仮性アレルゲン及びアレルギー誘発食品
(食べるとアレルギー症状を起こすまたは悪化させる化学物質を含む食品、アレルギー反応を起こしやすくさせる食品)

 食物に天然に含まれる化学物質、環境汚染によって蓄積・残留してしまった化学物質などのために、通常のアレルギー反応の経路を通らずに、アレルギー症状が起こったり、もともとあったアレルギー症状を悪化させてしまうことがあります。その食物に対するアレルギー反応ではありません。

 食品には、天然の状態でさまざまな化学物質が含まれています。動物はこれらの化学物質を利用してさまざまな体内の反応を起こしています。しかし、この化学物質は食べたヒトに不利益な反応も起こします。

 例えば、生体内でヒスタミンは体を異物から守るために異物を排除する機能を行っています。脳内では、ヒスタミン神経を活性化させて頭を目覚めさせ覚醒と睡眠のリズムを作るために必要です。記憶力や認知機能・学習力を増強させます。けいれんの誘発も抑制します。アセチルコリンは副交感神経の化学伝達物質として働いています。脳内ではアセチルコリン作動神経を活性化させて目覚め度を増強させます。セロトニンは血管を収縮または拡張させて環境の変化に対する血管の調節能力を活発にします。脳のセロトニン神経の活性を高め、不安感を取り除きます。チラミンやフェニルチラミン、カフェインは交感神経を刺激して活動性を高めます。夏野菜に多く含まれるサリチル酸は、体を冷やして夏の暑さに抵抗できる状態を作りだします。トリメチルアミンオキサイドは魚やエビなどのうまみに関係しています。時間が経つと魚自身の持つ酵素によって、トリメチルアミンという化合物に変化し魚の臭みに変わります。

 食品に含まれるこれらの化学物質の多くは食べても脳内には入らないため、脳での作用はありませんが、脳以外では作用を発揮します。アレルギー体質が強くない人は、これらの有益な反応を求めてこれらの食品をその場の環境・状況や体調に合わせてこれらの食品を好むようになります。

 しかし、アレルギー体質が強く、アレルギー反応が過剰に起こりやすい体質がある場合には、状況が変わってきます。アレルギー体質があっても、体調がいい時は注意しながら食べることは可能な場合もあります。しかし、体調の悪い時やアレルギー症状を起こしている時、年齢が小さな子どもでは、アレルギー症状を増強させてしまう可能性があります。敏感な人では少しでも激しい症状を起こすことがあります。体調不良時やアレルギー症状がある時は多量摂取を避ける必要があります。

 特に、ソバ、ヤマイモ、キウイ、チョコレート、チーズ、ピーナッツ、タケノコ、ナス、トマト、メロンはアレルギーを悪化させる頻度が高いので注意が必要です。

 野菜や果物に含まれる化学物質は、熱を加えて調理すると反応や症状が軽くなる場合があります。また、これらは生の状態では食品そのもののアレルギーも起こしやすい食品です。有機塩素系殺虫剤が含まれる油脂食品では加熱しても影響はあまり変わりません。有機リン系殺虫剤は野菜や果物の表面に付着している場合は水でよく洗うことで軽減できます。人工的な化学物質は脳内に入り込み、脳の正常な働きを阻害します。

