毎日新聞−2000年(平成12年)10月27日(金)
【シドニー26日共同】
シドニー・バラリンピック第9日は26日、13競技を行い、競泳の女子100b自由形(運動機能障害3)で成田真由美(神奈川県)が1分30秒06の世界新記録で優勝し、今大会5個目の金メダルを獲得した。
陸上の男子400b(脳性まひ1、車いす使用)でも、前場一也(山梨県)が54秒17の世界新で金メダルを手にした。
卓球では、女子シングルス(運動機能障害2、車いす)の藤原佐登子(愛知県)が準優勝。男子シングルス(運動機能障害2、車いす)の皆見信博(香川県)は準々決勝へ進んだ。
競泳の男子100bバタフライ(視覚障害1)では、酒井喜和(兵庫県)が銅メダルを取り、日本の今大会獲得メダルは金9、銀14、銅7となった。
車いすテニスの大前千代子(大阪府)川島徳江(千葉県)組は準決勝で敗れ、3位決定戦に回った。
自転車タイムトライアル(脳性まひ2)の前田昭治郎(福岡県)は5位。バスケットボール車いす男子、バレーボール座位の日本は、それぞれ9〜12位決定予備戦に勝ち9、10位決定戦へ進んだ。(記録は共同、日本選手のみ)
★前場 陸上男子車いす400 世界新V★
陸上男子400b(脳性まひ1、車いす使用)で、世界新記録で優勝した前場一也(31)。メダルラッシュが続く日本選手団の中で、陸上男子では初の金メダルをつかんだ。
今大会は100bで銅、二百bで銀を獲得した前場は、得意の400bではスタートから飛び出し、リードを保ったままゴールした。「輿石善輝コーチと立てた作戦を実行しました」と会心のレース展開に大満足。ゴール寸前に追い抜かれるのを嫌って、スタートから飛ばして逃げ切る作戦だった。
陸上選手団では、選手村に入ってから輿石コーチや前場ら数人が髪を金色に染めた。三村一郎総監督らから「コーチまで染めてはしめしがつかない」と注意されたが、「金メダルを取りに来ているんです」。前場の金メダルで、輿石コーチらは「金髪効果がようやく出た」この勢いでもっと頑張りたい」。
★自己への挑戦で6冠へ★
ほかのどの選手でもない、自分への挑戦になってきた。競泳で5冠を達成した成田真由美(30)=神奈川県。26日の百b自由形で、昨年出した自己の世界記録を3秒75更新して優勝した。27日の50b自由形でも、自分が4年前にアトランタで刻んだ世界記録の44秒47に挑む。
2位に大きく水をあけたこの日のレース。残り20bで右肩が張り「思うように水がかけなかった」。「連戦の疲れを取りきれていない。反省点」と勝利も手放しでは喜ばない。
50bに向け「メダルの個数ではなく、あくまでタイムにこだわる」ときっぱり。その口調には、8月のジャパン・バラリンピック大会(大阪)で、未公認ながら大幅な記録更新となる39秒台を出している自信がみなぎっていた。
話題が、この日シドニー入りした姉の榑松美由紀さん(34)ら応援団のことになると一気に表情が和らいだ。「姉の子どもたちに弱いんです」。表彰式が終わると大急ぎでスタンドヘ行き、おいの優二ちゃん(4)をひざに乗せて「ほら、金メダルだよ」。笑みがこぼれ、うれし涙がこぼれた。
【共同】
★酒井、堂々の「銅」★
積極的なレースを仕掛けた。競泳男子100bバタフライ決勝。酒井喜和(18)=兵庫県=が、勢いよく飛び出した。予選で世界新を出した隣のコースのマカラウ(ベラルーシ)と、前半は肩を並べる力泳。しかし相手が格上だった。抜くことはできず最後は1秒23差の3位でゴール。それでも自己ベストを出し、100b自由形の銀に続く堂々のメダルだ。「何個もらっても感激」と、いつものように照れ笑いをみせた。
ゴール後、タイムを見て驚いたような顔をした。「前をいく選手が速かった。まさか(メダルを)取れるとは思っていなかった」。レースのたびに自己記録を伸ばし、まだまだ成長途上。
中森邦夫監督は「4年後のアテネに向け、これからがさらに楽しみな選手」と期待をかける。
◇陸上(五輪スタジアム)◇
【男子】 | 400b(脳性まひ1、車いす使用)決勝 | @前場一也(山梨) C古川智亘(福岡) |
