毎日新聞−2001年(平成13年)04月16日(月)
過熱する早期教育の現状やその背景を探って朝刊3面で3月20日から10回掲載したシリーズ「生きる力」を考える−第3部「初めの一歩」には連載終了後も読者から多くの便りが寄せられている。一部を紹介する。
5歳3カ月の娘と3歳の息子がいます。夫は早期教育容認派で、息子に数え方を教えています。反対派の私は、子供が数について理解し認識できる時期まで待つべきだといつも対立しています。数を表面だけ、形だけ知っても仕方がないと思うのですが。今は入学前に文字の読み書きができて当たり前の時代ですが、子供の成長の時期を見て、発達に応じた内容を教えてやれば、きっと早期教育の何分の一の労力で子供は知識を吸収することができるのではないでしょうか。焦る必要はないと思います。大事なのは適当な時期を見逃さないことでしょう。
以前、早期教育に熱心な幼椎園に勤めていました。卒園時には、すべての子供が作文を書き、小学生並みの観察画を仕上げます。椅子に座って行儀よく話を聞けるようになり、親たちは満足そうでした。私立小への受験を目指す子供には有効な教育内容だったと思いますが、それ以外の子供には、少々荷が重過ぎたようです。限られた時間内で消化しなければならず、外で目いっぱい体を使って遊ぶ時間はほとんどとれません。小学校からは「知っていることばかりで、学習意欲が低下していく」「ゼロからの出発の子供とすぐ並ぶ」 「運動能力が身についていない」と指摘されたようです。幼児期には体を動かして遊び、いろいろな体験を通して吸仮、成長していくことが大切だと思います。
2歳と0歳の2児の母です。2歳の娘は現在、右脳開発の某幼児教室に通っています。早期教育を実桟している親は、一日中、子供にフラッシュカードなど知識の詰め込みをしていると誤解されるのでは、と思いました。1日30分ですが、娘の記憶力はびっくりするぐらい向上しました。フラッシュカードは脳の回路を刺激するものであって、知識を覚え込ませるものではありません。子供にとっては遊びでしかないのです。「お受験」など考えたことはなく、子供の可能性を伸ばしてやれるならと、日々取り組んでいます。
記事を読んで早期教育はいけないと思うお母さんがいては不幸だと思って投書します。幼児の早期教育は計算、または、文字や英語を丸暗記させることだという誤解があると思います。早期教育とは「適時期」に有効な教育をすることだと思います。力をつける早期教育は子供が楽しんでやるのならば、どんどんやらせてあげればいい。しかし、お友達と遊ぶ時間は十分につくってあげるのが大事です。そんな考え方で育てたわが家の小学6年生の息子はテストの成績は学年でトップ。通信簿には「ユーモアがあり、いつもまわりに笑いが絶えません」と書いてありました。
私自身の子育ての持、3歳は3歳なりの、5歳は5歳なりのことができればいいと考えていましたが、(連載を読み)それが間違っていなかったとの意を強くしました。泥んこ遊びや積み木遊びなど、幼児期でしか体験できません。階段は1段ずつ上ればいいと思います。言葉にしても日本人である以上、まず正しい日本語こそ身につけてほしい。教育が産業になってしまったことが、教育の荒廃につながったのでは……と懸念します。