読売新聞−2001年(平成13年)05月14日(月)

ケアと成年後見の連携を 大貫正男

(社団法人成年後見センター・リーダーサポート理事長、司法書土)

 和歌山市の75歳の女性が殺害されたうえ預金を引き出され、ケアマネジャー(介護支援専門員)の男性が容疑者として逮捕された。介護保険制度の中心的な担い手が関与した事件として、関係者に大きな衝撃を与えている。
 とはいえ、介護保険制度もしくはケアマネジャーという資格が過度の非難を受けるのは適切でない。むしろ高齢者の財産管理体制の不備など、看過できない制度上の欠陥が露呈されたととらえるべきだ。
 今回のように生命まで奪われずとも、財産の不当な奪取にからむ事件は非常に多い。被害者は疾病を抱えている方や軽度の痴ほうの方に多く、事件は密室状態の中でしばしば起こり得る。
 このような場合は、現在の財産管理を目的とする委任契約と将来の痴ほう発症後に備える任意後見契約を組み合わせ、後見人等を選任して孤立無援状態を作らないことが重要だ。本人の傍らに常時いなくとも、背後に後見人の存在がわかれば、今回のような財産奪取を目的とする接触も避けられるであろう。
 介護保険制度と成年後見制度は密接に絡み合っていて、痴ほう高齢者が介護保険によるサービスを受けるためには、代わって契約を行う後見人を選任しなければならない。ケアマネジャーには、再発防止策として、プランとともに成年後見制度との連携を組み込むよう切望する。                                                   (和)

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