読売新聞−2001年(平成13年)05月10日(水)
コンビニ店などで売られている持ち帰り弁当の製造業者が、アレルギー原因物質表示への対応に追われている。一年間の猶予つきで4月から多くの加工食品に義務づけられたものだが、原材料の数が格段に多いため、全部書き込むとラベルが大きくなり過ぎるといった問題もあり、一部簡素化も進められている。全製造業者の表示が出そろうのは、猶予期間が終わる来春ぎりぎりになりそうだ。
アレルギー原因物質の表示は、一部改正された食品衛生法施行規則に盛り込まれた。このうち表示が義務化されたのは症例数が多いか、重い症例が報告されている小麦、そば、卵、乳、落花生の5品目。このほかのあわび、イカなど19品目の表示は、症例数が少ないなどの理由で義務化はされず「奨励」にとどまったが、多くの製造業者はこちらも同様に表示する方針だ。
新表示は、現在、原材料を表示している加工食品すべてに適用されるが、中でも製造業者への影響が大きいとされるのが、一製品あたりの原材料数が多い持ち帰り弁当だ。厚生省(当時)が昨年、事例案で挙げた幕の内弁当では、野菜かき揚げ、鶏の空揚げ、エビフライ、スパゲティなど食品ごとに義務化五品目をすべて書くよう求められた。
これに対し、コンビニ店で売られる弁当の製造業者などで作る「日本べんとう工業協会」(東京)は「(例示通りの表示では)表示欄が大きすぎ、容器の中身が見えなくなる」として改善を要望。その結果、@ひらがな表記の一部を漢字に、A五品目の表記はメンチカツやポテトサラダなど食品ごとではなく、「その他小麦由来原材料を含む」などと全体をまとめても可−などが認められた。
弁当には多彩な食品が盛りつけられる。その成分表示のためには原材料をすべて把握せねばならない。同協会事務局長の渡辺幸彦さんは「たとえ微量でも、表示にない物が検出され、アレルギー被害が出たら、製造業者の責任問題になる。準備に来春ぎりぎりまでかかるメーカーもあるはず」と見る。
こうした状況で、コンビニ最大手のセブン−イレブン・ジャパン(東京)では3月下旬から、新しい表示を導入。弁当やおにぎり、調理パンなどに使用した5品目プラス19品目を表示している。その結果、例えば例えば「お好みのり弁当」の場合、従来の91文字が151文字に増え、ラベルもやや大きめになった。
同じく対象となる駅弁製造業者は「JAS(日本農林規格)法で義務づけられた原材料等表示への対応が終わったばかり」(日本レストランエンタプライズ、崎陽軒など)で、アレルギー表示への対応はこれからというところは多いようだ。
こうした経過について、食物アレルギーの子を持つ親の会(東京)の代表の1人、武内澄子さんは「患者にとってアレルギー表示が正確かどうかは生命にかかわる。製造業者はこの点を理解の上、微量の原材料も含めて生産地までさかのぼるよう、徹底してほしい」と求めている。