アレルギーっ子の生活

<01-02         2000年03月15日公開>

【アレルギーっ子を育てる時】

・アレルギーっ子を育てるための考え方をする
  アレルギーを起こす子といっしょに楽しく暮らすためには、考え方を変えることが大切です。どうしても日本は「みんなが同じことをして、同じ物を食べ、同じ事に興味を持ち、同じ事を考えることがいいことだ。」となってしまいがちです。ところが、アレルギーっ子、特にアナフィラキシーっ子を持つと、その考え方にしたがって生活し「みんなと同じにすること」に流されてしまう限り、充実した幸せな生活はできません。アレルギーがあるものを食べ、無理に他人に合わせた生活をすればたちまち病気となり生活は空中分解してしまうからです。

・アレルギーっ子たち、その家族の人たちが身につけなければいけない考え方
  この子なりのやり方、この子なりの生活、この子なりの食べかた、この子なりの興味、この子なりの考えを持って、この子なりの成長を遂げること」が大切なのです。何が大切なのかを見極め、みんなと同じことをして同じ物を食べることが人生ではないことを知っておかなければいけませんアレルギーの子供たちが、あるものを「食べられないこと」はその子の欠点になってはいないのです。その子の体に合わないものを見つけだし、食べないことで健康を保っているのですから、「食べられないこと」は長所なわけです。周りの人たちの「食べられなくてかわいそう」と浴びせる言葉は、体に合わないものを食べないで“健康”でいる子供たちに「自分は欠点のある人間?」という疑問を投げかけます。こんな言葉は励ましにならないばかりか、子どもたちをどれほど傷つけているのか気がついて欲しいものです。家族の人たちは、「食べられないこと」を「食べられなくてよかった」と思うまで気持ちを高められるように、アレルギーや食べものについて勉強をし、生活の様々な場面で子供たちと話合って欲しいと思います。「食べない勇気」が必要なのです。そして、「選んで食べる」食べ方を身につけることも大切なのです。

・“おいしいもの”を毎日食べ続けることが幸せだとは限りません
  毎日毎日、甘くて“おいしいもの”を食べ続けていると、人の欲望は際限なく高くなって行ってしまいます。そして、食べ物の本当の“おいしさ”がわからなくなってしまうようです。ここに旬に採れた、農薬の残留もない“おいしい”イチゴがあったとします。普段、甘くて味の強いものをたくさん食べている子はこのイチゴらしい味とイチゴらしい香りのするすてきなイチゴを楽しめるでしょうか? そんな子はきっと「あまり味がしない!」とポツッとつぶやき、アレルギーにはあまり良くないお砂糖やコンデンスミルクをいっぱいかけて食べなければ幸せな気持ちにはなれないかもしれません。しかし、いつもは甘いものをあまり食べないで質素な食べかたをしている子どもが、同じイチゴを食べたとしたら、どんなにおいしく感じることでしょう。イチゴのおいしさは100倍かもしれません同じイチゴで大きな“幸せ”が手に入り、「このイチゴ、おいしー!」と顔いっぱいの笑顔が見られるかもしれません。その笑顔は家族の人たちにも笑顔を広げていくことでしょう。毎日甘いイチゴを好きなだけ食べていたら手に入らない幸せです。どちらが幸せかは、それぞれの人が選ばなければいけません。でも、アレルギーっ子たちには『後者』を選んで欲しいのです。
  人には、すべて“個性”があり、育ちも食べるものも、好みも、考えた方もすべて違って当たり前、一緒にできることがあったらみんなで楽しくやろう。そんな考え方をすると、給食を食べずにお弁当を持って行こうが何をしようが楽な気持ちで過ごすことができます。自分を捨てて、病気を悪化させてまで、他の人や集団に自分を無理やり合わせる必要はありませんお互いのいいところをしっかり認め合って、一緒にできるように考えて工夫をする努力をすれば良いのです人間の高度な社会は“個性”の違うさまざまな人が集まって形成されているのです

・アレルギーっ子に身につけて欲しい力
  それはひどいアレルギーを起こさず、健康を崩さずに、困難な状況を切り抜ける力です。いろいろなアレルギーを起こしている時、疲れがたまっている時、寝不足が続いた時、熱が出ている時、お腹の調子が悪い時、どんな時でもアレルギーがひどくならないように、食事や環境に気を配り、うまく切り抜け、自分の持っている希望や夢に向かって突き進んでいって欲しいのです。今はお母さんやお父さん、おじいちゃん、おばあちゃんが一生懸命世話をやいてあげて何とかできても、それだけではだめなのです。アレルギーっ子本人が考えて自分の力でできるように、ご両親、家族の方から子供たちに伝え、毎日の生活の中で身につけられるように工夫することが必要なのです。地道なアレルギーを起こさないための生活方法の習得が大切なのです。

・アレルギーっ子は環境の変化に慣れない
 アレルギーっ子は環境の悪化に敏感に反応します。そして、なかなか「慣れ」ません。悪い環境に接すると、また同様に反応してしまいます。アレルギーっ子は「慣れ」ないこと、つまり、適応できにくいことが特徴です。アレルギーの原因がわからずに接触し(つまり、食べたり触ったり吸いこんだりすること)続けたり、慣れさせようと接触し続けると、いつかは耐え切れなくなり、様々なアレルギー疾患を起こし(アレルギーが暴走する)始めます

