毎日新聞−2001年(平成13年)05月17日(木)
新幹線が姿を変えようとしている。乗り心地の追求に最新技術を応用したり、バリアフリーやITなどをキーワードにした新規車両の導入などがめじろ押しだ。1964年に開業した新幹線には、当時最新の技術やサービスがふんだんに盛り込まれたが、時代とともに色あせてきており、JR各社は「技術革新や社会の変化に乗り遅れまい」と必死だ。
JR東日本は、2002年末に東北新幹線が八戸(青森県)まで廷伸するのに合わせ、車両やシステムに最新技術を導入する。
まず、東海道新幹線開業時の技術をベースにしていた「自動列車制御装置(ATC)」を、新たな方式に置き換える。これまでのシステムは最も性能の低い列車に合わせて、段階的にブレーキをかける仕組みで、減速時の乗り心地の悪さが課題だった。
新しいシステムでは、それぞれの車両性能や線路の条件に最も適した減速パターンで、運転速度から停止までスムーズに減速させる。このため、乗り心地が良くなるとともに、運転効率もアップ。停車駅ごとに平均一分の運転時間短縮となり、運転間隔も狭められるため、将来的に列車本数の大幅増にも対応できるという。JR東海でも同じようなシステムを独自に開発して導入する考えだ。
八戸開業に合わせて東北、上越新幹線に導入される新型車両にも、様々な技術が盛り込まれる。「世界初」を売り文句にする「フルアクティブサスペンション」は、車体の左右の揺れをセンサーで感知して、揺れを打ち消す方向にサスペンションを動かす仕組みで、格段に乗り心地が良くなるという。
同社では、新型車両を2005年度までに206両製造、現在の車両と入れ替える方針だ。
一方、JR東海では、2003年秋の品川駅開業を機に、「のぞみ」主体のダイヤ編成に組み替える準備を進めており、今後3年間で新たに32編成を導入する計画だ。
新造車両の特徴は、「バリアフリー型」だ。通路を歩く障害者や高齢者のために、座席にこれまではなかった手すりを設置、視覚障害者のためにドアの開閉を知らせるチャイムも設けた。東海道・山陽新幹線では、最も初期のタイプに、背もたれを倒して座席を反転させるための手すりがあったが、二代目の車両からは姿を消していた。
新造車両には、パソコン用のテーブルやコンセントも設置された。最初の編成が先月末にデビューした。
同社は品川開業までに、携帯電話で座席を予約し、携帯電話を乗車券代わりに改札口を通って乗車できるシステムの導入も目指している。
昨年3月に新大阪−博多間で営業運転を始めたJR西日本の「ひかりレールスター」は、多彩なサービスが売り物。車内放送をとりやめ、車内改札も、座席のホルダーに乗車券を入れる方式に改めた「サイレンス・カー」を組み込んでいる。車内でパソコン作業をすることを想定した設備を整えた「オフィスシート」などを設けた車両も用意されている。