<01-01 2000年03月01日公開>
小学生におけるアレルギー性疾患頻度 | ||||||
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対象 | 実施日 | 喘息様 症状 (過去+現在) |
喘息様 症状 (現在) |
花粉症様 症状 |
医師の 診断に基づく アレルギー性 疾患 (喘息を除く)*** |
何らかの アレルギー性 疾患を 有するもの (現在・過去)**** |
宮城県内20の 小学校の5年生 1321名* |
平成10年 11月 |
8.0% | 6.2% | 44.0% | 56.1% | 69.3% |
所沢市内小学校 在籍の11歳 約2930名** |
平成10年 2月 |
10.68% | 8.03% | 48.28% | 62.28% | 75.95% |
*北条祥子、吉野博、角田和彦、笠沼勇一、佐藤洋:宮城県の児童の健康状態に関する実態調査、 社団法人環境科学会1999年会プログラム集:88−89、1999 地球環境問題プロジェクト |
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**児童・生徒の喘息等の実態調査報告書-所沢市教育委員会より11歳の調査分を抜粋 | ||||||
***アレルギー性疾患(喘息を除く):じんましん、アトピー、アレルギー性鼻炎、花粉症のうちどれかをいわれたことがある、または、アレルギー療法をまたは体質改善の療法を受けたことがある。 | ||||||
****アレルギー性疾患(喘息を除く)に加え喘息用症状(過去・現在)、喘鳴、持続性咳、持続性痰、気道過敏症、花粉症様のいずれかがある人。 |
アレルギー性疾患は増加し続けています。平成10年11月に(財)みやぎ・環境とくらしネットワーク地球環境問題プロジェクトがおこなった宮城県における児童の生活環境と健康調査(中間報告:環境庁版ATS−DLD質問表を改定した質問表を使用)によると、宮城県内20の小学校に通う小学校5年生では8%が気管支喘息に罹患したことがあり、44%に花粉症様の症状があり、69.3%の子どもは何らかのアレルギー性疾患にかかったことがありました。つまり、二人に一人以上がアレルギー体質を持っているということになります。同様の調査表を使った所沢市の調査ではさらに高率でアレルギー性疾患への罹患が見られます。全国36地域約6万6千人の3歳児を対象に環境庁がおこなった平成9年度大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査報告(99.10.27発表)では、喘鳴(ゼーゼー)を起こす子が平成8年度13.86%から平成9年度15.06%と増加、喘息の罹患率は平成8年度1.83%から平成9年度3.41%と約2倍になったことが報告されています。現在では、アレルギー性疾患は、少数の人たちだけの問題ではなくなっているのです。
“アレルギー”の本は他にも多く出版されています。確かに“アレルギー”の面からみて治療法を考えることは大切です。しかし、ある人がアレルギー性の疾患になったとしても“アレルギー的な面”だけが病気になる訳ではありません。同時に神経や内分泌等様々な臓器の障害も伴っています。そこで、“アレルギー”の面から見るだけでなく、自分なりの生活を築き上げていく“人”としての視点、成長し大人になっていく過程にある“子ども”という視点、“環境の汚染”との関わりという視点から見たらどうなのか等を考えることが必要になってきています。
多数のアレルギーの子どもたち、大人たちを診察して検査し、本人や母親、家族の人たちの食べているもの(家族を含めた食物・生活日誌)や生活(詳しい問診表)を見せてもらいました。その中で、患者さんとその家族の人と一緒に考えたこと、実行してきたこと、その結果、実行してよかったこと等を中心に、学問的な内容だけでなく、“アレルギー”の子どもを育てるときに役立つ考え方や、気楽に読んでもらえて、実際の生活にすぐ役立つ内容も入れて、本にしようと思いました。
