毎日新聞−2001年(平成13年)05月15日(火)
食 |
ちまたにあふれる「健康食品」が、4月から三つに分類されていることをご存じだろうか。厚生労働省が許可した特定保健用食品と、規格・基準を満たした栄養機能食品、どちらでもない一般の食品だ。違いを理解して選びたいところだが、「かえって分かりにくくなった」と指摘する声もある。 【銅山智子】 |
「健康食品」は3月まで、「トクホ」と呼ばれる特定保健用食品と「その他の食品」の2種類だった。10年前に誕生したトクホは、「脂肪がつきにくい」食用油などで知られ、生活習慣病の1次予防や健康の維持増進に役立つことがヒト試験などで科学的に証明された食品。厚生労働省が1点ずつ審査、許可している。
ただし医薬品とは違い、「便秘を治す」など効き目を直接言い切る表現はできない。「病人でも、まったくの健康体でもない『半健康』の人に向けた食品です」と、機能性食品コンサルタントの中川邦男さんはいう。消費者の健康志向を反決してトクホは増え、現在251品目を数える。
一方、「その他」はビスケットやシリアル、キャンデー、ゼリーから錠剤状のサプリメント、エキスなど幅広い。だが明確な定義はなく、表示や基準もはっきりしていないため「効果がよくわからない」など疑問の声は少なくなかった。
4月にスタートした「保健機能食品制度」は、「その他」のうち通常の食生活で不足しがちな栄養成分を補給・補完する食品を「栄養機能食品」という新たな分類にし、「鉄は赤血球を作るのに必要」などと栄養素の働きの表示を認めた。栄養機能食品とトクホとを合わせて、「保健機能食品」と呼んでいる。
ビタミンやミネラルなど14種類を一定量含み、国の規格や含有量の基準を満たしていれば、個別の許可は必要ない。すでに、化粧品メーカーのファンケルが、1粒で1日に必要なビタミンとカロチンを摂取できるサプリメントを栄養機能食品として販売。メーカー各社の商品化は今後、本格的に進みそうだ。
厚生労働省新開発食品保健対策室は「輸入食品による食のグローバル化や米国からの規制緩和要求もあり、新たなルール作りが必要だと判断した。あいまいな表現でお茶を濁す怪しい商品は減るだろう」と説明する。
だが、健康食品に詳しい消費生活コンサルタントの小杉啓子さんは「分類が細かくなっても、こうした食品の区別や表示が認知されなければ、消費者はかえって混乱する。情報をきちんと開示し、消費者が正しい商品知識やアドバイスを得られる相談窓口を設置すべきだ」と指摘している。
三つの違いを、カルシウムを含む食品の表示で比べてみた=下の表参照=。
一般の健康食品は栄養成分の含有表示だけだが、栄養機能食品は摂取方法や1日あたりの目安量のほか、含まれる栄養素が体にどんな働きをするか知らせる「栄養機能表示」が必要だ。個別審査をへたトクホとは違う旨の表示もある。厚生労働省の″お墨付き″を得たトクホは「許可表示および許可理由」が細かく書かれ、情報量は最も多い。
中川さんは「トクホには効果や安全性を証明する科学的データがあり、品質はメーカーと国が責任を持ってくれる。健康に何らかの不安を抱える人に適した食品だが、頼りすぎるのはよくない。栄養はあくまで3度の食事からバランスよくとるのが基本で、保健機能食品で『補う』という姿勢を忘れずに」と、アドバイスしている。