<04-04 2001年03月04日公開>
“離乳”とは、お母さんが食べたものを素材に、お母さんの体を使って作り上げた赤ちゃん用の食事「母乳」を飲むことから、自分の歯で大人と同じ食べ物を食べることに変わっていくことをいいます。母乳をやめて、牛乳を飲むように変わることではありません。母乳からヒトが食べるべき食物、ご飯や野菜等を食べるように変わっていくことです。
1)日本人の体質に合った食習慣の確立をめざします。体格や体重だけを目安にしないようにしましょう。運動の発達や精神発達が大切です。病気になりにくい健康な体や心をつくるための食習慣を目指しましょう。
2)日本人の体質に合いやすい(適応しやすい)食品から離乳を開始しましょう。そして、徐々に食品を増やしていきます。体の中で処理しにくい(適応しにくい)食品は、1歳以降、腸の働きがしっかりしてきて、異物を処理する能力が高くなった時点から徐々に開始します。
月数 | 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 |
水 →塩・野菜のだし→昆布だし →カツオだし→肉のだし 野菜→海草→ 白身魚→ 豚肉→青身魚・赤身魚 醤油・味噌→豆腐→豆・納豆 米→ →小麦・小麦の麺・雑穀 →パン |
3)食べて症状がでる、つまりアレルギーを起こしてしまっている食品は一時やめておきましょう。
4)離乳をすすめると同時に、お母さんお父さんが基本的な調理手段・食事に対する考え方を勉強するようにしましょう
*だしの取り方:化学調味料は使わず、野菜やこんぶやカツオブシからとります。
*料理素材の名前:使い方をおぼえ、素材の幅を広げます。
特に、野菜の名前と料理の方法、魚のおろしかた・調理法を覚えましょう。
*煮物の作り方・蒸し方・焼き方を覚えましょう。
油を使った、炒める・揚げる調理法の多用は避けるようにしましょう。
*食事の与え方、おやつの与え方を覚えましょう。
ダラダラ食い、甘い物づけにさせない方法を覚えましょう。)
●魚は無理して毎日あげる必要はありません。母乳またはアレルギー用ミルクを飲んでいれば極端な栄養不足になることもありません。お米と野菜をきちんとあげることが大切です。お魚は新鮮で生きのいいものが手に入ったときにあげましょう。ただし、ダイオキシンやPCB(ポリ塩化ビフェニール)、DDT(有機塩素系殺虫剤)などの脂溶性の汚染物質・環境ホルモンによって魚の汚染が進んでいますし、魚のアレルギーが増えてきているので食べて症状が出た場合は一時やめておきます。一種類の魚のアレルギーが見つかった場合、他の魚もアレルギーを起こしていることが多いのですべての魚貝類に注意が必要です。魚に蓄積される汚染物質は食物連鎖の中で生体濃縮されます。したがって、食物連鎖の始まりにいる小さな生き物は比較的汚染が軽くなります。小魚を餌にする大きな魚より、プランクトンなどの微生物を餌にする小魚の方を食べるようにしましょう。小さなシラスはアレルギー反応が出にくい理由はそんなことかもしれません。貝類は海の汚染を直接受けます。汚い海で育った貝は離乳食にはむきません。
●ハチミツはそのほとんどにボツリヌス菌という土に住む細菌がいるといわれています。この細菌は1歳前の乳児が口にするとボツリヌス中毒という死亡率の高い食中毒を起こす場合があります。1歳前の乳児の離乳食にはハチミツは使わないようにします。
●離乳食は農薬や化学物質の残留がない新鮮な素材を使って作り、作りたての食べ物をあげましょう。ベビーフードやレトルトなど加工された食品は極力さけます。お母さんの手作りの出来立てで、おいしい食べ物を食べさせて、お母さんの味と愛情を赤ちゃんの心の中にしっかりと刻み込みましょう。缶詰やレトルト食品の包装内面には合成樹脂膜が使われており、体の正常な働きをおかしくさせる化学物質が溶け出ています。
●牛乳は腸管出血を起こすことがあり(アレルギーっ子では特に多い。牛乳アレルギーの赤ちゃんでは、目で見てもわからず検査でわかる程度の血便が持続し、貧血を起こすことがたびたびあります)、離乳食には使わないようにと厚生省の離乳食の基本が変更されています。