 有機リン系殺虫剤や有機塩素系殺虫剤などの環境汚染化学物質、食品中の過剰な女性ホルモンの摂取、解熱鎮痛剤と関連する食品添加物などはなるべく避ける必要があります。

仮性アレルゲン・アレルギー誘発食品の表

含まれる化学物質 起こる反応 食品
ヒスタミン 血管を拡張させ、むくみ、じんましん、発赤、気管支収縮などのアレルギー反応を起こさせる ホウレンソウ、ナス、トマト、エノキダケ、牛肉、とり肉、馬肉パン酵母ニシン塩漬けドライソーセージ、発酵食品(パルメザンチーズ、ブルーチーズ、赤ワインなど)、鮮度の悪い青背魚(サバ、カツオ、マグロ、イワシなど)
ヒスチジン 乳酸菌などの微生物によってヒスチジンからヒスタミンが作られてアレルギーを悪化させる チーズ、鹿肉、ピーナッツ、アボガドなど
レクチン、エンドトキシン 肥満細胞からヒスタミンの遊離を促進させる 卵白、イチゴ、トマト、パイナップル、アルコール、チョコレート、エビ・カニ類、魚類の一部
アセチルコリン 副交感神経を刺激し自律神経失調症状や血管の拡張、気管支喘息などを起こす タケノコ、トマト、ナス、ピーナッツ(落花生)、ソバ、ヤマイモ、サトイモ、マツタケ、クワイなど
食品に残留した有機リン系殺虫剤 コリンエステラーゼ活性を落としてアセチルコリンの分解を抑制することで、アセチルコリンの作用を過剰に増強させる 輸入小麦粉を使った食品(パン、小麦加工品、麺類など)、輸入野菜・輸入果物、残留がある国産野菜・果物など
食品に残留した有機塩素系殺虫剤 微量に残留した有機塩素系殺虫剤は神経系の興奮を過剰に起こさせて、アレルギー反応を悪化させる 魚(特に油脂が多い魚)、卵・牛乳製品、獣肉の油脂など
グルタミンソーダ グルタミンソーダの代謝異常を有する人においてアセチルコリンの産生が高まることが関与していると推定されている 化学調味料を使った食品(グルタミンソーダを多量に摂取すると15-20分後に全身脱力、顔面紅潮、動悸、胸を締め付けられる感じなどを生じることがあり中国料理症候群といわれる)
セロトニン 平滑筋の収縮、血管の収縮を起し、効果が切れると血管の拡張などを過剰に起こし、アレルギー反応を加速させる クルミヒッコリーナッツ、トマト、バナナ、キウイ、パイナップル、アボガド、プラム
チラミン 血管収縮作用があり、血圧が上昇する。効果が切れると血管拡張が起こり、頭痛、動悸、顔面紅潮、発汗、吐き気・嘔吐などを起こす チーズ(特に古くなったチェダーチーズ)、ワイン、チョコレート、アボガド、プラム、バナナ、ナス、トマト、鶏レバー、ニシン酢漬、パン酵母など
フェニルチラミン チラミンと同様 チーズ(特に古くなったチェダーチーズ)、赤ワイン、チョコレートなど
カフェイン メチルキサンチンの一種で、体内のカテコールアミンの分泌を活発にして交感神経を興奮させ、動悸、不安、不眠、頭痛などを起こさせる 茶、コーヒー、ココア・チョコレート、コーラなどの飲料製品
イノリン 平滑筋に対する交感神経刺激作用によってアレルギー反応を修飾する サンマ、タラ、サケ
トリメチルアミンオキサイド 本来はうまみの成分であるが、過剰摂取によりアレルギー反応を修飾する エビ、カニ、イカ、タコ、アサリ、ハマグリ、カレイ、タラ、スズキなど
自然界のサリチル酸化合物 過剰な反応を起こしアレルギー反応の悪化 イチゴ、トマト、キュウリ、メロン、柑橘類、ブドウなど
解熱鎮痛剤と同様の反応を起こす食品添加物 アレルギー反応を悪化させる 人工着色料、防腐剤・保存剤(パラベン)、人工香料など
リノール酸 ロイコトリエンやプラスタグランディンを産生してアレルギー反応を過剰にさせる 卵、バター、獣肉油脂、植物性油脂など
その他の食品添加物 じんましんの誘発 酸化防止剤(ブチリヒドロキシアニソール:、ブチリヒドロキシトルエン:)、人工甘味料(アスパルテーム)
植物に含まれる植物エストロゲン 女性ホルモン(エストロゲンすなわち卵胞ホルモン)様の作用を起こし、Th1作用を増強させアレルギー反応を悪化させたり、不妊を起こさせる。 大豆(ダイゼイン・ゲニステインなどのイソフラボン類など)、野菜などの植物
食品に含まれる女性ホルモン 卵胞ホルモンがTh1反応を、黄体ホルモンがTh2反応を増強させて過剰なアレルギー反応を誘発する 牛乳・卵・鳥肉や牛肉の油脂
有機スズ化合物 Th2反応を刺激してアレルギー反応を過剰にさせる 貝(特に港に近い場所に棲息する貝)、魚(近海魚)
その他 接触でかゆみを起こす食品 納豆、味噌、醤油、濃い塩味の食品

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