読売新聞−2001年(平成13年)10月02日(火)
都市部のデパートで、高齢者をターゲットにした弁当や調理済み食の販売、宅配に乗り出すところが増えている。和食中心で味は薄め、おかずの一品一品は少量でも種類を多くと、シニア世代に合わせて工夫してあるのが特徴。特に一人暮らしの高齢者に好評だという。
「池袋西武」(東京)では先月から、地下食品売り場に出店する飲食店など十二店が、「あさいちいきいき弁当」という名前でそれぞれ高齢者向けの弁当を売り出した。
午前中に一人分の弁当を買う高齢者が多いことに目をつけたデパート側が提案して始めた。名店とも一日限定30食。値段は500円前後で、すぐに売り切れるそうだ。赤カブや広島菜を乗せた彩り豊かな野菜ずし、マイタケ入りの湯葉どんぶりなど、いずれも薄味の和食弁当だ。
東京都内で一人暮らしをしている女性(62)は、マツタケなど秋の味覚をあしらったちらしずしを友人の分と一緒に購入した。「一人分の食事を作るよりお金がかからない。手軽ですし」と言う。栃木県内の女性(59)は「あっさりした味が多いので、病気の夫も食べやすい」。
「日本橋三越」(同)は、やはり先月から健康志向の強い顧客向けに、夕食と翌日の朝食分の調理済み食を宅配するサービスを始めたところ、利用者の約八割を60歳以上が占めた。2食で1,100kcal、塩分は7g以下、30品目以上の材料を使ったメニューを管理栄養士が考える。20セットで56,000円だが、親を介護している人の利用も多いという。
今春、一パック40gからの少量総菜パックを売り出した京王百貨店新宿店(同)も、ターゲットは「たくさんのおかずを少しずつ食べたい」という高齢者。
農水省の外郭団体「財団法人食品産業センター」(東京)が昨年首都圏の高齢者約800人に聞いたところ、「市販の調理済み食は味が濃すぎる」「量が多すぎる」などの不満の声が目立った。各デパートの動きは、こうした「舌の肥えた」高齢者を取り込もうとする競争とも言えそうだ。
同センターでは「一人暮らしの高齢者の需要はますます多くなる。表示の文字を大きくしたり、包装を開けやすくするなどの工夫も必要」と話している。