読売新聞−2000年(平成12年)10月02日(月)
冷蔵庫など大型の家電四製品について、メーカーなどにリサイクルを、利用者にコスト負担を義務づける特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)の来年4月施行まで、あと半年と迫った。
家庭で不要になった家電製品は現在では、消費者が市町村に粗大ごみとして引さ取ってもらい、買い替える場合は小売店に引き取ってもらって市町村に回し、大半が埋め立て処理されている。
新法の狙いは、再利用可能な資源を多く使うテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機をリサイクルし、ゴミ処理問題の深刻化を抑え、資源を有効利用することだ。
全国4400万世帯で使用されている家電4製品は約3億台にのぼり、約1800万台が毎年、廃品となる。これを確実に回収し、リサイクルするのは容易でない。メーカー、小売店、そして政府、市町村が一体となって、リサイクルのネットワーク作りを急ぐ必要がある。
資源のリサイクルについては、来年1月施行の循環型社会形成推進基本法をもとに一般的な対策を定めた資源有効利用推進法と廃棄物処理法が来春実施される。これと並行して、個別品目特性に応じた具体策を定めた法律として容器包装リサイクル法に続くのが、家電リサイクル法だ。
家電リサイクルの仕組みは、
(1)2つのグループに分かれた主要家電メーカーが、全国に190か所ずつ指定引取場所を設け、消費者から小売業者や自治体を経て廃家電を引き取る、
(2)全国約30のリサイクル・プラントに運んで処理する、
というものだ。
メーカーによるリサイクル・プラントや指定引取所の整備は順調に進んでいるが、消費者から小売店や市町村を経て、引取所に至るルートの整備はこれからだ。
消費者が負担するリサイクル料金は全国一律で、洗濯機2400円、テレビ2700円、エアコン3500円、冷蔵庫4600円だ。この料金に加え、廃家電を消費者に代わって指定引取所に運ぶ小売店や自治体に、運送料を払う。
東京都の試算によると、実際の処理コストはテレビで6000円強、冷蔵庫で16000円弱だ。メーカー側は処理コストの削減に努め、消費者に無理なく負担してもらえる料金水準を設定した、という。
補修部品の交換で長期間使える製品やリサイクルが容易な製品の開発など、突っ込んだ努力もメーカーに求められるが、この料金水準そのものは妥当といえよう。
現在、消費者が廃家電を処分する際の負担は、市町村によって異なるが、無料か、有料でも一点2000円以下の場合が多い。消費者が負担増を嫌い、家電リサイクル法実施によって不法投棄するケースが増えることを懸念する声もある。
廃棄物の出し手である消費者が、応分のコスト負担を嫌い、リサイクルへの責任を拒むなら、資源問題、廃棄物処理問題は解決しない。家電リサイクルの成功に欠かせないのは、応分の負担を含め主体的にかかわろうとする消費者の意志だ。
「ゴミを出さない」のは、これからの社会を健康的な方向に向かわせるか否かを決定する重要な要素です。そのために、市民は「ゴミは出さない」、「出す場合は、分別する」、「リサイクルできるものはリサイクルする」ことを求められる。 しかし、ここで素朴な疑問が生まれる。処分する時の困難さや有害物質の排出を考えずに、安価に大量生産することだけのために何千種類と言うプラスティック部品を開発・使用してきたメーカーと、安売り、安売りで購買意欲を煽り、まだ使えるものまで買い替えさせてきた量販店、それにしっかりとした方向や指示を与えてこなかった行政の責任である。 購買意欲が多少下がっても、販売価格の中にリサイクル料金や回収費用も織り込まない限り“不法投機”は後を絶たないだろう。それでは何のための「リサイクル法」なのだろうか、その存在さえも疑問視されかねない。 リサイクルや分別ごみ収集は、未来の子ども達に「安全で健康な社会」を引き継ぐために必要なことである。それがきちんと実行されるように、市民だけでなく行政やメーカーや量販店も“痛み”を分かち合う必要があろう。 |