朝日新聞−2001年(平成13年)8月28日(火)
千葉県銚子市犬吠埼沖で26日に救助された長崎県崎戸町の漁業武智三繁さん(50)の1カ月間余に及ぶ漂流を支えたのは、約45gの飲料水と菓子類、そして自分で釣った魚だった。最後の2週間は、飲まず食わずの状態で、太平洋側に猛威をふるった台風11号に巻き込まれた時には死を覚悟したという。武智さんの主治医が27日、明らかにしたもので、その生命力と精神力に驚いている。
武智さんは26日夕、海上白衛隊厚木基地の飛行艇に救助された後、神奈川県伊勢原市の東海大付属病院に収容された。同病院の主治医岩瀬弘忠さん(36)によると、脱水症状が残っていて栄養補給のために点滴をしているが、血圧や体温は安定しており、2週間ほどで退院できる見込みだ。
岩瀬さんが武智さんから聞いたところによると、積んでいた飲み水は、20g入り容器2つに入った水とコーラなど清涼飲料水約5gだけ。これと釣った魚や菓子類で飢えをしのいだが、やがて飲料水が底をつき、最後の2週間は何も口にしなかったという。
また、「あまり騒がれると恥ずかしくて地元に帰れないよ」と話しているという。