・アレルギーっ子は急激な変化についていけない、しかし、いったん反応が始まると抑制できない
  アレルギー体質を持っている人は、環境の急激な変化に体がついていけません。寒いところから暖かいところへ移動した時、季節の急激な変化、急に立ち上がった時、急に運動した時など、環境の変化に体の反応がついていけず、様々な症状を起こします。しかし、いったん起こり始めた反応は、止められなくなり、いきすぎてしまいます。かゆくなり掻き始めると止められなくなりアトピー性皮膚炎が悪化する、鼻水が出始めると止められなくなりアレルギー性鼻炎を起こす、咳が出始めると止められず気管支喘息を起こす等。この状態はアレルギー反応だけでなく、神経・精神活動や行動の面までおよびます。いったん泣き始めると止められなくなる、カッとし始めると止まらない、急に不安な気持ちになり止まらない、不意に起こるある種の音に敏感で何回聞いても慣れない、一度怖いと思うとずっと怖がってとめられない、1つのことを好きになってやりはじめるとそこに集中してしまい他のことができなくなる、ある食べ物が好きになるとアレルギーを起こしてしまうまで止められないなどです。
  この反応を減らすためには、原因となるものを環境中から取り除き、生活環境や食生活を改善して暴走しにくい体の状態を作り出すことが大切です。また、アレルギーを勉強して理解していくにつれ、「この症状が始まると症状の進行は止められずひどくなっていく」ことがわかるようになり、適切な時期の適切な薬の投薬で暴走を食い止めることができるようになります。

・アレルギー性疾患治療の原則
アレルギー性疾患治療の原則  IgEを介した即時型(はっきり型)のアレルギー反応は、寄生虫、原虫、真菌(カビの仲間)、細菌、ウイルスなど比較的大きな生物が体内に侵入してくることを防ぐために発達した防衛機構といわれています。細胞性免疫である遅延型(かくれ型)アレルギー反応は、外界から進入した感染性微生物や食品に由来する蛋白質の断片(ペプチド)など小さな分子を認識します。アレルギーの人たちがアレルギーを起こしている物は、人体に何らかの悪影響を及ぼすため、体に入らないようにアレルギーを起こしてしているのだろうと考え追求してきました。アレルギーの原因となる物を調べると環境汚染がわかり、毒性のあるものが含まれていることを発見します。環境の汚染によって神経や内分泌、免疫など体内のさまざまな働きがおかしくさせられても、人は環境汚染化学物質を認識し対外へ排除する方法がありませんでした。近年のアレルギー性疾患の増加をみていると、それらの汚染物質をアレルギーという手段を使って避けようとしているようにもみえます。ところが、アレルギー反応の抑制が効かず反応しすぎるため、アレルギー性疾患に発展してしまいます。何がアレルギーの原因となっているのか? 誘因は何か? 過剰な反応が起こらないようにするためにはどんな対策をとったらいいのか考えていくことが大切です。

・変化を予測する
  アレルギー性疾患の悪化には季節性、年齢による変化があります。アレルギーを治療していくためには、その変化を事前に考慮して予測しながら生活を組み立て計画していくことが必要です。そのために、どんなアレルギーや過敏症があるのか(食品、ダニ、花粉、昆虫、動物、カビ、金属、薬品、化学物質など)、アレルギーを起こしやすくさせている環境中の化学汚染物質にはどんなものがあるのかなどの知識と情報を集めておくようにしましょう。そして実際に子どもが、何にアレルギーを起こしているのか、アレルギーを起こしやすくさせている誘因となるものは何かを、実際の生活の中での変化や病気、血液検査(IgE検査やリンパ球刺激試験、皮膚試験など)の結果から充分知っておく必要があります。

・生活術を子どもに伝える
  アレルギーの起こしやすさは、両親からの遺伝、胎児期の環境(特に妊娠初期)、その後の生活環境や食生活によって変わると思われます。しかし、遺伝や胎児期の環境から受けた影響は一生続き、環境の状態によって病気を引き起こします。したがって、アレルギー性疾患を発病し、アレルギーが原因であることがわかったならば、親が努力して生活環境や食生活の改善のために得た知識や生活方法を、その子本人が生活術として身につけ一生健康で充実した人生を送れるように伝えることが大切です。親だけがアレルギーの知識を覚えて、一時期だけ実行しても、その時期よくなるだけで終わってしまいます。子に、そして、孫に伝えていくことが必要です。

・アレルギーっ子はすばらしい力を持っている
  アレルギーっ子は、アレルギー状態ではうまく持っている力を発揮することができません。しかし、アレルギーがうまくコントロールされ、体調の良い状態が続くとキラッと輝くすばらしい力を発揮できるようになります。興味を持ったものに意識を集中し、すばらしい能力を伸ばすことができるように、親はその子の良い面を見つけ出してあげる努力をする必要があります。もちろん、自分で探し出す努力をすることも大切です。

・その子なりの生活方法・食べ方を探し続ける
  それまでの親や家族、本人の生活環境や食生活によって、アレルギーの起こしやすさやアレルギーの原因は人によって違います。集めた情報や知識から、その子なりの生活方法をその子なりのやり方で作り上げていくことが大切です。主治医の先生とも相談しながら作り上げてください。計画した生活方法や食べ方は、実際に実行し、結果を見て、正しかったかどうかを判断し、また改善していく、この繰り返しが大切です。そして、その正しい自分に合った生活方法を見つけ出していく方法も子供たちに伝えて行く必要があります。

・目標となる食生活は住んでいる地域によって、人それぞれ、家庭ごとにも違います
  哺乳動物であるヒトの食性にあったものでなければいけません。日本人は日本人らしい生活と食べ方をつくりあげていくことが必要です。毎日毎日の生活の中で目標を探し出す努力をすることも大切です。そして、子どもたちが地球環境や生き物たちのことも大切に考え、健康的で自分らしい生活を築いてくれたらと願っています。

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