●バランスのとれた和食を心掛けます。 穀物(お米を中心に)・豆類・野菜・海草をきちんと、
魚貝・獣肉・油脂は注意して、バランス良く食べましょう。
●環境汚染物質は油脂部分に蓄積濃縮されます。脂の多い魚や魚卵、肉の脂・家畜の肝臓(レバー)、牛乳・チーズ・バターや卵、植物性油脂などには汚染物質の残留が多くなります。これらはなるべく食べないようにしましょう。これらの物質は食べると人の体に蓄積され、妊娠初期の胎児に影響を与え、その子の生後の行動やアレルギーその他の病気の出現を左右してしまいます。妊娠とわかった時にはすでに胎児の各臓器は汚染物質の影響を受けています。妊娠可能な女性は妊娠前から食べ物や環境に注意しましょう。もちろん、授乳中や離乳食で食べることも避けます。
●農薬の残留が高い輸入小麦はなるべく食べないようにしましょう。
●輸入果物など農薬の残留の多い食品は食べないようにしましょう。
●ハム・ソーセージ、インスタント食品、冷凍食品等食品添加物が多量に使われた食品は食べないようにしましょう
●甘いものは摂りすぎないようにしましょう。
●ご飯と新鮮な野菜のたっぷり入った味噌汁や吸い物、漬物を毎日たべましょう。
●周囲の環境にも注意して、農薬や環境汚染化学物質を浴びないようにしましょう。
●卵製品(鳥肉、イクラ・スジコ・タラコなどの魚卵も含めて)はやめるようにしましょう。
●植物性油脂の多量に含まれる加工食品(インスタント食品、スナック菓子、チョコレート、ピーナッツ、アイスクリーム、ガムなど)はやめるようにしましょう。
●乳製品はやめるようにしましょう。
●油は質の良いアレルギー用の油(なたね、からしな、ぶどう、オリーブなど)を少量使うようにしましょう。
●極力母乳で育てる努力をしましょう。母乳には、母親の感染症に対する抵抗力の蛋白質(免疫グロブリン)が含まれています。この物質は母乳と一緒に飲み込まれると、赤ちゃんのおなかの中では消化されずにそのままで吸収され、体中に広がり赤ちゃんの病原菌に対する抵抗力として使われます。また、母乳中には病原菌を殺菌する働きをもつラクトフェリンという物質も含まれています。なんといっても、母乳を吸うことでお母さんはお母さんに、赤ちゃんはあなたの赤ちゃんになっていきます。
●もし、母乳が出なくなってしまったり、都合でミルクを足さなければいけなくなったりした時はアレルギー用のミルクを使うようにしましょう。
普通ミルク | 牛乳+大豆油+やし油 |
アレルギー用ミルク 森永ニューMA1(エムエーワン) 明治のびやか 雪印ペプディエット |
牛乳の消化物+紅花油やなたね油など カゼイン消化物+パーム油・パーム核油・ヒマワリ油・サフラワー油・エゴマ油 乳清蛋白消化物+なたね油+ヤシ油+シソ油 カゼイン消化物+紅花油+ヤシ油+エゴマ油 (雪印ペプディエットには大豆レシチンが少量入っており大豆アレルギーが強い時は使用時注意します) |
●お母さんのおっぱいを飲むと、噛む力がつきます。哺乳瓶を使うときには、乳首はかむ力をつけられるヌークの乳首を使いましょう。噛む力がつくと、離乳食の時にきちんと噛める食べ方ができるようになります。噛むことが足りないと、噛まずに飲み込んでしまう食べ方をするようになります。病気の時にお粥が嫌いで食べられず、ご飯にすると噛まずに飲み込んでしまい消化がよくできずに病気をひどくさせてしまう子になってしまうことがあります。噛む力、噛む習慣は離乳期につけてほしい大切な力です。後々は、歯並びにも影響します。哺乳時には、しっかりと抱き、母乳同様赤ちゃんとの交流を楽しみながら授乳しましょう。
●ゴム製のおしゃぶりはゴムのアレルギーを起こす可能性があり、なるべく使わないようにしましょう。歯がためやおしゃぶりには安全な塗料が塗られた木製の物を使いましょう。樹脂製・プラスチック製・樹脂製の被膜がはられたものはビスフェノールAやフタル酸エステルなどの化学物質(環境ホルモン物質)が溶け出ることがあり、使用はなるべく避けます。
