毎日新聞−2000年(平成12年)10月17日(火)

みんなの広場

「やればできる!! 最下位返上で自信」   小学6年 富岡 実裕 11(新潟県上越市)

 今年もまた、すっかり稲刈りの終わった農道を走る校内マラソン大会の日がきた。その日は肥満ぎみのぼくの一番苦手な日だ。
 1年から4年生まで、大きく距離をはなされてゴール。もらったカードは29。最下位だ。
 5年の時はさすがにいやになって参加しなかった。
 それからのぼくは、川の堤防を時間のゆるす限り、祖母とジョギングを始めた。初めはきつかったが、日に日になれ、苦にならなくなった。
 マラソン大会の朝、毎年応援にきている祖母に「見に来ないでね」と言って家を出た。
 小学校生活最後の大会だ。「頑張るぞ!」。むしゃぶるいした。
 ゴールでもらったカードを見て「やった」と叫んだ。とてもうれしかった。家へ帰って祖母に見せたカードは17と書いてある。「みっ君!」と、祖母は涙ぐんでいた。
 やる気になればやれないことはないのだ。ぼくは、大きな夢を持って、中学校での生活に自信がわいてきた。

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「撮影止め声を限りに声援を送った」  大学職員 井上  務 49(東京都青梅市)

 「今年こそは!」と小さな決意を囲めて息子の運動会に行きました。 私の決意? それは簡単なことでした。80b競走に出場する小3の息子に「頑張れ!」と大声援を送るということです。
 これまではビデオやカメラで息子の映像を収めることに集中するあまり「『頑張れ−!』をしなかったナ」と悔やんだからです。最接近できる場所を確保、一生懸命に走る息子が近づいて来ます。「正行! 頑張れ−」とありったけの大声援。息子は私の声に振り向きました。
 結果は2着。妻は「声を掛けなかったら1着だったかも……」とクレーム。でも、私は大満足。息子も「お父さんの大きな声が聞こえてビックリした」と喜んでくれました。
 近ごろの運動会はビデオやカメラの放列で歓声が少なく静かだそうです。私の大声援も珍しかったのでしょう。近くから笑い声が聞こえました。でも「これでいいのだ」と私はニヤリでした。

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「運動会は愛情いっぱいのお弁当で」  大学生 佐藤 雪子 20(横浜市旭区)

 今年は10月9日が体育の日で、各地の幼稚園・小中学校の運動会が集中したようです。
 私はお弁当屋さんでアルバイトをしていますが、その日のお弁当の注文は約250件でした。
 運動会のお弁当ほど家族の色が表れるものはありません。子供は学校で友達と食べる給食と比べ、家族と食べるお弁当の格別さを実感すると同持に、それが運動会の楽しみの一つなのです。
 そのお弁当が家庭の味ではなく、既製品になりつつある現実を目の当たりにし、年に一度の子供の運動会のお弁当を買って済ます若い母親に怒りさえ覚えました。運動会で雄姿を見せる子供たち、そして彼らにささげる応援にも、愛情いっぱいのお弁当が一役買っていることを忘れてはいけないと思います。
 お弁当に、頑張る子供をねぎらう要素があると確信する一方で、うさぎのリンゴやタコのウインナーが廃れてしまう日が来るのでは、という不安に心を痛めました。