この本に出てくる病気は“アレルギー”ばかりではありません。生活環境中に存在する食べ物や植物、動物等も、化学汚染物質や細菌等の微生物、金属等によって何らかの病的な状態を起こしてしまうことが中心に書かれています。まだまだ、“アレルギー反応”や“過敏症”の原因や反応の経路が分かっていないものも多く、はっきりと「これが“アレルギー”で、これは“アレルギー”ではない」とは言えません。環境を汚染している化学物質が“ヒト”にどのような影響を与えているかもはっきりわかっていません。ダイオキシンなど化学物質の影響も断言できる段階ではありませんが、現時点で、自然界の動物たちに起きていること、実験動物で確認されてきていることが、診療してきた多くのアレルギーっ子たちやその親たちに起きている“おかしさ”にぴったりと当てはまることが多く、驚くとともに、環境汚染化学物質から何らか影響を受けている可能性があると考えるようになりました。
はっきりしていることは、ここにアレルギーっ子がいて、何かを食べたり、吸い込んだり触ったりすれば病気が起こることが事実として存在します。したがって、これからお話する内容とは、ここに「病気に苦しむ人がいる」という現実から始まって、生活環境とヒトの病気との関係を探り、どうしたら病気を少なく、軽くすませ、体も心も健康な状態をつくっていけるかを、環境や食生活の面から考えていくことです。この本の中では“アレルギー”を“学問的なアレルギー”という狭い範囲で考えず、環境の影響として起こった病気として“アレルギー”を考えていただければ幸いです。
文章中に“人”と“ヒト”が出てきますが、“人”は哺乳動物としての“ヒト”の体を土台にして人間としてのさらに高次な精神活動や魂を持つ状態を指して使っています。“ヒト”という場合は、哺乳動物としての動物的な状態を指して使っています。土台である哺乳動物としての体の働きがうまくいかなければ、人としての精神活動も魂(スピリッツ)も病気にならざるを得ません。哺乳動物としての本来の体の状態を取り戻すことが、アレルギー対策、食生活の改善や、環境整備の目的です。
“アレルギー”がひどく、常にアレルギー対策に追われていると、アレルギーを治すことが人生の目標のような錯覚に落ちいってしまうことがあります。でも、それでは充実した人生を過ごすことができません。アレルギーっ子はアレルギーがない状態のときは活発で、創造性豊かで、感情豊かな子供らしい子供であることがほとんどです。アレルギーがあると、輝くような才能もうまく発揮できず、落着きがなくキーキーした子、ひとつひとつがのろくてボーっとした、身の回りのこともできないようなだめな子となってしまうことがあります。その子の持っている才能や力を少しずつ引き出して充実した楽しい生活を送れるように、アレルギーの対策が必要なのです。演劇や人形劇を楽しんだり、自分でやってみたり、絵を描いたり、音楽を楽しんだり、旅行に行って知らない物や人と知り合ったり、楽しく遊んだり、工作に熱中したり、スポーツを楽しんだり、自然の中で生活したり、環境を守る活動をしたり、何でも良いのです。心も体も大きく(見かけの大きさではなくて)なれるように生活を楽しみましょう。アレルギーを持つ人たちのために何かやってあげるなんてことも良いかも知れません。アレルギーを治すことだけではなく、人としての人生の目標が何なのか、いったい私は何を生きがいにしていこうかと常に考えながらアレルギー対策に取り組んで欲しいと思います。
本の中にはいろいろなことが出ています。いきなりすべてを実行することはできません。一人一人の状況がみんな違うため、それぞれにあった方法を見つけだし、書かれたことを手本にし、自分または家族なりのやり方で実行しなければいけません。そして、それを実行する過程が健康な生活を送るためには一番大切なことなのです。しかし、その方法はこの本では決めることができません。今、何があなたやあなたの家族にとって必要なのか?この本の中で、まず何を実行したら良いのかは、あなた自身が勉強して見つけ出して欲しいのです。また、一緒に考えてもらえる良いお医者さんを見つけ出して欲しいのです。
アレルギーを軽くする生活の方法や食べ方を親が理解し、子に伝えられたらこの本の目的は達成されます。この本を読んで、日ごろの生活の中に生かしていただけたらと願っています。