アレルギーっ子の生活

<02-01         2000年04月16日公開>

【アレルギーの考え方】

  私たちが生活している場所、その環境の変化によって体は様々な反応をします。暑ければ、毛細血管を広げて体の熱を外に逃そうとします。寒ければ、毛細血管を縮めて熱を逃さないようにします。同じように、周囲の環境にある物質が体を傷めつけ、健康に生きていくことを妨げようとした時、体は持っているすべてを使って健康状態を続けようと頑張ります。しかし、その力も尽きたとき、その物質から逃げようとします。逃げることで、体が傷つかないようにし、正常な生命活動が続けられるようにします。その状態が、“アレルギー”等です。一種の“防衛反応”と思われます。学問的に“アレルギー”というと、その定義は難しく、それだけで議論が尽きません。でも、毎日いろいろな症状で悩んでいる患者さんたちにとっては、学問的な“アレルギー”の定義は必要ありません。ここで使う“アレルギー”は生活する上で環境に対し、体が反応する様々な状態を言うことにします。私たちの体を守り、生き生きと生活できるようにするために、“アレルギー”は存在するように思えます。“アレルギー”等生活環境によって起こる病気は“生活環境病”と言っても良いでしょう。

  この「環境」の中には、物質的、経済的、精神的なものなど生活をする上で必要な環境すべてが含まれます。どんなにお金があっても、良い物質的環境の中に住んでいても、ご両親の中が悪かったり、いつもイライラしているお母さんのお子さんはなかなか治らないことも多く経験します。反対にお金がなくて、“アレルギー”を軽くする方法が手に入れられず、悪化することもあります。

  初めて“アレルギー症状”を起こした子供のお母さんはよくこんな質問をされます。「今まで大丈夫だったので、“アレルギー”になるはずはないと思いますが?」しかし、今まで大丈夫だと思っていたものが、ある時から突然だめになる。突然、体が拒否反応を起こし受けつけなくなる。この状態が“アレルギー”反応なのです。異物が体に入ってきた時、体はいろいろな方法を使ってこの異物を何とか体に害が出ないように処理します。今まで何とか頑張って体内で処理してきたがもうこれ以上は耐え切れない状態になった時に“アレルギー・過敏症”は起こります。“アレルギー”は静かに進行し、ある時突然始まります

  “ヒト”が持っている消化や処理能力を超えた異物の体内への侵入は、過剰になると“アレルギー”や異常な反応を起しやすいのです。例えば、牛乳・卵・肉・過剰な砂糖や油・過剰な果物・食品添加物・合成洗剤・室内汚染(異常に増えたダニやカビ・花粉・ペットの毛やフケ、ホルムアレデヒド等)・大気汚染物質・農薬等です。反対に、“ヒト”の体が受け入れやすいもの、つまり、“ヒト・日本人”が長い年月をかけて、処理する力をつけたものはアレルギーを起しにくいのです。例えば、お米や野菜、みそ・しょうゆ・塩・温度の変化・湿度の変化等。“ヒト”にとって良い環境とはその人の持っている環境を処理する能力の範囲内にまわりの状況がある場合です。

 “アレルギー”が発症し、重症化する時は、悪条件・悪環境の重なりがあります。寝不足・疲れ・激しい運動・他の病気合併・他の“アレルギー”等の悪い条件が重なり、その上に“アレルギー”のあるものに接触して、または、食べたり吸い込んで“アレルギー”の病気となって現れます。さらに、具合の悪い時に限って、だめなものを食べる傾向があり、何が自分にとってだめなものなのか知っておくことは、健康を守るために非常に大切です。

  その人が持っている環境に対して反応しやすい体質は基本的には一生変わることはありません赤ちゃんで“アレルギー” を起こしたらその子は、老人になるまで、様々な環境下でいろいろなものに“アレルギー”を起こしていくことでしょう。生活方法を改善し“アレルギー”の症状が良くなったらその状態・生活方法を続け、常に良くするよう努力すること、また、環境の変化や、自分自身の体調の変化に応じて、生活方法を変える能力をつけておくことが大切です。「アトピー性皮膚炎がひどくて環境整備や食事療法をしていたけど、良くなったので前の(ひどい)生活に戻しました。」なんてことをすれば、他のアレルギーの病気、気管支喘息や滲出性中耳炎、アレルギー性鼻炎、偏頭痛などを起こして悩み続けることになります。重い病気をせずに、“アレルギー” と長く付き合うことが大切です。

