毎日新聞−2000年(平成12年)10月17日(火)
16日午後0時15分ごろ、愛知県藤岡町飯野坂口、会社員、梅村友行容疑者(40)方から「子どもの様子がおかしい」と119番通報があった。同県警豊田署で調べたところ、長男で同町立飯野小5年、拓哉君(10)が自宅2階のベランダで死亡していた。友行容疑者と妻の粧子容疑者(31)が、2日間にわたりベランダに拓哉君をひもで縛りつけていたと話したため、同署は2人を傷害致死の疑いで逮捕した。
調べでは、2人は14日午後6持ごろから、自宅2階のベランダのといに、拓哉君を裸のまま立たせた状態で縛りつけた。友行容疑者が15日朝、いったんひもをほどき、拓哉君を諭したが、言うことを聞かないので、昼前から再びベランダに縛りつけたという。16日午前10時半ごろ、拓哉君が「暑い。水をかけて」と騒いだため、粧子容疑者は水をかけたまま放置。午後0時15分ごろ様子を見にいくと、ぐったりしていたという。
調べに対し、両容疑者は「(拓哉君が)日ごろから友人をいじめたり、うそを言ったりするので縛りつけていた。14日夕方から食事は与えていなかった」と供述しているという。
一家は、両親と拓哉君のほか、長女と二女、祖母の6人家族。
両容疑者によると、拓哉君は9月末ごろから、自室に「殺す」「死ね」などの落書きをしたり、包丁を持ち込んだりするようになった。このため自宅2階のベランダにテントを張り、拓哉君にここで生活させていた。また、豊田市こども発達センターなどに相談に行っていたほか、同市内の病院にも通院させ行動障害と診断されていた。
両容疑者は拓哉君をベランダに縛りつけた14日夕から16日朝までの間、拓哉君を室内から見守り続け、ほとんど眠っていなかったという。このため、粧子容疑者は16日午前、拓哉君に水をかけたあと、部屋で眠り込んでしまい、拓哉君の異常に気付くのが遅れたらしい。
拓哉君が通う小学校の校長は「児童は今月初旬に行われた陸上選手激励会の実行委員に立候補するなど、活発な子だった」と説明する。しかし、拓哉君が9月末に学校を欠席した際、両親から「家庭の問題で休んだ」と訳明を受けたため、不審に思った学絞側が両親に連絡をとり、今月初旬、両親に2度にわたり学校に来てもらったという。
その際、両親は「(拓哉君の)学絞での態度と自宅での態度が大きく違い、そのことで悩んでいる」と打ち明けた。
校長は「県児童相談所や豊田市こども発達センターを紹介したが、まさかこんな深刻な状態になっているとは想像もつかなかった」と話している。