<02-10 2000年07月05日公開>
アレルギーの原因を見つけるとき、また、治療をおこなっていくとき、実際に食べた物、生活の状況を書き出してきてもらうことは非常に大切です。抽象的な内容ではなく、実際の生活や食べたものを目の前にして医師と家族、本人が話し合いながら良い環境と食生活を作り出していくことが大切です。
●症例4ヵ月女児。食べ物の接触によるアトピー性皮膚炎。
家族にアレルギーの病気はありません。お母さんの年令は27歳です。
現病歴 生後2ヵ月から全身にアトピー性皮膚炎ありました。普通の人工ミルクからアレルギー用ミルクに変えました。4ヶ月時の検査ではIgE137と値が高く、卵白ラストスコア4と強陽性、小麦1、米2でした。卵・牛乳・大豆油・小麦製品を除去し治療を始めましたがなかなか良くなりません。食物日誌を書いてきてもらうと本人はアレルギーの原因となるものは口にしていません。
そこでお母さんの食べているものも日誌を書いてきてもらいました。すると、お母さんは卵製品も小麦・乳製品も多量に食べていたのです。これでは接触によるアレルギーを防げません。再度お話をしたところ、お母さんは家族の人と相談し、工夫をして他の家族の食事も除去食にしました。
魚が多い等まだ不十分な点はありますが、アレルギーが強い食品は除かれています。この後、アトピー性皮膚炎は著明に改善しました。アレルギーのある食べ物をお母さんや他の家族が食べ、手や衣服についた、または、よだれに残っている成分が赤ちゃんの皮膚についてしまい、皮膚炎を起こしていたようです。赤ちゃんのアトピー性皮膚炎ではこのような例が多数あります。
そして、本人だけでなく、家族、特に母親の食生活を食事療法の中に含めることの重要性を実感しています。アレルギーの原因となるものを食べてしまったり、触ってしまっただけでなく、それを焼いた煙、茹でている時の湯気、粉状である小麦でも吸いこむことでアレルギーを起こしてしまうことがあります。また、子どもたちは「親が食べているものを食べたがる」ということが哺乳動物の原則です。親の食べ方を、良い食べ方の手本として将来の食生活を考えていきます。したがって、食物日誌を書いてきてもらうときは必ず、家族、特に母親等身近に世話をしている人の食物日誌もお願いしています。
はっきり型(即時型)、遅発型、かくれ型(遅延型)各タイプで違う、原因となるものを食べたり、接触したり、吸いこんでから症状が起こるまでの時間を考慮して日誌を見ると、原因となる食品や原因となる行為、場所が浮かび上がってきます。