  “アレルギー”の人たちは、環境の変化、ほこりや食べ物の汚染、空気の汚さなど、自分の合わない状況、悪い環境を敏感に感じ取り、避けることができます。“アレルギー”と仲良くのんびりと付き合い、“アレルギー”を生活の助けにすることが大切です。

  子どもが“アレルギー”の病気を起こしていると診断された場合、親は子供から生活を見なすように警告を受けたと考えて下さい。子どもはその家を代表して“アレルギー”を起こし、家の食べ方や環境を見直しなさいと警告しています。赤ちゃんの“アレルギー”はその家全体の病気と思われます。赤ちゃんに卵の“アレルギー”があるとわかった場合、お父さんお母さんはその子に卵を食べさせることをやめるように努力されるでしょう。その時に、同時に、お父さんお母さんが今まで食べていた卵の量が多すぎたのではないかと考え、一家全員で卵を食べることを注意して欲しいのです。悪い配合飼料で育てられ、汚染した油脂が多い卵は“アレルギーっ子” のみならず、親の健康をも害している可能性があるのです。また、もし、アトピー性皮膚炎がある場合、食物アレルギーは食べることだけでなく、“アレルギー”のあるものを触っても症状が出ることが多く、卵料理をして卵のエキスがついたお母さんの手や衣類は、赤ちゃんに触ることで赤ちゃんの湿疹を悪くさせます。ひとつの屋根の下では、“アレルギーっ子”が止めるように警告したことはみんなで止めた方が良いのです。

  簡単に手軽にすますことができるパン食を毎朝食べていたお家に生まれたアトピー性皮膚炎の赤ちゃんは、パン食に伴う食品、つまり、小麦、牛乳、卵、ピーナッツに対して“アレルギー”を起こしていることが多いのです。この場合、赤ちゃんはパン食をやめるように訴えているのではないでしょうか? ダニの“アレルギー” があることがわかった場合は、家の中、寝具の中でダニが異常に増えているかもしれません。“アレルギーっ子”は家の汚染を警告しているのです。

  “アレルギー”を起こしやすい食べ方、生活方法は無理して長く続けていると、体内の生命維持機能の働きをおかしくさせるものが多いのです。この状況が数十年続いて最後に起こることは、おそらく、癌や生活習慣病などの発症でしょう。すでに10歳代で高血圧・高脂血症・動脈硬化・脂肪肝など生活習慣病を起こしている子供たちが増え続けています。診療の現場で“アレルギー”を起こした子供たちや大人たちをみているとこんなことを感じます。「“アレルギー” は環境の汚染を警告している」「“アレルギー”を起こしにくい生活は正しい食生活・環境改善の入り口」と。つまり、私たち大人は、敏感に環境の悪さを感じ、体を張って表現している“アレルギーっ子”の教えに従ったほうが良いのではないのでしょうか?

 “ アレルギー”体質の人に最低限覚えて欲しいことは寝具の掃除と扱い方、そして食べ方です“アレルギー”の体質は治ることはありません“アレルギー”の起こりやすさは遺伝子上、または胎児期に受けた環境汚染化学物質(環境ホルモンなど)による影響で決められていると思われるからです。でも、あきらめる必要はありません“体質”があっても、食べ方や環境さえよければ病気としては発症しないからです。病気を起こさない食べ方、生活の方法、環境を整える方法を身につければ良いのです。そして、あなたの住む街、国、地球の環境に目を向けて下さい。地球が汚れて病気になれば、あなたもあなたの子どもも病気になるのですから。

  今の“アレルギーっ子”が大人になり、健康な子供を生み、その子が育ち、生きるための生活術を親(今の“アレルギーっ子”)から受け継いだ時、私たちの願いは達成されます。そうなれば、“アレルギー”を起こさないように生活する方法と食べ方が、親から子に受け継がれていくことになるからです。

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