河北新報−2000年(平成12年)10月28日(土)

障害者介護と自立
-葛藤を克明に記す-

 車いすの男性が旅行記

 事故で首から下のほとんどの機能を失った日本人男性が、ネパール人青年の介護を受けながらアジア各国を車いすで旅した記録「車いすでアジア」(小学館)=写真=を出版した。

 書籍「車いすでアジア」著者は山之内俊夫さん。本書は単なる旅行記ではない。介護する側と、される側の心の葛藤(かっとう)が克明に記されるなど、障害者の自立と介護のあるべき姿について問い掛けた一冊だ。

 著者は23歳の時、水難事故でほぼ全身まひになり、一時は「生きる価値がない」とまで思い詰めた。だが、事故から7年後、「生きる意味」を探すため、ネパール人青年のジュカライに介護を依頼し約一年間の旅に出た。インド、カンボジアなどを巡った著者はやがて「生への活力」を取り戻してい<。

 「動けないぼくが『謙虚』に過ごしていたら、他人によって、生かされているだけに過ぎない……ぼくは、自らを生きたい」と著者は書く。

 だが、旅先で出会った米国人には「17歳の少年を奴隷のようにこき使って、おまえは王様気取りなんだ」と痛烈に批判される。ジュカライとも衝突し、旅の意味を何度も問い直す。

 国籍や言葉の壁を越え、友情を手にしていく二人の姿は感動的だ。1,200円。

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