読売新聞−2001年(平成13年)10月02日(火)

世界の子供に交流の機会を

グローバル・カタリスト・パートナース 大澤 弘治

 9月11日に起きた米同時多発テロ。6,000人以上の死者・行方不明者を出す大惨事に関して、テレビ・新聞・雑誌などのメディアを通じて様々な報道がなされているが、中でも私の目に焼き付いているのは、テロを歓迎していたパレスチナの子供たちの姿である。
 この映像を見た時、衝撃とともに、「果たして、この子供たちはこれまでに何度アメリカ人と直接話したことがあるのだろうか?」といった疑問を抱かざるを得なかった。
 私も以前パレスチナを訪れた経験があるが、多くの子供がアメリカを肌で感じ、理解しているとは考えにくい。この子供らは、親や先生から教えられてきた話をもとに、自分なりのアメリカ像を作り出しているのではないだろうか。つまり「テロ歓迎」は大人による概念の刷り込みの結果の行動ではないか。
 これは、米国・パレスチナ間だけの問題ではなく、世界の様々な地域で、異なる人種・宗教・イデオロギー故に発生している争いにもあてはまることではないだろうか。
 私は、「スクールズ・オンライン」というNGOの運営に参加している。世界中の学校に、コンピュータとインターネットアクセス、更には子供たちに参加してもらう国際交流プログラムを無償で提供することにより、世界の子供が国境・宗教・人種の差を越え、お互いを理解する機会を提供するための活動である。
 これまでに20か国以上の国々で、五千八百校以上の学校にコンピュータセンターを設置し、交流プログラムを提供してきた。本NGOは米国・日本は勿論のこと、イスラエル・パレスチナ・アラブ諸国でも展開されており、子供たちの間で色々な形での国際交流が始まっている。
 大人に固定概念を刷り込まれる前に、子供たちが自ら、色々な国の子供たちと直接触れあうことにより、相手は本当に自分たちの敵なのか、それとも楽しい仲間なのかを肌で感じて欲しいのである。言葉が異なる場合には、絵・ビデオ・歌を電子ファイルにして交換することだって出来る。インターネットの普及により、世界は確実に狭くなった。今日では、インターネットを介して、世界各国とのコミュニケーションが可能である。この素晴らしいツールは、ビジネスや遊びのためだけのものではなく、多くの可能性を秘めているのである。

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