世界新=54秒17 58秒25 |
200b(車いす4)決勝 | G氷尾嘉章(兵庫) | 26秒21 | |
100b(知的障害)決勝 | G宮川仁(群馬) | 11秒39 | |
走り高跳び(切断など2)決勝 | E鈴木徹(山梨) | 1b78 | |
1500b(車いす2)決勝 | G森島英樹(兵庫) | 4分10秒12 | |
200b(切断など1)決勝 | 古城暁博(千葉) | 棄権 | |
やり投げ(視覚障害2)決勝 | F乾代和(大阪) | 37b31 |
◇競泳(国際水泳センター)◇
【男子】 | 100b自由形(運動機能障害2)予選「1組」 | @井上八郎(埼玉) | 2分3秒09=決勝進出 |
100b自由形(運動機能障害4)予選「2狙」 | C軽部弘(茨城) | 1分29秒75=決勝進出 | |
100b自由形(運動機能障害5)予選「3組」 | C前田大介(長野) | 1分16秒92=落選 | |
100b自由形(運動機能障害2)決勝 | C井上八郎(埼玉) | 2分2秒70 | |
100b自由形(運動機能障害4)決勝 | F軽郡弘(茨城) | 1分29秒53 | |
100bバタフライ(視覚障害1)予選「1組」 | @酒井喜和(兵庫) F中条泰沿(東京) |
1分3秒92=決勝進出 1分11秒57=落選 |
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100bバタフライ(視覚障害1)決勝 | B酒井喜和(兵庫) | 1分3秒06 | |
400bリレー(運動機能障害)予選「2組」 | E日本(本村、荒、前田、細川) | 4分56秒47=落選 | |
【女子】 | 100b自由形(運動機能障害3)予選「2組」 | @成田真由美(神奈川) | 1分36秒27=決勝進出 |
100b自由形(運動機能障害4)予選「1組」 | B藤田多佳子(兵庫) 加藤作子(兵庫) |
1分47秒52=決勝進出 =棄権 |
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100b自由形(運動機能障害5)予選「2組」 | C奈良恵里加(群馬) | 1分27秒01=決勝進出 | |
100b自由形(運動機能障害3)決勝 | @成田真由美(神奈川) | 1分30秒06=世界新 | |
100b自由形(運動機能障害4)決勝 | G藤田多佳子(兵庫) | 1分51秒29 | |
100b自由形(運動機能障害5)決勝 | C奈良恵里加(群馬) | 1分23秒67 |
◇自転車(ムーアパーク周辺)◇
タイムトライアル(脳性まひ2)決勝 (5・4`のロードコースで実施) |
D前田昭治郎(福岡) J松本隆行(神奈川) |
8分28秒 8分52秒 |
◇バレーボール(ビニー・パビリオン)◇
▽座位9〜12位決定予備戦
日本3 25−17 1豪州
22−25
25−13
25−21
(日本は9、10位決定戦へ)
◇バスケットポール(スーパードーム)◇
【車いす男子】
日本81 45−18 29南アフリカ
36−11
(日本は9、10位決定戦へ)
◇テニス(テニスセンタ)◇
▽女子ダブルス準決勝
スミット 6−0 大 前(大阪)
フェルヘール 6−3 川 島(千葉)
(オランダ)
◇馬術(国際馬術センター)◇
▽団体成績I日本(菊地、吉田、渡辺)176・67点(個人規定の合計点)
◇卓球(州体育館)◇
【男子シングルス】 | 運動機能障害2、車いす | 1回戦 皆見(香川)2−0ソラベラ(フランス) | |
運動機能障害5、車いす | 1回戦 周長生(台湾)2−0岡(岡山) | ||
【女子シングルス】 | 運動機能障害5 | 準々決勝 張小玲(中国)2−0宮内(埼玉) | |
運動機能障害2、車いす | 準々決勝 藤原(愛知)2−0マリアジュ(フランス) 準決勝 藤原2−0バルトハイデル〔ドイツ〕 決勝 カノバ(スロバキア)2 21−15 0 藤 原(愛知) 21−17 |