読売新聞−2001年(平成13年)05月14日(月)
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来年2月頃、宇宙開発事業団が打ち上げる予定の超小型実験衛星「マイクロラブサット」。副主任開発部員として3人の同僚とチームを組み、衛星の軌道を監視し、機器の働きをチェックする。
競争が激しい人工衛星の国際市場で日本の技術が試される場面に立ち会うことになり、「重要な役回りです。チャンスが与えられたことを感謝したい」。
サポート役は、同事業団と障害者用機器メーカーが開発した「点字ディスプレー」。上下に動く3000本のピンで複雑な図形や動画を表示し、刻々と変わる衛星の位置や細かなデータのグラフを、手で確かめることができる。
5歳の時、アポロ11号の月面着陸のニュースに接した。宇宙飛行士が漆黒の宇宙をバックに、ふわふわと歩いていた。「こんな世界もあるんだ」。緑内障のため薄れていく視力で見た宇宙は、心にしっかりと焼き付いた。
就学前に失明したが、頭の中ではるかな宇宙のイメージは膨らむばかり。病院の待合室などで母にせがみ、SF小説を読んでもらった。「理解できないことがたくさんあり、宇宙はあこがれだった」
宇宙論を学んだ学生時代、複雑で膨大な数式を扱う数理解析では、視覚障害が大きなハンディとなった。光学機器メーカーの研究所に勤めたが、宇宙をあきらめられず、1998年、同事業団の障害者採用に応募、合格した。
「目の不自由な自分でもできることを示したい」。控えめに強い意志をのぞかせた。 (つくば支局 安田 幸一)
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