●ミルクを溶かすお湯に、カルシウムの多い水は使わないようにしましょう。ヒトの赤ちゃんは他の哺乳動物に比べて低カルシウムでゆっくり成長し、その間に母親から様々な知識を与えてもらえるように育っていきます。ヒトの赤ちゃんの腎臓は未熟な働きしかないため、多量のカルシウムは体外に排泄できず、ケイレンを起こしてしまいます。ヒトの赤ちゃんに牛乳をそのまま与えると、多量のカルシウムを処理できません。人工ミルクはヒト用にカルシウム濃度を低く調整してあります
(牛乳100ml中カルシウム100mg、ヒトの母乳100ml中カルシウム27mg)。
●離乳食用お粥簡単調理法…離乳食用のお粥は、お米から炊いておいしいお粥を食べさせたいものです。別な鍋できちんと作ればいいのですが、こんな簡単な方法もあります。ごはんを炊くときに細長い磁器製の器に洗ったお米と分量の水(病気の時の対処法…お粥の作り方参照)を入れ電気釜の中に入れ、ごはんを炊きます。炊き上がるといっしょにお粥もできあがっています。何回か試して練習してみてください。
●使う食器は、合成樹脂製の物は避け、化学物質が溶けでない磁器製・ガラス製、鉄など金属製の物(アルミは避けます)を使うようにしましょう。特に、ポリカーボネート樹脂製の哺乳ビンは熱湯を注ぐとビスフェールAという環境ホルモン物質が溶け出ることが報告されています。なるべくガラス製の哺乳ビンを使いましょう。
●おしゃぶりや歯がため、手に持って遊ぶおもちゃなども塩化ビニール(柔軟剤としてフタル酸エステル類:環境ホルモン物質が使用されている)など合成樹脂製・プラスチック製のものは避けましょう。合成樹脂製のものを使うときは、ポリプロピレン・ポリエチレンなど有害な化学物質がでにくいものを使いましょう。木製のもの、塗料が安全なものを使うようにしましょう。(環境ホルモンについては「アレルギーっ子と残留農薬・環境ホルモン」を参照)
●スプーンで飲ませる練習をします。
●使う素材は沸騰させて冷ました水(ゆざまし)や浄水器を通した水でいいでしょう。
●乳首以外の物が口に入ることに慣れさせるだけですから、飲ませる湯冷ましは少量でかまいません。つまり、スプーンが口に入ればいいのです。極端にいえば、何も乗せずにスプーンだけ使えばよいのです。
●甘い味に慣れさせないため、果汁は使わないようにしましょう。果汁の取りすぎでアレルギーを悪化させることがあります。また、細菌の感染を起こしやすくなります。
●一品の野菜を味付けせずに煮て野菜のだしをとり、野菜スープとして飲ませます。
●お米を煮てスープ(おもゆ)を作り飲ませます。それぞれの野菜の味を覚えるだけなので、量は少量です。回数は1日1回です。
●野菜はカブ、ダイコン、人参、キャベツ、ユキナ、コマツナ、チンゲンサイ、カボチャなどの新鮮で農薬の少ないもの、アクが強くない物を使います。
●母親や父親は、多くの野菜の種類を覚えるようにしましょう。
使う素材 白米・小松菜・ユキ菜・白菜・キャベツ・大根・カブ・つぼみ菜・京菜・ニンジン・ブロッコリー・カリフラワー・
アスパラガスなど
●1日1回です。
●お粥とあくの強くない野菜を使います。野菜の数種類を組み合わせます。
●野菜のだし、うすい塩味、または、こんぶでだしを取ります。
●薄い緑茶や紅茶、アスパラリネア(ルイボスティー)などのお茶を飲ませてみます。
●片栗粉でとろみをつけます。寒天は使ってみてもかまいません。
●母親・父親 昆布だしの取り方・煮物の調理を覚えるようにしましょう
使う素材 準備期に加えて、白米・昆布・長ネギ・ワケギ・アサツキ・タマネギ・サツマイモ・ジャガイモ・カボチャ
塩は海水などから作った天然の塩(天塩など)を使いましょう。
●1日2回
●新鮮な白身の魚を試してみます。但し、アレルギーが強い場合は、2ヵ月ほど遅らせた方が無難です。
●野菜は種類を広げましょう。
●大豆以外の豆(ささげ、そら豆、うずら豆など)、豆腐などを食べさせてみます。
●みそ、しょうゆ、酢、砂糖を調味料に使います。
●海草をきざんで食べさせてみます。
●国産の小麦粉を使って、うどんを食べさせてみます。
食べられれば、オートミール粥(市販のパンは添加物が多いので使いません)。
