読売新聞−2001年(平成13年)05月15日(火)

編集手帳

 きのうは小渕元首相の一周忌だった。志半ばで病に倒れて、業績の評価は定まらないが、対人地雷廃絶に示した決意とその成果は、だれしも認めるところだろう◆世界平和のために、国際的NG0(非政府組織)活動の重要性をいち早く認識した。「地雷ではなく花をください」と、地雷廃絶に取り組む「難民を助ける会」(東京)スタッフの意見によく耳を傾けた◆橋本内閣の外相として、対人地密会面禁止条約に調印した。世界の対人地雷は推定一億一千万個。廃絶への道は依然険しいが、わが国は対人地雷破壊を進める一方、紛争地の地雷除去を積極的に支援している◆昨夜の一周忌法要で、「父が読めなかった手紙」と題した本(扶桑社)が配られた。闘病中、全国から届いた見舞いの手紙の数々を収めている。「がんばってください」「一日も早くお元気に」と、小中学生からの手紙も多い◆人との出会いを大切にし、行く先々で親しまれた人柄をしのぶ。その手紙を「父の耳元で毎日、声をあげて読みました。きっと届いていると信じながら」と編者の長女暁子さんが書いている◆カンボジアに難民を助ける会が運営する職業訓練センターがある。地雷の被害者ら年間約40人が自立をめざしている。「父の遺志を継いで」(暁子さん)、本の印税はセンターに寄付される。

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