重なりが多い時はその分だけ十分に活性酸素を押さえる食べ物を食べ、ビタミンをとらなくてはいけません。

老化と活性酸素

 動物はそれぞれの種によって活性酸素を処理できる能力が決まっているといわれています。その能力に応じて寿命が決定されます。処理する能力が高い動物は長寿で、低い動物は寿命が短くなります。おおよそ15億回心臓が拍動すると寿命が終わるともいわれています。1回心臓が収縮するたびに酸素化された血液を体に送り出し、エネルギーをつくりだすと同時に、作られた活性酸素を処理しなければいけないからです。したがって、脈拍の早いネズミは短命で、脈拍の遅いゾウは長生きです。ヒトの場合、15億回の時期は41〜42才と言われます。ところが、人は食べ物や生活環境を変えることによって活性酸素を処理できるため寿命を伸ばすことができるようになりました。でも、もし活性酸素を処理できずにいれば、やはり長くは生存できません。現代の環境は活性酸素を増やす物質が身の回りにあふれています。このままでは、今の子供たちが、元気なまま老人になれるとは考えられません。食べ物や環境、生活方法を変えることで活性酸素の害から身を守らなくてはいけません。また、せっかちで神経質な性格の人は、すぐに脈が速くなり、活性酸素を多量に処理しなければいけないかもしれません。おっとりしてのんびりして楽天的な人は脈拍数があまり高くならず、多くの活性酸素を処理する必要がなく、長生きするかも知れませんね。
 アナフィラキシーなどアレルギーを起こしやすい条件は、ほぼ活性酸素を増やす条件と一致します。また、40歳を越えた頃からアナフィラキシーやアレルギーの病気が起こりやすくなります。この頃から活性酸素を押さえる力が減るためにアレルギーを起こしやすくなるように思えます。活性酸素をうまく処理できる生活・食べ方はアレルギー・アナフィラキシーを予防することになります。

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