読売新聞−2001年(平成13年)04月16日(月)

天窓

医療は「人の尊厳」最優先へ 南 孝次

 障害者や高齢者を受け入れる精神病院で、人権侵害が後を絶たない。朝倉病院(埼玉県庄和町)の事件では、高齢者が両手・両足・両肩・胴を縛られる「七点拘束」を受けたり、部屋にひもでつながれていたりした。他方、詐欺や不正請求、税金の申告漏れなどで摘発される精神病院も増えている。
 当会の精神医療被害ホットラインヘの相談や被害報告も増えている。報道の増加がきっかけのようで、長い間胸に秘めていた怒りや悲しみをだれかに知ってもらいたい、何とかしたいという思いが伝わってくる。10年、20年たっても、患者らは病院で受けた不当な処遇を忘れていない。
 こんな報告がある。
 「1日中縛りつけられている高齢患者がいた。両手首、時には両足首も車いすに縛られていた。夜もベッドに。生き地獄を見た思い。アウシュビッツよりもひどい。早く救い出して。毎日祈っています」
 1090の精神病院で、1日10055人の患者が拘束・隔離を受けているという。国会は「人権侵害のカタログ」として取り上げ、行政の担当者も最近は「縛られる当人は100%嫌なものだ」と言うようになった。
 抑制は、管理するために都合がいいからだけではなく、「人」に対する理解が欠如し、医療や介護が形がい化した結果といえるのではないか。6日に抑制廃止を徹底させる通知が出たが、「人の尊厳」を最優先とする意識改革が何よりも求められる。
                                              (市民の人権擁護の会日本支部代表世話役)

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