●季節の国産果物を少量あげましょう。味わう程度に与え、あげすぎないように注意しましょう。果汁であげると飲み過ぎるのでなるべく形のあるままで与えます。
●母親・父親 魚の選び方・魚のおろし方・魚の種類を覚えるようにしましょう。
調味料の使い方、煮豆の調理、海草の調理を覚えます。蒸す料理を覚えます。
使う素材 ゴックン期に加えて、ささげ・きぬさや・そら豆・花豆・うずら豆・とら豆・豆腐・ワカメ・マツモ・フノリ・国産小麦粉・
片栗粉
ラッキョウ・ニラ・セリ・シソ・セロリ・ミツバ・モロヘイヤ・ヨモギ・オカヒジキなど
みそ・しょうゆ・酢・寒天
シラス・カワハギ・イシモチ・ワカサギ・キュウリウオ・シラウオ・サヨリ・キス・メバル・アイナメ・スイ・アンコウ・タイ・
カレイ・トビウオ・コウナゴ・イトヨリダイなど
リンゴ・ブドウ・ナシ・カキ・ミカン・スイカ・イチゴなど季節の果物
●1日3回
●新鮮な青みの魚(さんま、いわしなど)や他の魚介を食べさせてみます。
●だしにカツオ、にぼしを加えてみます。
●豚肉の赤身(脂は避ける)を食べさせてみます。
●納豆・大豆を食べさせてみます。
●なたね油などのアレルギー用の油を使ってみます。
●アクの強い野菜を食べさせてみます(トマト、ほうれんそう、なすなど)。
●きのこ類を食べさせてみます。
●国産の小麦粉で、蒸しパンやフライパンで焼いてパンケーキなどを与えてみます。パンをあげる場合は小麦やイーストのアレルギーに注意して、添加物の無い物を選
んで与えます。できれば手作りします。
●母親・父親 焼き魚、炒め物、肉料理などを覚えましょう。
使う素材 モグモグ期に加えて、イワシ・サンマ(新鮮なもの)・ホッケ
サワラ・カツオ・マグロ・サケ・マス・イカ・エビ・カニ・ニシン
アオヤギ・ミル貝・ホッキ貝・アワビ・サザエ・ツブ貝・アカ貝
アサリ・シジミ・ハマグリ・ホタテ・カキなど
トマト・ホウレンソウ・モヤシ・レンコン・ナス・ニンニク・ゴマ
ゴボウ・メカブ・ノリ・ヒジキ・切り干し大根・カンピョウなど
豚肉赤身・くじら肉・納豆・大豆
ナタネ油・ぶどう油・からしな油・オリーブ油・しそ油
みりん・砂糖・トマトケチャップ・トマトピューレ
シイタケ・キクラゲ・シメジ・ナメコ・エノキなど
リンゴ・ブドウ・ナシ・カキ・ミカン・スイカ・イチゴなど季節の果物
アワ・ヒエ・キビ・セモリナなども料理に入れてもかまいません。
ここまでで、和食としての食事の基礎ができあがります。
●断乳。1歳〜1歳6ヶ月ぐらいのとき、食事は一日3日きちんとごはんと野菜類を食べ、お母さんから離れてもひとりで遊べるようになったら、断乳を考えます。母乳をやめる前1〜2週間前から、「もうおっぱいはやめようね」と何回も話しておいてください。そして体調のいいときを見計らって、ある時からきっぱりと母乳をやめます。回数を減らして徐々にやめるやり方は、ほぼ確実に失敗します。おっぱいに人の顔を描いたり「へのへのもへじ」を描いていもいいでしょう。今までとは違うことをはっきりと赤ちゃんに伝わるようにします。どんな泣いてもぐずっても母乳はもうあげません。おなかが空いたらごはんを食べるようにします。母乳をやめたからと、牛乳やミルクをあげたりはしません。母乳の代わりはヒトが食べるべき食物です。断乳は赤ちゃんが母親から独立して離れる第1歩です。同時に母親が自覚した母親として子供から離れるときでもあります。母乳をやめるという行為を通して母親と子供の関係がより高い親子の状態になります。がんばって、断乳しましょう。
●1歳以降はスープや味噌汁の汁は食べるのですが、野菜そのものを一時的に食べなくなる時期があります。舌ざわりが悪いと食べないようです。周囲の大人や兄弟がおいしそうに食べるところを見て徐々に食べるようになるので毎日食卓に出して下さい。とろみをつけたり、汁物に入れたりすることで食べることがあるので、いろいろと工夫してみましょう。
アレルギーを起こしやすい物は、多くても週2回程に止めるようにしましょう。
偏らずバランスよく、いろいろな物が食べられるようにしましょう。