ハンセン病訴訟 「新たな人権侵害」
控訴方針に元患者ら怒り

 「我々が死ぬのを待つつもりか」、「どこまで苦しめたらすむのか」。ハンセン病訴訟の熊本地裁判決で18日、政府が控訴の方針を固めたことについて、原告や元患者らは怒りを隠さない。90年にわたって強制隔離され、差別され続けてきた元患者たち。「人間回復を」という叫び声が、まだ国に届かないことにいらだちを募らせる。元患者らは21日に、厚生労働省前で座り込みを行うほか、各地でハンガーストライキなど抗議行動を展開するという。

 「控訴は新たな人権侵害だ」。国の控訴方針に、西日本訴訟原告団副団長で熊本県合志町の菊池恵楓園の志村康さん(68)はそう指摘する。「判決は生きているうちの救済を指摘した。判決後に亡くなった原告もいるのに、国は元患者が死んでいっても痛くもかゆくもないのか」。同園の鷹志順さん(68)は「控訴は時間延ばしだ。それだけ救済されないまま亡くなる人が増える」と語気を強める。 鹿児島県鹿屋市の星塚敬愛園では、熊本地裁判決の日から園名を捨てて本名で生活している上野正子さん(74)が語気を強めた。「国はどこまで私たちを苦しめたら気がすむのか。ハンガーストライキしてでも控訴させない」。14日に坂口力厚生労働相に控訴断念を要請した玉城シゲさん(82)も「私たちの訴えは人権回復にあり、和解では済まされない問題なのに……」と唇をかむ。
 沖縄県平良市の宮古南静園の原告、松村憲一さん(73)は「国は民の声を聞く姿勢があるのか」と怒りを抑えきれない。熊本判決が本土復帰(72年)以前の損害を賠償の対象外としたことに触れ「沖縄の元患者にとっては半分の勝訴。その判決すらのめないのか」。 全国ハンセン病療養所入所者協議会会長で長島愛生園(岡山県邑久(オク)町)の高瀬重二郎さん(77)は「はっきりした(国の政策の違法性を認める)判決が出たというのに、まだ国はハンセン病患者が死ぬのを待つのか。控訴は、隔離政策を続けてきた当時と同じ考えを今も持っているということだ」と言う。
 大島青松園(香川県庵治(アジ)町)ではこの日、「国が控訴を決めたと伝えられるが、原告側としてはあくまでも国に控訴断念を求めていく」という園内放送が流れた。

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